捨てられる前に
「そう言えば、トルソにも兄弟……とかって居るのか?」
「現状は居ませんね。しかし、
この計画が上手くいけば将来は出来るでしょう。
元に……私の兄弟機が開発段階です」
「ふぅーん。やっぱりあれか?似てたりするのか?」
「まあ、デザイナーは一緒ですから少しは似ていると思いますよ。
機能面で言ったらそこまで似ていないかもしれません。
私は人間で言う女性型、開発中のは男性型ですし」
レノックスはどこか納得したかのように肯く。
「だからか。随分華奢だとは思っていたが」
「ははっ、この体はコスト削減も念頭に置いてますしね」
「?ロボットにも性別があるのか……?」
”女性型”という言葉にオプティマス生命体でなくとも
性別が存在するのかとトルソへ素朴な疑問をぶつける。
「いいえ、ありませんよ。モチーフが女性ってだけです」
「なるほど」
「”素敵!!””鍛えられたこの肉体””最高!”」
「ありがとうございます。バンブルビーさんも素敵な話し方ですね。
私には真似できない賢い方法です」
「”きゃ~!””嬉しいわ””ありがとう”」
「いつの間に自己紹介したんだ?」
「こちらに配属される前に全員の情報をインプットしたので。
……自己紹介をした方が良かったですね」
バンブルビーとの会話中に疑問を抱いたレノックスに
答えたトルソは、少しはっとした様子で辺りを窺う。
一方的に情報を知られる不快感というものもあるだろう、と
思考が至ったからだ。
相手に不快感を与える=欠陥という考えを持つ彼女自身、
内心焦っていたが対照的に周りの反応は暖かいもので
トルソは少し戸惑った。
「私達について語るよりも有意義な時間となるだろう」
「その通りだオプティマス。実に人間臭いと思っていたが
効率的な存在で安心したよ」
「それはなりよりです」
オプティマスのフォローに賛同するラチェットに感謝しつつ、
それよりも、と話を切り替えるレノックスの言葉に耳を傾ける。
「具体的にどう戦うんだ?」
「開発・搭載されたアタッチメントを優先的に使用し、
必要に応じて軍用銃や火器類も使用できます」
「その腕とかか?」
「その通りです」
彼女はレノックスに指された左手に目を落としながら頷く。
左の手の甲に組み込まれたオートマチックガンはサブウエポンとして
量産型に搭載が決定している。
「メインウエポンではありませんが、これは既に量産型に
搭載予定の優秀な武器です」
「メインはどんな物なんだ?」
「今は最終調整中で手元にはありませんが、どんな状況にも
対応できる変形型の武器です。耐久力が少し低いですが
適応力が優れているのは最大の魅力です」
「右腕のは?」
「これは移動用のグラップルフックです。
移動にも便利ですが相手の不意を突くのにも重宝するはずです」
今は彼女のみだが、ゆくゆくは量産され小隊、中隊と拡大していく予定の
戦闘用兵器。
なんと恐ろしい事だろうかとレノックスは身を
--実際に震わせたわけではないが--震わせた。
彼女らは人間ではなく、機械だ。
躊躇うこともなく、怯むこともなく前進し、敵を葬る。
一人でも十分な脅威。それが何十機といる。
彼は、目の前の未来はもう既に恐ろしい物なのかもしれない、と
思わずにはいられなかった。
「――失言でしたね。申し訳ありません」
そんな彼の様子を観ていたトルソはすぐさま謝罪を口にしたが、
オプティマスが透かさず庇う。
「気にすることはない。議題にならないことの方が少ない問題だろう。
それにまだ実戦投入が決定したわけでもなければ、
条約の問題もある。まだ憂う時ではないだろう」
「オプティマスの言う通りだな」
そうして一旦沈んだ雰囲気はオプティマスによって
少し明るいものに変わり、レノックスも事を急いたとトルソに詫びた。
彼女にとってはデリケートな話題だったが気にする事なく
トルソは話題を切り替え、雰囲気の向上を心がけることにした。
