捨てられる前に
息も白くなる寒い冬のある日。
騒がしい巨大なガレージに男性の大声が響き渡った。
それはあまり褒められた言葉ではなかったがそれに対して
誰も咎めはしなかった。
「ふざけやがって……」
そう悪態をつくのはアメリカ陸軍少佐ウィリアム・レノックス。
「人間の考えることは理解できない」
「同感だ」
ぶっきらぼうに吐き捨てるのはレノックスの相棒的立ち位置の
アイアンハイドという
それに続くは彼らオートボットの軍医を務めるラチェット。
「決まってしまったものは仕方ない。
そのアンドロイドは何時ごろやってくるのだ」
「もうそろそろ来る頃だな……ハァ。
俺もオプティマスを見習わないとな」
レノックスは、声の主であるオプディマス・プライム
―オートボットの司令官―を見上げる。
「ふん。不要な鉄屑ならば踏み潰してしまえばよかろう」
「そう言うなメガトロン。彼らなりの歩み寄りだろう。
甘じて受け入れるべきだ」
「貴様がそんなんだからオートボット共はいつまでも腑抜けなのだ」
「なんだと」
トゲのある物言いをする元ディセプティコンリーダーのメガトロンの
挑発に乗りかけるオプティマスをレノックスがまあまあ、と
宥めてすぐのこと。
一人の軍人に連れられて白衣姿の人間数名と一台のロボットが
巨大ガレージ内にやって来た。
「どうも、初めまして少佐。デニス・ハワードと申します」
「あぁ、どうも。ウィリアム・レノックスです。
……そちらの方々は?」
先ほどのことなど無かったかのように笑みを貼り付け、
握手をしながら自己紹介をするレノックスが
ハワードの後ろに控えている数名の白衣を纏った人物を指して尋ねる。
「嗚呼、また改めて紹介しますが、これのシステム関係のエンジニアや
私の助手たちです。これも所詮は機械なので」
「なるほど。それで……あれが例の?」
「その通りです。おい、こっちに」
ハワードのにこやかだった表情が一変し、鋭い声で後ろに控えていた
アンドロイドへ声をかける。
「はい」
想像よりもずっと人間らしい声にレノックスは目を見開くが
すぐに表情を戻し、アンドロイドに目を向ける。
「はじめまして、レノックス少佐。改めまして
私はFS-4583と申します。お気軽にトルソとお呼びください」
「あ、あぁよろしくトルソ」
初めて目にしたその英知の結晶とも言うべきアンドロイドは
レノックスの思考を軽く掻き乱すには十分な存在だった。
握手で触れた手は人肌に暖かく、機械と言うには似つかわしくないほど
暖かく優しさを感じることができた。
故に、ハワード等のトルソに対する態度にどことなく違和感を抱いた。
「我々も初の試みでして……何か失礼な部分はありませんでしたか?」
「え?えぇ、何も」
まるでそう願ってるかの様な物言いにレノックスも
気づかないわけでは無い。
それはトルソ自身もひしひしと感じ取っていたほどに。
いや、彼の態度はここに来る以前から周知の事実であった。
