代償を払った先の未来
気がつけば私はベッドに横にされており、
そばにはザブラクの教師が椅子に腰掛けていた。
「大丈夫か」
「……はい。すみません、でした」
「気にするな。間に合って良かった」
彼が来なければ、私は、どうなっていただろうか。
そう思うと身の毛がよだつ。
「奴の悪ふざけだ。何時も度が過ぎる」
あれが、悪ふざけなのか。
もう二度と関わりたくない。
それから軽い自己紹介をし、彼が差し出した水を飲み干す。
まだ微かに体が震えている。
「もう少し休め。普段寝れてないだろう」
「…………はい」
コップを机に置き、私は再びベッドに横になった。
彼は私の頭を優しく撫でる。
「無理に独りで抱えれば、いつか壊れる」
「……」
どうしろって言うんだ。
どいつもこいつも、みんな。
「俺で良ければ話を聴く」
「……別に、話すことなんて」
「あるはずだ」
黄色の強い眼差し。
「……考えてみます」
私は彼の瞳から逃げるように目を瞑る。
モール先生の心地良いフォースはまるで安眠薬の様に
静かに私を眠りに誘った。
不思議とあの夢は見なかった。
久しぶりの睡眠に気づいた頃には夕食の時間だった。
体を起こし、辺りを見回すが先生の姿はない。
「起きたか。飯だ」
食え、と目の前に置かれたのは消化に良さそうな料理。
「……先生が、わざわざ……?」
「そうだ」
彼も自分の分をガツガツ食べ始めた。
お礼を告げて食事に手を伸ばす。
「お前の友人達には伝えておいた」
「……ありがとうございます」
恐らくアソーカとランディだろう。
後で改めてメッセージを送っておこう。
「まともな食事もしていない様だな」
「……してます」
「学院内ではだろう」
「なんでわかるんですか」
「認めたな」
「……はぁ」
食事を飲み込みながら少し談笑もした。
そのひと時は少なからず、ランディと同じように心が休まった。
「先生、私が戻して来ます」
「……では頼む」
彼の分の食器を受け取り、挨拶をして
医務室を後にした私は食堂に行き、
トレーを返却して教室へ戻る。
「ヴォーン! 大丈夫だったか?」
「ああ、ゆっくり休んだらだいぶ良くなった」
教室の前、アソーカとランディが何やら話していたが
私を見るなり会話を中断して私に声をかけた。
「何でニヤついてるんだ、アソーカ」
「べっつに~? じゃ、私はお先に~」
手を振ってニヤついたまま去るアソーカ。
何なんだ、全く。
「すぐ用意する」
誰もいない教室に入り、必要なものを持ってランディと再度合流する。
「帰ろうか」
「そうだな」
暗い夜道を2人で歩きながら帰る。
「お疲れ様、2人とも」
「……っす」
「お疲れ様です」
後ろから声をかけられて振り返れば、あのノートラン。
彼は『気をつけて帰るんだぞ』と告げてスッと横を通り過ぎていった。
……。
「……ヴォーン?」
「なんだ?」
「何でそんなに、泣きそうな顔をしているんだ」
「…………判らない」
知りたくない。
信じたくなくて、私はランディに謝って独りで家に急いで帰った。
もう、自分が自分じゃないみたいだった。
この感情も、この記憶も、私じゃない。
張り裂けそうな痛みに耐えながらベッドに倒れ込んだ。
「どうして、私は……生まれてしまったんだ」
