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代償を払った先の未来


糞食らえ。

オカルトチックな学校に強制連行されながら
心の中で悪態を吐く。

暴れて逃げられるならば最初からそうしている。


そもそも、私はその学校に入学はしていない。
なんなら一昨日高校を退学したばかりだ。

「降ろせ、チビジジイ」
「今回は随分尖っておるのぉ。んん?」
「クソが」

私を”フォース”という力で持ち上げ、
抵抗が出来ない状態で連行するちっこい緑のジジイ。

「お主はフォースについて学ばなければならんでの」
「必要ねーよ。降ろせ」
「いいや、必要じゃ」

チビジジイは私を見上げ、さらに言葉をつなげた。

「お主が毎日見るその夢。
それを遠ざけるにはまず……己を知る事じゃ。
さすれば自ずと夢の謎も解け、うなされる事も無くなろう」
「……ッチ」

私はそいつの言葉に口を閉じた。
確かに、毎晩見るあの長ったらしい夢から解放されるなら
少しはこいつの言うことを聞くべきだろう。

「……わかった。自分で歩くから降ろせ」
「礼儀を知らんな?」
「…………下ろしてください」

チビジジイは『うむ、よろしい』と言って、私を地面に下ろす。

「ここが今日からお主の通うレディアダース学院じゃ」

馬鹿デカイ門をくぐり、中に入りチビジジイが振り返る。

レディアダース学院。
世界屈指のフォース=センシティブの育成一貫校だ。
フォースが少しでも使える奴はこういった教育機関の卒業が
義務付けられている。

私は大人の不手際で通ってなかったが。

「マスターヨーダ!」

私たちに気づいた子供達が一斉にチビジジイへ駆け寄ってくる。

「この方は?」
「強いフォースを感じます」
「こんにちは!」

この学院で生活する生徒は外の世界とは違う住人のように
浮いた存在である。

「……こんにちは」
「彼女はロアーズ・ヴォーン。今日からこの学院の生徒となる」
「そうなんですね。これからよろしくお願いします!」
「では、僕たちはこれで失礼します」

少年少女は礼儀正しくお辞儀をして立ち去る。

ここでやっていけるのか?

「よいか、ロアーズ。
あの子らの様にまずは言葉遣いから改めよ」
「名前で呼ぶな」

反射的に返すとフォースでデコピンされた。

「イッテッ!!」
「ん?」
「このクソジジイ……ッ」

フォースで反撃しようにもチビジジイのフォースに妨げられて
思うように出来ない。

「まだまだじゃ」
「……ッ」
「着いてきなさい。教室へ案内しよう」

ジジイは杖を突きながらゆっくり校内へ足を踏み入れる。
私は歯を噛み締め、悔しさを感じながらそれに続いた。


「ここじゃ。入りなさい」

ジジイが教室に入り、私も中に入る。
多種多様な人種が話していたがジジイに気付くなり
すぐに鎮まり、席に着く。

「ほれ、自己紹介せんか」
「……ロアーズ・ヴォーン」
「今日からこのアプレンティスクラスで共に学ぶ友じゃ」

ジジイは席を指差し、そこに座るよう指示をする。
舌打ちを漏らしながらもその席に腰掛ける。

チビジジイの話しが終わり、教室には再び騒がしさが広がる。

「ね、ねえ!」
「……んだよ」

席を立ち、教室を出ようとすると1人のトグルータが話しかけてきた。
何か期待しているようで、ソワソワするそいつに
冷たく返せば、フォースが容易く揺れる。

「……私のこと、覚えてないの?」
「何言ってんだよ。初対面だ。アンタ名前は?」
「あ……えっと、アソーカよ。アソーカ・タノ」
「そ。私はさっき紹介したから良いな。
名前を呼ばれるのが大っ嫌いだから呼ぶなよ」
「……わかった」

私はさっさと話を終わらせ、教室を出て辺りを歩き回る。
良い感じにサボれそうな場所はないかな。

「もう授業が始まるのに何処へ行くんだ」
「…………すぐ戻ります」

声をかけられ、振り返るとノートランの男が教材を抱えて立っていた。
そいつの胸ポケットには教師を証明するプレートがある。
私はそれだけ言って去ろうとするが
そいつに引き止められた。

思わず掴まれた腕を振り払う。

「触んなッ!!」
「……随分お行儀が悪いな」
「…………」

そいつは笑顔を浮かべて私にそう言う。
その笑顔で神経を逆撫でされ、眉間に皺がよる。

「アプレンティスクラスはこっちだ」
「……」

こいつが担当の授業だったか。
運が悪い。
大人しく私は彼の後ろを追い、教室へと戻った。

「では授業を始める」

起立、礼、の号令で
他の生徒に合わせ、頭を下げ着席する。

今すぐ帰りたい。

私は授業内容を聞き流しながら集中しているフリをする。
どいつもこいつも真面目しかいないのか。
ノートランの授業は退屈ではないものの
時折向けてくる笑顔がうざい。

「今日はここまで」

授業の終わり。
挨拶をして再び教室を出ようとするとアソーカが
声をかけてきた。
次は何だよ。

「さっきの人、誰だか知ってる?」
「知るか。初日だぞ」
「そ、そうだよね! さっきの先生はキット・フィストー先生。
とても穏やかな先生よ」
「だろうな」

フォースでわかる。

「ねぇ、もしよければ一緒に夕飯食べない?」
「……良いぞ」

アソーカに誘われ、私は大食堂へ向かう。
断るのが面倒でついOKしたが、
今思えばしないほうが良かったかもな。

「ビュッフェスタイルか。贅沢だな」
「でしょ~?」
「なんでお前が得意気なんだ」

私たちは席を取り、皿に料理を盛る。

「……胃もたれしない?」
「しねぇ」

私はトレーを席に置き、席に着く。

「隣空いてるか?」
「マスター! もちろん」
「……」

アソーカの知り合いらしき人間の男が隣の席へ腰掛ける。
どうやら教師の1人のようだ。

「久しぶりだな、ロア」
「あ”?」

いきなり馴れ馴れしい教師に思わずドスの効いた声が出る。
それを聞いた男は驚きの表情を浮かべ、アソーカは『あちゃー』と
頭に手を当てた。

「マスター、こちらロアーズ・ヴォーン。
名前で呼ばれるのが大嫌いなんだって。
ヴォーン、こちらはアナキン・スカイウォーカー先生。
私のマスターよ」
「………………っす」
「嗚呼えっと、よろしく」

変な空気が漂う中、アソーカがそいつを連れ少し席を外すと言って
立ち去った。

「ここは空いてるかな?」
「……うっす」

トレーを片手にあのノートランが私の隣の席を指して尋ねた。
私は短く返事をして料理にフォークを伸ばす。

「上手く馴染めそうか?」
「……はい」

話しかけんなよ。と内心毒を吐きながら返事をする。
正直、ここで上手くやれようとなかろうとどうでも良い。

「今日の授業内容は理解できたかな?」
「……まあまあ」

会話をぶった斬りながらひたすら食事をする。
それでも構わぬようでそいつは何回も声をかけて来た。

「ジャンクフードが好きなのか?」
「……っす」
「美味しいか?」
「はい」

正直どうでも良い話だ。
マジ、何で話しかけてくんだよ。

「お待たせ~。あ、マスターフィストー、こんにちは」
「こんにちはアソーカ。お邪魔してるよ」
「いえいえ」

やっとアソーカと男が戻ってきた。

「遅ぇ」
「ごめんごめん。スカぴょんが聞き分け悪くて」
「スカぴょんって呼ぶな!」
「スカぴょん、良いな。今度からそう呼ぼう」

スカぴょんが怒る中でアソーカと揶揄いながら
ポテトを口に放り込む。

彼女らの会話をBGMに食事を終え、一足先に食堂を後にした。

「ほらアイツ」
「マジか」

家に帰ろうと思い、廊下を歩いていると数人の生徒が
こちらを見てこそこそと悪意の眼を向けて噂話をしている。

腹立たしい。
面と向かっては何も言えない腰抜けどもめ。

「何か面白い話でもしてんのか?
私にも聞かせてくれよ」

私がそう彼らに聞けばゴニョゴニョはっきり喋らなくなる。

「ちゃんと聞かせてくれよ」
「っひ!」
「減るもんじゃなし」

逃げようとする奴らをフォースで捉え、顔を近づける。

「は、離せッ!」
「おいおい、逃げる事ないだろ?
私は君らと楽しくお喋りしたいと思ってるのにな」

奴らはすっかり縮み上がり、恐怖している。

「喧 嘩 売 る 相 手 を 間 違 え た な」
「何をしてる!」

笑顔で奴らに迫れば体を震えさせる。
それが滑稽で滑稽で。
もう少し懲らしめてやろうと思っていると
籠った声をあげながら教師がやってきた。

奴らを解放してやれば尻尾を巻いて逃げ出す腰抜けども。

「関係ねーだろ」
「いや、関係ある。彼らも、君も同じ生徒だ」
「初対面のアンタに諭される筋合いはねえよ」

私はそれだけ言い残し背を向けると
ケル・ドアの男は私を呼び止めたがそそくさと家に帰る。


ガチャ

ドアを開け、我が家へと帰ってきた。
玄関前に置かれていた荷物を運び入れ、
明日の準備を終わらせシャワーを浴びる。

「……」

鏡に映る自分を見るたびに反吐が出そうになる。
顔に残る電撃傷。
大体の傷は治るのにこれだけはどうしても消えない。
見慣れている自分の顔のはずなのに、全くの別人にさえ思える。
あの夢のせいだ。

私が私じゃないと思うのもあの夢のせい。
誰も彼もが私を”ロア”と呼び、笑いあう。
私は”ロア”じゃない。
どいつもこいつも亡霊に囚われている。

誰も”私”を見ない。

私は、誰だ。


シャワールームを出て服を着替えて歯を磨きベッドに潜り込む。
今日こそは、夢を見ませんように。
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