気分屋の薔薇
「闇の鏡の前に立つあなたに問う」
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「聞いたかあの噂……」
「しっ、聞かれちまう」
シューちゃん達との約束の時間10分前。
クローバー先輩から貰ったお菓子を両手に
食堂へ向かう途中。
私を見て、幾人かがコソコソと噂話をする。
……良い気分じゃない。
モヤモヤとする心を押さえつけ、
足早に食堂へと向かう。
「ういー」
「おつおつ」
「お待たせー」
食堂に着けばすでに2人とも席に座って私を待っていた。
え、早くない?
「2人とも早いね~」
と私が言えば、「呑気なこと言ってる場合か」とジョワちゃんに
チョップされた。
「いだっ」
「超やばいって、めっちゃ尾ひれついて噂されてる」
「???」
意味がわからず首を傾げれば、2人は大きなため息をついた。
「お昼の人達のこと誰だかわかってる???」
「???どういう事?」
「バカめ」
「シューちゃんそれ酷くない??」
私が本気で解ってないと判断したジョワちゃんが
ざっくりと説明してくれた。
「マレウス・ドラコニア。聞いたことあるでしょ?」
「誰?」
「この温室育ちめ。茨の谷の次期領主!!」
「へ~、そうなんだぁ。偉い人なのは解った」
「分かっとらんな????噂じゃ関わるだけで呪われるって
云うし、あのオーラだってヤバいじゃん」
「そう?」
噂は初耳だし、オーラ?の事もイマイチピンとこない。
「ヤダこの子鈍感」
「はぁ」
ジョワちゃんもシューちゃんも少し呆れ気味だ。
「うーん、まあ私噂は信じないタチだからなぁ……。
別に怒らせた訳でもないし……。
オーラの事はマジで分からん」
それに、と私は続ける。
「どんなにすごくても、同じ学園の生徒でしょ?
怖そうだからとか、噂がーって理由で
避けるのは違うかなって思うんよ。
それに、それを自分がされたら、友達がされたら
私は絶対に悲しいと思うしなぁ……」
マジで危害加えられるならまた話は変わってくるけど、と
付け加えつつ、お菓子を広げ、レポートに取り組む
準備を整える。
おっと、ついマジレスしてしまった。
「……それもそうだなぁ」
「ん」
ジョワちゃんもシューちゃんも何か納得した様で、
私が広げたお菓子を頬張り始めた。
「よっしゃ、始めんべ」
「今日の範囲はこっから、5ページ分」
「おっけー」
シューちゃんが教えてくれた通り、教科書を開き
内容を把握しつつ、ジョワちゃんのノートを見比べ
レポート用紙に書き込む。
「非常に喜ばしい事ですね~。実に微笑ましい!」
「あ、学園長」
課題の半ば、背後から姿を表したのはあの学園長。
突然の登場に私を含めて全員が驚いているようだった。
この学園の人間は全員背後から姿を表さないと気が済まないのか??
「急に出てこないでくださいよ~。ビックリします」
「うふふ、それは失礼」
楽しそうに、わざとらしく微笑みを溢す。
面白くはない。
心臓がバクバクして少し痛い。
「何か御用です?」
「私は学園長ですよ?
用事が無くとも大事な生徒を見守るのは教育者の務め!」
どの口が、という言葉は飲み込みはいはい、と返事をする。
「そうですね……強いて言えば、フラッシュさん。
一つ頼まれてくれませんか?」
「げっ、まあ……わかりました。代わりに
サムさんの好物とか教えてください。
今朝ちょっとお世話になったので……」
私はささやかなお願いをすると彼は芝居らしくおーいおいと
涙を流す。
実際には流していない。効果音を口で言ってるだけだ。
「おお!! 何という事でしょう! 実に良い心がけです!
しかし……恐らく、ですが好物を貰うより購買店で
買い物をする方がよっぽど喜ぶと思いますよ?」
学園長はふむ、と考えた後に良いアドバイスをくれた。
「! ナイスアイディアですね! ありがとうございます」
「いえいえ。では、この物資をオンボロ寮へ
全て運んでおいてください。頼みましたよ!
嗚呼、忙しい忙しい!」
「ちょ、何ですかこの量!? おいッ、ちょっと待てやゴラァ!!」
私の制止も虚しく、背後からとんでもない量の段ボールを出現させ、
足早に立ち去っていってしまう学園長。
「あんの野郎ッ!」
「手伝わないからな」
「……うん、知ってた」
はあ、とため息を一つ吐いて2人に視線を向ければ釘を打たれた。
仕方ない……これは私のせいだし。
「先にレポート終わらせよ……」
そうして私は再びペンを進めた。
