気分屋の薔薇
「闇の鏡の前に立つあなたに問う」
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結論から言えば魔法薬は完璧に完成した。
私の班はね。
他の班はちらほら失敗してしまった。
手順が違ったり分量がいい加減だったり。
軽い爆発が何箇所かあっただけで
幸い怪我人は出なかったが、C組の半数は
その被害を被った形で授業は終了した。
もちろん、失敗した奴らは補修と反省文が待っている。
私達にも地獄が待っている訳だが。
「クゥ~~~ン」
「ごめん、本当に犬は無理なんだよ」
小爆発で失敗した薬の飛沫を浴びた生徒が
動物になってしまったり、声が出なくなったり、などの
被害が発生したのだ。
そして、私も被害を受けた1人。
シューちゃんとジョワちゃんは無事だが、
残念なことに私は犬になってしまった訳で。
2人とも犬は得意じゃなくて、ジョワちゃんは特に苦手で。
近づきたくても近づけないし、先生は他の生徒たちで
手一杯って感じ。
オクタヴィネル寮生の数人は魚になってしまった様で
対処が遅くなれば死んでしまう。
一部の人を除き、C組全員には待機する様に指示が出ている。
大人しく待とう。
それにしても大分外が騒がしい。
「失礼しますよ!」
バタバタと慌ただしい音と共に誰かがやって来た。
アーシェングロット先輩にジェイド先輩、フロイド先輩。
なぜあの人たちがいるのか、と疑問に思い2人に視線を送る。
教えてくれビーム。
「え、何?」
「……噂だと人魚だとか?」
ジョワちゃんには一切伝わらなかったがシューちゃんは気付いた様で
教えてくれた。
「
「何言ってんのかわからん」
「同意」
悲しきかな。
「めっちゃ外騒がしいやん」
「……大事なんじゃね?」
2人はそう呟くと私を見て納得した様に肯いた。
ジョワちゃんがさっとスマホに視線を落とす。
私は自分のスマホが振動していくことに気づき、
どうにかして2人に気付いてもらおうとスマホ付近をウロウロする。
「超大事だわ」
「わぁ……」
なんて会話が耳に入ったがそれよりスマホだ。
どうやら電話の様でずっと振動している。
「ワンッ」
「な、何?」
「?」
私の声に2人はこっちを見るが気づかない。
「
「何何何、なんかあんの?」
怯えつつもじりじり近づくジョワちゃんを他所にシューちゃんが
私の付近にやって来る。
「……?」
私の横にある鞄がかすかに振動しているのに気がついたようで
中をあさり始めるシューちゃん。
理解力高い!
「電話だ」
「
「急かすなや」
「何でわかったのか甚だ疑問だわ」
シューちゃんが鞄からスマホを取り出し、
私は催促する。
しかしながら、シューちゃんが理解できたことに私もびっくり。
「てか」
電話に出ようとしたシューちゃんがふと顔を上げる。
「ロック解除できない」
──そうだった!!!!
まさかの盲点にクゥーンと項垂れるしかなかった。
──────
───
─
あれから十数分後、学園長もやって来て騒がしさに拍車がかかる。
うるさいし何か臭うしでもうしんどい。
恐らく犬になった関係で聴覚やら嗅覚が良くなったんだろうね。
「失礼するよ!」
「レヴンちゃん無事~!?」
一向に落ち着かない教室内で蹲る私の耳に聞き慣れた声が聞こえた。
──寮長とダイヤモンド先輩だ!!
「ワンッ!!」
喜びのあまり返事をする様に吠えてしまい、
それに驚く2人。
ごめん。
「やっぱ無事じゃなかったか~」
「まさか犬になっているとはね。通りで電話に出ないわけだよ」
座る私のそばへ駆け寄り2人は口々に話す。
「この様子だと収束にはだいぶかかりそうだね」
腕組みをする寮長のそばに寄り周囲の様子を眺める。
「
「だね~。ま、どうこう言ってても仕方ないし。
ハイ、チーズ」
私の言葉に同意し、いつもの様に写真をとるダイヤモンド先輩。
ブレないな。
撮った写真はすぐさま投稿。
どうしようもないのは事実だしなぁ。
「順を追って対処しているみたいだし、しばらく待とう。
この後の授業だが、全学年この騒ぎで授業は無くなったから
安心しなよ」
寮長はそう言いながら私の頭を撫でる。
想像より気持ちがいい。
「うわ、めっちゃ喜んでる」
「犬」
ジョワちゃんとシューちゃんが小声で話しているが
全部聞こえてるからな。
「……本当に犬だね」
「お利口さんな犬だよね~」
先輩たちも口々に話しながら頭を撫でたり背中を撫でたり。
なんかよくわからないけど楽しい。
犬の本能だ。
犬飼った事ないから知らんけど。
「レヴンちゃーん、これ見てて」
なでなでタイムが終わり、ダイヤモンド先輩がボールみたいな
ものを目の前でチラつかせる。
「?」
「……やりすぎない様にする事だね」
私は状況を理解できずに首を傾げるが寮長は想像ついた様で
少し目を伏せながら腕組みをして注意?をしていた。
「それ!」
ダイヤモンド先輩は手に持っていたものを軽く投げた。
私は目でそれを追い、気がついたら空中でキャッチをしていた。
……犬の本能かな???
おぉ~!と後ろからいくつかの声が重なって聞こえた。
まあ、いいんだけどね?
「想像以上に犬を堪能してるなぁ~」
キャッチしたものを返しにダイヤモンド先輩の元へ向かうと
少し呆れつつ困った顔をした先輩がそう呟いた。
「
「楽しそうな事してるな?」
聞き覚えがめちゃくちゃある声の方へ視線を向けると
クローバー先輩が笑いながら立っていた。
「
「よーしよし、いい子だ」
彼の元へ駆け寄っていくと彼はしゃがんで
私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「お座り」
「お手」
「おかわり」
「伏せ」
先輩の声に合わせて座り、手を差し出し、
次に反対の手を差し出し、伏せる。
って、犬やないか!!!!
「うわぁ……」
「……」
これには先輩たちも微妙な笑顔。
私自身もびっくりしている。
「ほら、お腹見せてみろ」
彼の声で、ゴロンとすれば、今度はわしゃわしゃと
お腹を撫でられる。
何だろう、すっごい気持ちいししあわせ……???
「遊びすぎは良くないよトレイ君~」
「後でレヴンに恨まれてもフォローしないよ」
先輩たちは私を何だと思っていらっしゃる?
クローバー先輩に至っては笑いながら撫で続けている。
まあ、うん、なんかもういいかな。
