蜘蛛ですがpixiv削除済SS
突然ですが異世界転生といえばなんでしょうか!
転生特典!
チート無双!
そして冒険者生活!
転生特典とチート無双は経験済みの私だが、異世界転生定番の冒険者生活はまだ達成していない!
どんなことがあっていいものか!
いや、断じてない!
というわけで私は冒険者生活がしたい!
ってことで魔王達みんなに集まってもらいました。
「ご主人様、いきなり呼び出してどうしたの?私も忙しいのだけど」
「そーだそーだー」
バルトに仕事を任せっきりでまともに仕事してないニートと、さっきまでメラの執務室に居座っていた暇人が文句を垂れてますが無視しましょう。
コホン、今回は私から伝えたいことがあります!
コミュ障だから何にも話せないだろって?
ふふふ、実は今回は話したいことを全て紙に書いてきたのだ。
というわけではい!
みんなこの紙を読んでくれ!
「全てが終わったことだし冒険者としてこの世界を旅するのもいいんじゃないか、ですか?」
そうそう。
エルフの殲滅も世界の命運をかけた戦いも終わったことだしこれからは異世界転生定番の楽しみを味わってもいいんじゃないかっていうね。
「いやまだ全て終わってないんだけど。戦争の後処理とか魔族の立て直しとか残ってるんだけど」
それに対する返答の既に準備しております、ほい!
「全部バルトに任せようじゃねーよ。バルト殺す気か」
普段から仕事丸投げしてる魔王に言われたくないですー。
ブーメラン?しらね。
「とりあえず魔族のあれこれが終わってからだからね。話はそれから」
えー魔王のケチ。
「……ご主人様、アリエルさん。私もう一度みなさんと旅がしたいです。私からもお願いします!今じゃなきゃいけないんです!」
私も同意見だ。
真面目な話、私の治療でどうにか一命を取り留めたものの魔王はいつ逝ってしまってもおかしくない。
最後に魔王にも旅を楽しんでほしい。
だから魔族領なんかでグダグダしている時間はないのだ。
「……あぁ、そうだね……でも私にはもうみんなと一緒に冒険をできるような力は残ってない。私にできることはここで元魔王として魔族の立て直しを指揮することだけだよ」
「魔王……」
魔王に最後だけでも楽しんでほしい、でも無理はしてほしくない。
「ご主人様でも黒でもダメだったのよね…誰か直せる人はいないのかしら…」
それでも……私は…魔王に……こんな時に私にもっと力があれば、Dのような力があれば魔王の魂の傷なんかちぃちょいのちょいなのに……。
「白織」
この声は。
後ろを振り向くといたのはサリエルだった。
「私ならアリエルの魂を修復できるかもしれません」
マジで!?
脳内お花畑天使のくせしてやる時はやるじゃんか。
でもそれもっと早く言ってくれなかったかなー?
もしかして聞かれないと答えないタイプ?
ないわー。
「マジで?じゃあなんでもっと早く言ってくれなかったわけ?魔王がいつも辛そうにしてるの見えてなかったの?」
思いのほかすらすらと言葉が出てくる。
嫌いなやつ相手だと喋りやすいってやつか。
「修復する魔術は使えるには使えるんですが、今の私にはエネルギーが足りないんです」
エネルギー?
それなら私がいっぱい持ってるよ。
ほらこの異空間の中に……。
あれ?
おかしいな。
システムを壊す際の予備用にエネルギーを貯めておいたはずなのに……。
まさかDあいつ私のエネルギー掠め取ったな!?
エネルギーは自分が出すって言いつつ私からもとってたのかよ!
なんでだよ!
まさかこの事態を予想してたのか……。
「じゃあアリエルさんの魂を修復するにはあとはエネルギーさえあればいいわけね」
その通り。
エネルギーさえあればいいんだけどそのエネルギーを手に入れる手段がない。
魔物を倒したとしても殆どはシステムに回収され私たちの手には入ってこない。
……あれ?
システムは崩壊したんだよね?
じゃあ魔物を倒した際のエネルギーは全部私たちに入ってくるんじゃないのか?
「魔物。狩る」
「……!そうよ!つまり冒険者として旅をしつつ魔物を狩ってエネルギーを貯めればいいのよ!」
吸血っ子お前もしかして天才か?
「みんな、ありがとう…!サリエル様もありがとうございます……!」
魔王も本当は最後くらい楽しみたかったんだな。
本当に良かった、これで万事解決だ。
何か忘れているような気がしなくもないけど、うん、気のせいだな。
それから暫くして魔王城近くの冒険者ギルドへ向かった。
「みんなー!ここが冒険者ギルドだよー!」
「立派な建物だわ……!」
「ファンタジーって感じだね」
ファンタジーな感じではなく実際ここはファンタジーの世界なのだ。
魔物だっているし魔物討伐だって実在する。
これからの冒険者生活を想像するとテンション上がってくるな!
ドアを開けて中に入ると、ゲームや漫画に出てくるような、ザ・冒険者ギルド!って感じの内装が広がっていた。
そして手近な椅子に座る。
はい!
なんと今回は冒険者の先輩をお呼びしております!
どうぞ!
「どうも」
「こんにちはー」
田川君と櫛谷さんの登場です!
どんどんぱふぱふー!
今回はこのお二方に冒険者としての常識や心得などを教えていただきます。
「二人とも、今日はわざわざきてくれてありがとう」
「おい笹島。ありがとう、じゃねーんだよ。お前俺らの武器ぶった斬ったの忘れたのか?よく今回のことお願いできたよな」
「それはごめんって。武器なら新しいのを作るから」
「そう言う問題じゃないんだよ!あれは俺達の冒険者生活の思い出が詰まってるんだよ変わりなんてないんだよ!」
あーそういえばそんなことあったな。
一応千里眼魔術で見てたけど容赦なかったなー。
というかあれ大事なものだったのか。
いやー私たち服とか剣とか実質作り放題だから感覚麻痺してたわ。
「クニヒコ落ち着いて。笹島君だって悪気があったわけじゃないんだろうから」
「そ、そうだな」
いや悪気しかなかっただろと言うのはおいておいて、なんで今回の件受け入れてくれたのか謎だな。
こんなに揉めてるのに。
嫌な予感がして吸血っ子の方を見ると目を逸らされた。
怪しい。
ここには関係ない人もいるし吸血っ子のお仕置きは後ほどするとして。
「今回の件受け入れてくれてありがとう。私からもお礼を言うよ。私も戦闘能力はあるけど冒険者としてに知識はないからね、助かった」
「い、いえ、こちらこそっ……!」
田川君達めっちゃビビってるわ。
仲間が魔王軍幹部にボコボコにされてしかもその上司ともなるとビビって当然か。
魔王が怖がらなくていいよーと宥める。
どうにか落ち着いたようで、冒険者としての心得的なのを話し始めてくれた。
「まず、冒険者にとって大切なのは連携。ピンチでも仲間で協力して聞き的状況を打破することはできる、それが冒険者の強みです」
なるほどねー。
私自身仲間と力を合わせればなんでもできるって言うのは信じてないけど冒険者、というか人間にとってそれは大事なことなのかな。
ところでさっき早速仲間内で亀裂ができてたけど大丈夫なんか私達。
「そして冒険者として生活する中で持っておくと便利なスキルがいくつかあります。アイテムボックス、浄化魔法、などなどです」
異世界転生の常識じゃね?
説明必要だったか?と思ってみんなの反応を伺おうと見渡すと吸血っ子が必死でメモを取っていた。
あ、吸血っ子さん前世では異世界転生系の話読んだことないんですかね。
いや多分そうだわ。
あんまりこういうラノベとか読んでるところ想像できないし。
そういえば鬼くんは前世でラノベとか読んでたりしたのかな?
そういうふうには見えないけど意外とこういう本好きなのかも。
こんな調子で田川先生と櫛谷先生のご教授が行われていった。
「で、まずは冒険者登録をしないことには始まりませんね」
おー!
これはあれですな!
登録時の試験でチートっぷりを見せつけて周りを驚愕させる定番の展開ですな!
よし、やってやるぞ。
私の神としての実力を示すときだ!!
「みんなー分かってると思うけど私たちの正体がバレると面倒だからほどほどに手を抜くようにね」
なんでさ!
いいだろ私にもお約束的展開をやらせてくれよ!
「だーめ。私たちは魔族から見て恐怖の対象。それが私たちだってことがバレちゃったらろくなことにならない」
ちぇー。
正論言われたらどうしようもない。
「アリエルさんは登録はどうします?登録の試験ですし魔物のレベルはあまり高くないと思いますけど」
あー魔王ね。
魔王は今弱体化してる状態、ちょっとした運動さえ厳しいのに弱い魔物とはいえ戦うなんて到底無理だろう。
でも確か魔王って既に登録は済ませてるんだっけ、どうだっけ。
「それについては大丈夫ー!私は既に昔登録済ませてるから問題ないよー」
そう言ってどこからともなく冒険者カードを取り出す魔王。
いやそんな水着みたいな服のどこにしまってたんだよ。
そして所々字が消えかけててとにかく古い!
いつのだよ!
実力を隠そうどころの話じゃないわ、どんだけ長生きしてるんだよって怪しまれるわ!
「アリエルさん…これいつの……?」
「昔何かあったとき用に作ったんだけどいつだったかなー?覚えてないや」
ただでさえこの世界は紙の劣化が早いからなー。
見るからにボロボロだわ。
「ここの受付で登録するんです」
なるほど。
じゃあ誰から行くー?
「ここはやっぱり言い出しっぺのご主人様からかしらね」
よしきた!
じゃあ行ってきまーす!
手加減しても凄い神の実力見せてやるぜはっはっは!
と意気込んできたものの受付前で詰まる。
なんて言えばいい?
登録、で伝わるか?
最近初めましての人と話をしてなさすぎて話し方忘れたわ。
みんな最近は私がほとんど喋らなくても一言二言だけで理解してくれて楽なんだよねー。
まあその今まで楽してきた弊害が来ちゃったんだけど。
「登録」
懲りずに一単語での会話を試みる。
「冒険者登録ですね。登録時には試験が必要ですが装備やアイテム等の準備はできていますでしょうか?」
受付嬢はプロだった。
相手が全身真っ白の異端ファッションをしていても単語しか喋らない超無口だとしてもしっかり対応してみせたのだった…。
こくりと頷く。
「ありがとうございます。ではまず必要事項をこの用紙にご記入ください」
そう言って一枚の枠が書かれた紙を渡される。
名前、年齢、職業。
名前は白、年齢も16歳として問題は職業だ。
私自身魔術寄りにタイプとはいえ鎌での接近戦もできる。
とは言え試験であの物騒な鎌を使うわけにはいかない。
じゃあ魔術を使って戦うのかと言われても私の使う魔術はシステム内魔法とは仕組みがかけ離れている。
試験で魔術を使えばシステム内にない魔法を使ったと驚かれるのは目に見えている。
鎌も魔術も使えない……どう戦えと?
物理?
ないわー。
私前世も今世人型になってからもろくに運動なんてしたことないしそもそも格闘術1ミリも知らない。
吸血っ子よその格闘スキル私に分けてくれ。
マジでどうしろとー!
助けてと魔王達に視線を送る。
ん?
ちょっと待てよ、そこにいつでもどこでも簡単に武器を作れる人がいるじゃないか。
頼む鬼くん私になんかいい感じの鎌作ってくれ!
ということで職業には鎌使いと記入。
記入し終わった紙を渡す。
「ご記入ありがとうございます、では試験用の別室に移動しますのでついてきてください」
そう言っら受付嬢にちょっと待ってくださいとお辞儀をし鬼くん達が座っているテーブルへ行く。
「鎌」
「え?」
私の今持ってる鎌じゃ目立ちすぎるから君のスキルでそこそこの性能の鎌作ってってことなんだけどわからないの?君エスパーじゃないの?
「ラース君相手だとしても最低限ちゃんと喋らないと何も伝わらないよー」
ちくせう。
もう一言だけだからな!
「作って」
「そっか、白さんがいつも使ってる鎌じゃ目立ちすぎるよね」
うんうん理解が早くて助かるわー。
「了解、すぐ作るから」
こんなことしてるからいざとなった時に待った言葉が出なくなるんだろうなー。
まあ私は行動は変えないけど。
何があってに私を貫くそれが私のポリシーなのだ。
私がどうでもいいことを考えてる間に鎌が完成した。
鑑定できないからわからないけど所蔵魔力量から見るに私の鎌には劣るものの十分なぶっ壊れ性能であることが読み取れる。
「十分過ぎる性能じゃない。こんな鎌持ってたら目立つわよ。もっとまともな鎌つくりなさいよ」
「折角あげるからにはなるべく性能のいいものを渡したくてさ…」
その気持ちは嬉しいが普通の鎌でも別に良かったんだぞ?
鬼くんにありがとうという目線を送って試験用の別室へ向かう。
だだっ広い部屋の中にはにはでかでかと召喚魔法陣らしきものが書かれている。
なるほど、これで魔物を召喚して戦わせるのか。
この召喚魔法転移魔法の下位互換みたいなものなのか、面白いな。
私が魔法陣を眺めているとわらわらと冒険者達が部屋の中に入ってくる。
ん?これもしかして戦いを見られるタイプ?
余計ヘマできないじゃん。
そしてしれっと魔王達も混ざってるわ。
よーし、しょうがないな、私の活躍を見せつけてやりましょうか!
奥から魔物使いと思わしき職員が出てくる。
「では早速召喚しますよ。魔物が出てきたら戦闘開始です。制限時間は15分なのでその時間以内に倒してくださいね。」
ボワっと魔法陣が光って複数隊の魔物が現れる。
狼型の魔物か。
確かに山脈に近い魔族領ではウルフと戦う機会は多いはず、実践的な試験が行われるみたいだ。
いつもなら簡単な魔術で一掃するところだけど、今回はまず鎌を振りかぶって一発。
見事なまでに綺麗にスパッと切れる。
観戦していた冒険者達から歓声と驚きの声が上がる。
こ、これでもやりすぎなのか?
とは言え私は普通に振りかぶっただけなのでこれ以上手を抜くこともできない。
その後も順調にウルフ達を切り刻んでいく。
最後の一匹が唸り声を上げつつ倒れて勝負が決する。
はい、私の勝利ー!
「おお……凄いですね、合格です」
いえーい!
職員さんが若干引いてる気がするけど見なかったことにしよう。
私は完璧にやり遂げたぞ!
さて次は誰が行くんだ?
「次はあんたがやりなさい」
「えっと……僕は……」
「もしかしてさっきので魔力使い果たして倒す自信がないのかしら?」
いやなわけ。
調子悪いんかな。
しょうがないお次は吸血っ子、君だ。
ぽんと吸血っ子の背中を押す。
「はいはい次は私なのね分かったわ」
吸血っ子が受け付けまでスタスタと歩いて行く。
冒険者登録がしたいんですが、と私には言えないような長文を喋る吸血っ子。
渡された用紙に記入し別室へと移動する。
私たちも観客としてついていく。
さっきと同じウルフの魔物が召喚される。
吸血っ子はいつものお気に入りの魔剣でバッタバッタとウルフの薙ぎ倒していく。
力抑えてるように見えないなー……。
いや本気出したら目にも止まらない速度でウルフ達はあっという間に全滅するから手加減してるのは事実なんだけど、とても加減してるようには見えねー。
そしてあっさり全員やっつけたっぽい。
さすがだわー。
誰だこんな最強の剣士を育てたのは。
ん?
そう言えば私だった!
へへへ照れるなー。
「ご主人様!私なかなか良かったんじゃないかしら!」
うんうん。
戦い大好きな吸血っ子のことだからうっかり本気で相手しちゃうかと思ったけど、しっかり手加減してて良かった良かった。
吸血っ子の冒険者登録も完了し最後は鬼くんです。
なんか調子悪いみたいだけど頑張れ!
「次は僕か…じゃあ行ってくる」
あれーなんか乗り気じゃないのかな?
魔王城で話し合ってた時は楽しそうだったのに。
やっぱり私たちと冒険するの嫌なのかな?
もしかして無理やり突き合わせてたのか?
だとしても鬼くんがこんな露骨に乗り気じゃないような態度をとるとは思えない。
理由がわからないまま鬼くんは別室へと去ってしまった。
私たちも急いで後を追いかける。
直ぐに魔法陣から魔物が召喚される。
いつもの二刀じゃなくて刀一本で戦うっぽい。
ウルフ達が一斉に鬼くんに襲いかかる。
そして鬼くんの刀がウルフの首を切ろうとしたその時、鬼くんが少し躊躇ったそぶりを見せる。
何やってんの!?
噛まれるよ!?
案の定鬼くんはウルフ達に噛みつかれる。
見ていた冒険者達から悲鳴が上がる。
高い防御力のおかげで怪我はしてないっぽいけど、本当にどうしたんだろ。
すると鬼くんは意を決したようにウルフ達の首をスパッと切り落とす。
さっきまでの躊躇いが嘘のように目に見えない速度で振るわれた刀によってウルフ達は瞬く間に瞬殺された。
疲れ切ったような顔で鬼くんが帰ってくる。
「あんた、突然どうしたのよ?ろくに防御もせずに噛みつかれちゃって、何かあったの?」
「いや、なんでもないよ」
なんでもないって言う時は大体何かある時だからね私知ってるからね。
「そう、ならいいのだけれど……」
吸血っ子は詳しいことは聞かないでおくみたいだ。
私には問い詰める会話力もないので、無理やり気にしないことにした。
「みんな冒険者登録完了だね!ってことでまずは最初の依頼をうけよっか!なんかおすすめの討伐依頼ある?」
「おすすめなのはやはり遠出せずに終わる依頼ですかね。皆さんお強いですし魔物の強さの心配はいらないでしょうから、なるべく近場のクエストを受けるのがいいかと」
近場のクエストかー。
ならこれとかどうかな?
近隣の湖に水竜が居着いているから討伐して欲しいってやつ。
みんなに伝わるように依頼票を指差す。
「この湖ならここから1日もかからないね!白ちゃんいいクエスト見つけたじゃん」
ふふん。
神である私にとってはこれぐらい容易いことよ。
いや神関係ないけど
魔王が依頼票をちぎって取る。
「じゃあ明日このクエストに出発しよーう!えいえい?」
「「「おー!」」」
魔物との戦い、みんなでワイワイ歩いたり、キャンプしたり、観光名所に立ちよったり。
これから楽しいことがたくさん待っている。
これから始まる冒険者生活に胸が高鳴った。
転生特典!
チート無双!
そして冒険者生活!
転生特典とチート無双は経験済みの私だが、異世界転生定番の冒険者生活はまだ達成していない!
どんなことがあっていいものか!
いや、断じてない!
というわけで私は冒険者生活がしたい!
ってことで魔王達みんなに集まってもらいました。
「ご主人様、いきなり呼び出してどうしたの?私も忙しいのだけど」
「そーだそーだー」
バルトに仕事を任せっきりでまともに仕事してないニートと、さっきまでメラの執務室に居座っていた暇人が文句を垂れてますが無視しましょう。
コホン、今回は私から伝えたいことがあります!
コミュ障だから何にも話せないだろって?
ふふふ、実は今回は話したいことを全て紙に書いてきたのだ。
というわけではい!
みんなこの紙を読んでくれ!
「全てが終わったことだし冒険者としてこの世界を旅するのもいいんじゃないか、ですか?」
そうそう。
エルフの殲滅も世界の命運をかけた戦いも終わったことだしこれからは異世界転生定番の楽しみを味わってもいいんじゃないかっていうね。
「いやまだ全て終わってないんだけど。戦争の後処理とか魔族の立て直しとか残ってるんだけど」
それに対する返答の既に準備しております、ほい!
「全部バルトに任せようじゃねーよ。バルト殺す気か」
普段から仕事丸投げしてる魔王に言われたくないですー。
ブーメラン?しらね。
「とりあえず魔族のあれこれが終わってからだからね。話はそれから」
えー魔王のケチ。
「……ご主人様、アリエルさん。私もう一度みなさんと旅がしたいです。私からもお願いします!今じゃなきゃいけないんです!」
私も同意見だ。
真面目な話、私の治療でどうにか一命を取り留めたものの魔王はいつ逝ってしまってもおかしくない。
最後に魔王にも旅を楽しんでほしい。
だから魔族領なんかでグダグダしている時間はないのだ。
「……あぁ、そうだね……でも私にはもうみんなと一緒に冒険をできるような力は残ってない。私にできることはここで元魔王として魔族の立て直しを指揮することだけだよ」
「魔王……」
魔王に最後だけでも楽しんでほしい、でも無理はしてほしくない。
「ご主人様でも黒でもダメだったのよね…誰か直せる人はいないのかしら…」
それでも……私は…魔王に……こんな時に私にもっと力があれば、Dのような力があれば魔王の魂の傷なんかちぃちょいのちょいなのに……。
「白織」
この声は。
後ろを振り向くといたのはサリエルだった。
「私ならアリエルの魂を修復できるかもしれません」
マジで!?
脳内お花畑天使のくせしてやる時はやるじゃんか。
でもそれもっと早く言ってくれなかったかなー?
もしかして聞かれないと答えないタイプ?
ないわー。
「マジで?じゃあなんでもっと早く言ってくれなかったわけ?魔王がいつも辛そうにしてるの見えてなかったの?」
思いのほかすらすらと言葉が出てくる。
嫌いなやつ相手だと喋りやすいってやつか。
「修復する魔術は使えるには使えるんですが、今の私にはエネルギーが足りないんです」
エネルギー?
それなら私がいっぱい持ってるよ。
ほらこの異空間の中に……。
あれ?
おかしいな。
システムを壊す際の予備用にエネルギーを貯めておいたはずなのに……。
まさかDあいつ私のエネルギー掠め取ったな!?
エネルギーは自分が出すって言いつつ私からもとってたのかよ!
なんでだよ!
まさかこの事態を予想してたのか……。
「じゃあアリエルさんの魂を修復するにはあとはエネルギーさえあればいいわけね」
その通り。
エネルギーさえあればいいんだけどそのエネルギーを手に入れる手段がない。
魔物を倒したとしても殆どはシステムに回収され私たちの手には入ってこない。
……あれ?
システムは崩壊したんだよね?
じゃあ魔物を倒した際のエネルギーは全部私たちに入ってくるんじゃないのか?
「魔物。狩る」
「……!そうよ!つまり冒険者として旅をしつつ魔物を狩ってエネルギーを貯めればいいのよ!」
吸血っ子お前もしかして天才か?
「みんな、ありがとう…!サリエル様もありがとうございます……!」
魔王も本当は最後くらい楽しみたかったんだな。
本当に良かった、これで万事解決だ。
何か忘れているような気がしなくもないけど、うん、気のせいだな。
それから暫くして魔王城近くの冒険者ギルドへ向かった。
「みんなー!ここが冒険者ギルドだよー!」
「立派な建物だわ……!」
「ファンタジーって感じだね」
ファンタジーな感じではなく実際ここはファンタジーの世界なのだ。
魔物だっているし魔物討伐だって実在する。
これからの冒険者生活を想像するとテンション上がってくるな!
ドアを開けて中に入ると、ゲームや漫画に出てくるような、ザ・冒険者ギルド!って感じの内装が広がっていた。
そして手近な椅子に座る。
はい!
なんと今回は冒険者の先輩をお呼びしております!
どうぞ!
「どうも」
「こんにちはー」
田川君と櫛谷さんの登場です!
どんどんぱふぱふー!
今回はこのお二方に冒険者としての常識や心得などを教えていただきます。
「二人とも、今日はわざわざきてくれてありがとう」
「おい笹島。ありがとう、じゃねーんだよ。お前俺らの武器ぶった斬ったの忘れたのか?よく今回のことお願いできたよな」
「それはごめんって。武器なら新しいのを作るから」
「そう言う問題じゃないんだよ!あれは俺達の冒険者生活の思い出が詰まってるんだよ変わりなんてないんだよ!」
あーそういえばそんなことあったな。
一応千里眼魔術で見てたけど容赦なかったなー。
というかあれ大事なものだったのか。
いやー私たち服とか剣とか実質作り放題だから感覚麻痺してたわ。
「クニヒコ落ち着いて。笹島君だって悪気があったわけじゃないんだろうから」
「そ、そうだな」
いや悪気しかなかっただろと言うのはおいておいて、なんで今回の件受け入れてくれたのか謎だな。
こんなに揉めてるのに。
嫌な予感がして吸血っ子の方を見ると目を逸らされた。
怪しい。
ここには関係ない人もいるし吸血っ子のお仕置きは後ほどするとして。
「今回の件受け入れてくれてありがとう。私からもお礼を言うよ。私も戦闘能力はあるけど冒険者としてに知識はないからね、助かった」
「い、いえ、こちらこそっ……!」
田川君達めっちゃビビってるわ。
仲間が魔王軍幹部にボコボコにされてしかもその上司ともなるとビビって当然か。
魔王が怖がらなくていいよーと宥める。
どうにか落ち着いたようで、冒険者としての心得的なのを話し始めてくれた。
「まず、冒険者にとって大切なのは連携。ピンチでも仲間で協力して聞き的状況を打破することはできる、それが冒険者の強みです」
なるほどねー。
私自身仲間と力を合わせればなんでもできるって言うのは信じてないけど冒険者、というか人間にとってそれは大事なことなのかな。
ところでさっき早速仲間内で亀裂ができてたけど大丈夫なんか私達。
「そして冒険者として生活する中で持っておくと便利なスキルがいくつかあります。アイテムボックス、浄化魔法、などなどです」
異世界転生の常識じゃね?
説明必要だったか?と思ってみんなの反応を伺おうと見渡すと吸血っ子が必死でメモを取っていた。
あ、吸血っ子さん前世では異世界転生系の話読んだことないんですかね。
いや多分そうだわ。
あんまりこういうラノベとか読んでるところ想像できないし。
そういえば鬼くんは前世でラノベとか読んでたりしたのかな?
そういうふうには見えないけど意外とこういう本好きなのかも。
こんな調子で田川先生と櫛谷先生のご教授が行われていった。
「で、まずは冒険者登録をしないことには始まりませんね」
おー!
これはあれですな!
登録時の試験でチートっぷりを見せつけて周りを驚愕させる定番の展開ですな!
よし、やってやるぞ。
私の神としての実力を示すときだ!!
「みんなー分かってると思うけど私たちの正体がバレると面倒だからほどほどに手を抜くようにね」
なんでさ!
いいだろ私にもお約束的展開をやらせてくれよ!
「だーめ。私たちは魔族から見て恐怖の対象。それが私たちだってことがバレちゃったらろくなことにならない」
ちぇー。
正論言われたらどうしようもない。
「アリエルさんは登録はどうします?登録の試験ですし魔物のレベルはあまり高くないと思いますけど」
あー魔王ね。
魔王は今弱体化してる状態、ちょっとした運動さえ厳しいのに弱い魔物とはいえ戦うなんて到底無理だろう。
でも確か魔王って既に登録は済ませてるんだっけ、どうだっけ。
「それについては大丈夫ー!私は既に昔登録済ませてるから問題ないよー」
そう言ってどこからともなく冒険者カードを取り出す魔王。
いやそんな水着みたいな服のどこにしまってたんだよ。
そして所々字が消えかけててとにかく古い!
いつのだよ!
実力を隠そうどころの話じゃないわ、どんだけ長生きしてるんだよって怪しまれるわ!
「アリエルさん…これいつの……?」
「昔何かあったとき用に作ったんだけどいつだったかなー?覚えてないや」
ただでさえこの世界は紙の劣化が早いからなー。
見るからにボロボロだわ。
「ここの受付で登録するんです」
なるほど。
じゃあ誰から行くー?
「ここはやっぱり言い出しっぺのご主人様からかしらね」
よしきた!
じゃあ行ってきまーす!
手加減しても凄い神の実力見せてやるぜはっはっは!
と意気込んできたものの受付前で詰まる。
なんて言えばいい?
登録、で伝わるか?
最近初めましての人と話をしてなさすぎて話し方忘れたわ。
みんな最近は私がほとんど喋らなくても一言二言だけで理解してくれて楽なんだよねー。
まあその今まで楽してきた弊害が来ちゃったんだけど。
「登録」
懲りずに一単語での会話を試みる。
「冒険者登録ですね。登録時には試験が必要ですが装備やアイテム等の準備はできていますでしょうか?」
受付嬢はプロだった。
相手が全身真っ白の異端ファッションをしていても単語しか喋らない超無口だとしてもしっかり対応してみせたのだった…。
こくりと頷く。
「ありがとうございます。ではまず必要事項をこの用紙にご記入ください」
そう言って一枚の枠が書かれた紙を渡される。
名前、年齢、職業。
名前は白、年齢も16歳として問題は職業だ。
私自身魔術寄りにタイプとはいえ鎌での接近戦もできる。
とは言え試験であの物騒な鎌を使うわけにはいかない。
じゃあ魔術を使って戦うのかと言われても私の使う魔術はシステム内魔法とは仕組みがかけ離れている。
試験で魔術を使えばシステム内にない魔法を使ったと驚かれるのは目に見えている。
鎌も魔術も使えない……どう戦えと?
物理?
ないわー。
私前世も今世人型になってからもろくに運動なんてしたことないしそもそも格闘術1ミリも知らない。
吸血っ子よその格闘スキル私に分けてくれ。
マジでどうしろとー!
助けてと魔王達に視線を送る。
ん?
ちょっと待てよ、そこにいつでもどこでも簡単に武器を作れる人がいるじゃないか。
頼む鬼くん私になんかいい感じの鎌作ってくれ!
ということで職業には鎌使いと記入。
記入し終わった紙を渡す。
「ご記入ありがとうございます、では試験用の別室に移動しますのでついてきてください」
そう言っら受付嬢にちょっと待ってくださいとお辞儀をし鬼くん達が座っているテーブルへ行く。
「鎌」
「え?」
私の今持ってる鎌じゃ目立ちすぎるから君のスキルでそこそこの性能の鎌作ってってことなんだけどわからないの?君エスパーじゃないの?
「ラース君相手だとしても最低限ちゃんと喋らないと何も伝わらないよー」
ちくせう。
もう一言だけだからな!
「作って」
「そっか、白さんがいつも使ってる鎌じゃ目立ちすぎるよね」
うんうん理解が早くて助かるわー。
「了解、すぐ作るから」
こんなことしてるからいざとなった時に待った言葉が出なくなるんだろうなー。
まあ私は行動は変えないけど。
何があってに私を貫くそれが私のポリシーなのだ。
私がどうでもいいことを考えてる間に鎌が完成した。
鑑定できないからわからないけど所蔵魔力量から見るに私の鎌には劣るものの十分なぶっ壊れ性能であることが読み取れる。
「十分過ぎる性能じゃない。こんな鎌持ってたら目立つわよ。もっとまともな鎌つくりなさいよ」
「折角あげるからにはなるべく性能のいいものを渡したくてさ…」
その気持ちは嬉しいが普通の鎌でも別に良かったんだぞ?
鬼くんにありがとうという目線を送って試験用の別室へ向かう。
だだっ広い部屋の中にはにはでかでかと召喚魔法陣らしきものが書かれている。
なるほど、これで魔物を召喚して戦わせるのか。
この召喚魔法転移魔法の下位互換みたいなものなのか、面白いな。
私が魔法陣を眺めているとわらわらと冒険者達が部屋の中に入ってくる。
ん?これもしかして戦いを見られるタイプ?
余計ヘマできないじゃん。
そしてしれっと魔王達も混ざってるわ。
よーし、しょうがないな、私の活躍を見せつけてやりましょうか!
奥から魔物使いと思わしき職員が出てくる。
「では早速召喚しますよ。魔物が出てきたら戦闘開始です。制限時間は15分なのでその時間以内に倒してくださいね。」
ボワっと魔法陣が光って複数隊の魔物が現れる。
狼型の魔物か。
確かに山脈に近い魔族領ではウルフと戦う機会は多いはず、実践的な試験が行われるみたいだ。
いつもなら簡単な魔術で一掃するところだけど、今回はまず鎌を振りかぶって一発。
見事なまでに綺麗にスパッと切れる。
観戦していた冒険者達から歓声と驚きの声が上がる。
こ、これでもやりすぎなのか?
とは言え私は普通に振りかぶっただけなのでこれ以上手を抜くこともできない。
その後も順調にウルフ達を切り刻んでいく。
最後の一匹が唸り声を上げつつ倒れて勝負が決する。
はい、私の勝利ー!
「おお……凄いですね、合格です」
いえーい!
職員さんが若干引いてる気がするけど見なかったことにしよう。
私は完璧にやり遂げたぞ!
さて次は誰が行くんだ?
「次はあんたがやりなさい」
「えっと……僕は……」
「もしかしてさっきので魔力使い果たして倒す自信がないのかしら?」
いやなわけ。
調子悪いんかな。
しょうがないお次は吸血っ子、君だ。
ぽんと吸血っ子の背中を押す。
「はいはい次は私なのね分かったわ」
吸血っ子が受け付けまでスタスタと歩いて行く。
冒険者登録がしたいんですが、と私には言えないような長文を喋る吸血っ子。
渡された用紙に記入し別室へと移動する。
私たちも観客としてついていく。
さっきと同じウルフの魔物が召喚される。
吸血っ子はいつものお気に入りの魔剣でバッタバッタとウルフの薙ぎ倒していく。
力抑えてるように見えないなー……。
いや本気出したら目にも止まらない速度でウルフ達はあっという間に全滅するから手加減してるのは事実なんだけど、とても加減してるようには見えねー。
そしてあっさり全員やっつけたっぽい。
さすがだわー。
誰だこんな最強の剣士を育てたのは。
ん?
そう言えば私だった!
へへへ照れるなー。
「ご主人様!私なかなか良かったんじゃないかしら!」
うんうん。
戦い大好きな吸血っ子のことだからうっかり本気で相手しちゃうかと思ったけど、しっかり手加減してて良かった良かった。
吸血っ子の冒険者登録も完了し最後は鬼くんです。
なんか調子悪いみたいだけど頑張れ!
「次は僕か…じゃあ行ってくる」
あれーなんか乗り気じゃないのかな?
魔王城で話し合ってた時は楽しそうだったのに。
やっぱり私たちと冒険するの嫌なのかな?
もしかして無理やり突き合わせてたのか?
だとしても鬼くんがこんな露骨に乗り気じゃないような態度をとるとは思えない。
理由がわからないまま鬼くんは別室へと去ってしまった。
私たちも急いで後を追いかける。
直ぐに魔法陣から魔物が召喚される。
いつもの二刀じゃなくて刀一本で戦うっぽい。
ウルフ達が一斉に鬼くんに襲いかかる。
そして鬼くんの刀がウルフの首を切ろうとしたその時、鬼くんが少し躊躇ったそぶりを見せる。
何やってんの!?
噛まれるよ!?
案の定鬼くんはウルフ達に噛みつかれる。
見ていた冒険者達から悲鳴が上がる。
高い防御力のおかげで怪我はしてないっぽいけど、本当にどうしたんだろ。
すると鬼くんは意を決したようにウルフ達の首をスパッと切り落とす。
さっきまでの躊躇いが嘘のように目に見えない速度で振るわれた刀によってウルフ達は瞬く間に瞬殺された。
疲れ切ったような顔で鬼くんが帰ってくる。
「あんた、突然どうしたのよ?ろくに防御もせずに噛みつかれちゃって、何かあったの?」
「いや、なんでもないよ」
なんでもないって言う時は大体何かある時だからね私知ってるからね。
「そう、ならいいのだけれど……」
吸血っ子は詳しいことは聞かないでおくみたいだ。
私には問い詰める会話力もないので、無理やり気にしないことにした。
「みんな冒険者登録完了だね!ってことでまずは最初の依頼をうけよっか!なんかおすすめの討伐依頼ある?」
「おすすめなのはやはり遠出せずに終わる依頼ですかね。皆さんお強いですし魔物の強さの心配はいらないでしょうから、なるべく近場のクエストを受けるのがいいかと」
近場のクエストかー。
ならこれとかどうかな?
近隣の湖に水竜が居着いているから討伐して欲しいってやつ。
みんなに伝わるように依頼票を指差す。
「この湖ならここから1日もかからないね!白ちゃんいいクエスト見つけたじゃん」
ふふん。
神である私にとってはこれぐらい容易いことよ。
いや神関係ないけど
魔王が依頼票をちぎって取る。
「じゃあ明日このクエストに出発しよーう!えいえい?」
「「「おー!」」」
魔物との戦い、みんなでワイワイ歩いたり、キャンプしたり、観光名所に立ちよったり。
これから楽しいことがたくさん待っている。
これから始まる冒険者生活に胸が高鳴った。
6/6ページ