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蜘蛛ですがpixiv削除済SS

夏だ!海だ!海水浴だ!
 ということで私たちは今、魔族領内の海に来ています!
 そう、この世界では水龍とかがうじゃうじゃ居るあの海ね。
 
 普通なら、海に入ると水龍を始めとする海の魔物にやられかねないから海水浴なんて出来たもんじゃない。
 でも、普通じゃない人外ステータスを持ってる私たちなら超強い水龍が襲ってきても撃退できるわけで。
 それに気がついた私は、昔懐かしの海水浴をするためみんなを連れて海にやってきたのです。

「メラゾフィス、この水着似合ってるかしら?」
「勿論です、お嬢様。よく似合っていますよ」

 似合わないわけないでしょ。
 なにせ、みんなが着てる水着作ったの私だし。
 各人の意見は聞かずに完全に私の好みで作った定期。
 完全防水オーダーメイド水着の製作、ただいま無料で承っております!
 ただし身内に限る。
 ていうか魔王っていつも水着みたいな服着てるんだからそのままでよかったのでは?
 
「ならよかったわ。じゃあ行きましょ」
「ちょっと待ったー。泳ぐ前に準備体操だよー」

 準備体操なんているの?
 ステータスのおかげで安定して動けるんだから要らなくない?
 実際、運動の前にウォーミングアップしてる人なんか見たことないんだが。
 
「準備体操?」
「こういうのは雰囲気だよ雰囲気」

 雰囲気て。
 それってつまり効果ないってことよね?

「……アリエル様、準備体操とは何ですか?」

 メラが知らないって事は、やっぱりこの世界には準備体操って概念はないんかな。

「日本では運動する前に準備体操をするんだよー。私がお手本やるからみんなでやろう」

 答えになってねえ。

「じゃあいくよ。体を横に曲げるうんどーう!はい、いちにーさんしー」

 うーん?
 魔王よ、これは準備体操というよりラジオ体操じゃないか?
 私も準備体操なんて覚えてないし、魔王が知らないのも当たり前か。
 ラジオ体操はテレビで放送してたのをネトゲしながら流してたから何となく分かる。
 でも、実際の体操の動きはあんま覚えてない。
 だって観てないし。
 流して聴いてただけだし。
 だから、魔王はラジオ体操で流れてる歌を歌いながら、うろ覚えの体操になってるのか分からない動きをしてる。

「ごーろくしちはち」

 誰も一緒にやってないね。
 あ。人形蜘蛛たちはしてたわ。
 私?
 私はクールビューティーキャラなんでラジオ体操もどきの謎体操はしません。

「……アリエルさん、それラジオ体操じゃないですか?」
「動きも微妙に違うわね」
 
 若干遅いツッコミ。
 魔王が割とガチで間違ってるみたいだったから、私もツッコんでいい雰囲気かわからなかった。
 でも良かった!スッキリした!
 
「そ、そんな馬鹿な……」

 魔王は本気で間違っていた模様。
 魔王は悪くない。
 悪いのは体育に授業の準備体操を真面目にやってなかったDだ。

 てゆうか準備体操とかいいから早く海に入りたいです!

「入りたい」
「あー。ごめんごめん早く海入ろっか」

 さあさあ入りましょー。

「じゃあいくぞー!夏だ!海だ!海水浴だ!いえーい!」

 それ冒頭部分でやったわ。
 ノリが一緒なんだが?
 さすが半分私だわ。
 
 すると、即フィエルが元気よく海に飛び込んでいった。
 普通の飛び込みではなく両手足を広げてダイブ。
 それステータス無いとめっちゃ痛そう。
 まあ、人形の側部分は糸でできてるから痛覚なんてないんだけれど。
 
 アエルも少し遅れて海に入っていって、うつ伏せでぷかぷか浮かんでいるフィエルを注意している。
 けどフィエルは気にもせず、また水面ダイブして遊び始めた。
 しょうがない、フィエルは注意してもどうにもならないタイプだからね。
 お世話係?のアエルも最近はもう大体無視している。
 
 「……私達も入ろっか」
 「ん」
 「私はここで荷物を見ていますね」
 
 せっかく海に来たというのに入らないなんて勿体ない。
 荷物なら全部私の異空間に入れておくから君も入るんだ。
 
「メラゾフィスさん、荷物は僕が見ておくのでソフィアさんと一緒に行ってあげてください」

 この世界の海に来るのは初めてだろうし入ればいいのに。
 てか空納に荷物くらい入れられるでしょうが。

「ラースは海に来るのは初めてでしょう。それに、たまには息抜きも大切ですよ」

 そーだそーだ。
 せっかく私が転移で海に連れてきてあげたというのに。
 なんで?入りたくないんかな?
 海で水着を着た美少女と遊べるなんてマンガの世界だけで現実では滅多にないのに。
 あ、もちろん防水バッチリの丈夫な水着だから何処ぞの勇者みたいなことにはならない。

「だめ、メラゾフィスはこっちよ。一緒に泳ぎましょう?」
 
 そうなるだろうと思ってました。
 メラは吸血っ子に有無を言わさず連れて行かれた。
 そして残された鬼くん。
 しょうがないから、一緒に泳いでやらんこともない。
 置いてある荷物を全部異空間にポイ。
 ちなみに、この異空間は衝撃が発生しないようにしていからポイしても問題ない。
 
「泳ぐ」

 鬼くんの腕を引っ張って連行する。
 あそこで突っ立ってるサエルも回収。
 アエルは……一人で砂遊びをしている。
 さっきまで海にいたのに。
 一人で遊ぶのが好きなのか?

 
 吸血っ子とメラはいかにも恋人って感じでパシャパシャ水をかけあったりして遊んでる。
 ちなみに私たちの方の水遊びはパチャパチャではなくザブーンザバーンだ。
 主に魔王が元凶。
 みんながかけてくる水をシステム外の超絶身体能力に物を言わせてことごとく回避していた私。
 ムキになった魔王が水魔法とか念力とかを使って本気でかかってきた。
 お返しに私も本気の水魔法をお見舞いした。
 そんなこんなでみんなで本気で水を掛け合う遊びになってしまった。
 ちなみに鬼くんとサエルは強制参加。

「わっ!?津波!?」
「ここだと危険ですね。少し向こうに移動しましょうか」

 あっちで何か言ってるリア充たちは無視だ無視。
 ちゅどーんすればいいのに。
 私もそこそこリア充してるだろって?
 またまたー。
 ……残業当たり前のブラック企業勤めのどこがリア充さ?
 
「白さん、この遊びやめない?ソフィアさん達の方にまで余波が飛んでいて危ないよ」

 なんで私に言うねん。
 始めたの魔王やろ。
 私も共犯?知らん。

「わかった」

 私今日初めて喋った!私偉い!
 これでプラマイゼロだな!

「あー、そうだね。安全な遊びにしようか」
「まって」

 まってくれ。実は私にはやりたいことがあるんだ。

「ん?どったの白ちゃん?」
「一人で遊ぶ」

 不思議そうな顔をしている二人を尻目に海から出る。

 
 旅の途中にも一度だけ海に行った事があったけど、あの時私はまだ下半身蜘蛛のアラクネだった。
 水に浮きやすい蜘蛛ボディのおかげで全く泳げなかった私は、ワイワイと海水浴をしている魔王たちを砂浜から一人寂しく眺めていたわけですよ。
 
 だが今回は違う!
 泳げないカナヅチ蜘蛛はもう卒業した!
 今度こそ華麗に水の中を泳いで見せようではないか!
 ということで、遊んでいるみんなから少し離れた場所で水の中に入り泳ぎ始める。
 
 ……うーん……あれぇー?
 全然前に進まないぞ?
 蜘蛛型だった時も水面に浮いているとはいえども、一応白鳥みたいに泳ぐことはできた。
 しかし、蜘蛛ボディという優秀な浮き輪を失った今の私は1ミリも進むことができていない。
 
 そういえば私って、スポーツテストクラス内ダントツ最下位の運動音痴でした。
 それなのにスキルによる補正も無しに泳げるわけがない。
 
 ……とでもいうと思ったかバカめ!
 引斥の邪眼解放!
 進行方向に重力を発生させてプロ水泳選手もビックリなスピードで水中を高速移動していく。
 運動音痴な私でも泳ぐ方法などいくらでもあるのだよ。
 
 え?これは泳いでるとは言わないって?
 だ、大丈夫、ここからが本番だ。
 手から糸を射出。
 出した糸を空間魔術で作った空間の歪みに引っ掛ける。
 そして糸を縮めることで引っ張られ、そこまで移動できる。
 その名も立体機動繰糸!
 糸って言わば私の体の一部みたいなものじゃん?
 その糸を使って水中を移動してるんだから、私が泳いでるって言えるでしょ。
 異論は認めない。
 
「あれ?白ちゃんがいない!?」

 魔王の声が聞こえるけど、水に潜ってるから何言ってるのか全く分からんな。
 完璧に泳げたことだし、そろそろ上がるか。

「あっ!あそこで白ちゃんが溺れてる!」

 遠くの魔王が水の中から顔を出した私を指差して言う。
 なんで私が海に潜ってる=溺れてるってことになるのさ!魔王ひどい!
 私だって泳げはしないものの糸とか空間魔術があるから溺れることはないんだぞ。
 とりあえず大丈夫だと言うことを伝えよう。
 本当に溺れてたと勘違いされたくないし。
 
 ……魔王かなり遠くにいるよね?
 大きい声出さないと聞こえないよね?
 叫ぶなんてムリだ。
 そんなことしたら私の喉がダメになる!
 コミュ症蜘蛛にこれは辛すぎる。
 どうすればいいんだ!
 あ。魔王聴覚強化持ってるから遠くから喋っても聞こえるんだった。

「大丈夫」

 大丈夫と言ったにも関わらず魔王が急いで駆け寄ってきた。

「大丈夫じゃない。疲れただろうし白ちゃんは休んでな」

 違う!溺れたけどもう大丈夫なんじゃなくてそもそも溺れてないんだって。
 
「溺れてないし疲れてない」
「さっき完全に溺れてたでしょ」
「溺れるわけないでしょ。私は神ぞ?」

 なんで信じてくれないんだ。
 魔王に砂浜までドナドナされていく。

「私はあっちにいるから何かあったら呼んで」
「はーい魔王、私はそもそも溺れてませんー」

 魔王はそのまま海の方まで行ってしまった。
 何かあったら言えって言ってたのに……。
 
 砂浜に降ろされた私にフィエルとリエルが寄ってくる。
 二人の手には小さなスコップ。
 砂遊びかー。
 前世でも今世でもやったことないけど楽しそうだな。
 フィエルからスコップを一つ貰う。
 よーしやるぞー!
 
 気合を入れたとき、転がってとフィエルがジェスチャーした。
 え、なんで?
 転がったら砂遊びできないじゃん。
 よく分かんないけどとりあえず寝転がってみる。
 するとどうでしょう。
 転がった私の上にどんどん砂が乗せられていくではありませんか。
 なんで私はこの問題児たちの言うことを素直に聞いてしまったんだ。
 魔王の言うとおり疲れてたのかもしれない。
 
 一分経つ頃には、私は完全に砂の山の中に埋もれていた。
 そして二人は何故かいなくなってしまった。
 飽きたのか?
 すると二人が大きなシャベルを持って帰ってきた。
 シャベルなんて誰が持って来てたんだ……。
 二人は私に近づいてきて、さっきとは比べ物にならないスピードで私に砂を乗せはじめた。
 終わりじゃなかったの!?
 まだ埋められるの私!?

 私を土台とした砂の山は更に大きくなっていき、ついに人の背丈までに達した。
 二人はやりきったとでも言うような満足げな顔で、今度は本当に私を置いてどこかへ行ってしまった。
 おーい、これ普通の人なら出られなくなるやつなんじゃないの?
 これ崩して外に出ちゃっていいー?
 でも、これを見せに魔王たちを呼びに行ったのかもしれないな。
 崩さずに待っておいてやるか。

 あのまま砂に埋もれて十数分待っていたにもかかわらず、二人は帰って来なかった。
 完全に忘れられてるなこれ。
 ちなみにみんながいる海の方はどデカい砂の山で死角になっているから全く見えない。
 そろそろ出ちゃっていいよね?
 私が少し体を動かしたその時、フィエルが超スピードでこっちにやってきた。
 今にも泣きそうな顔で私を見つめてくる。
 出ちゃダメですか。そうですか。
 いつまでこうしてればいいの?
 
「いつまで?」

 するとフィエルがさっきとは打って変わって満面の笑みを浮かべた。
 リエルを彷彿とさせるいい笑顔。……すぐ解放してくれるってことでいいですか?
 違いますか。そうですか……。
 
 私も楽しそうなあっち側にいかせてくれー。
 

 私は結局帰る直前まであのままだった。
 あれぐらい簡単に出られるだろって?
 サエルにずっと監視されてたからムリだった。
 
 後から聞いた話だけど、みんなも溺れた私を安静にさせておくのには納得してそのままにしていたらしい。
 なんで溺れた前提になってるんだ。解せぬ。
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