このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

蜘蛛ですがpixiv削除済SS

今私は魔王の部屋の前にいる。
 右手には私の糸で作ったカラフルな色紙。
 左手には私の背丈を超える大きな笹。
 そう、今日は七月七日。日本でいう七夕である。
 
 というわけで魔王ー。願い事書いてくれー。
 両手が塞がっているので糸を使ってドアを開ける。
 我ながら素晴らしい操糸技術だわ。
 魔術の無駄遣い?
 これは魔術の有効的活用という。

「白ちゃん、入る時はノックしてよー」

 残念ながら糸ではノックなんてできないのです。

「笹と短冊って……もしかして七夕?」

 ご明察。さすが魔王、喋らなくても伝わるな。

「フッフッフ、よく分かったな。さすが魔王、褒めてしんぜよう」
「いや誰でも分かるし」

 そんなことない。私と魔王が以心伝心なんだ。
 すると、ドアがノックされて書類を抱えた吸血っ子が部屋に入ってきた。
 
「アリエルさんと、ご主人様?手に持ってるのは……今日ってもしかして七夕?」

 訂正。吸血っ子が分かるなら誰でも分かる。

「うん。白ちゃんが七夕したいんだってさ」
「いいですね。メラゾフィスと、あとついでにラースも呼びましょ」

 二人がいれば私が説明する省けそうだ。いえーい。
 まあ、両手の七夕セットで説明しなくても分かりそうだけど。
 
「頼んだ」
「あ。けどご主人様、フェルミナがこの書類を片してって言ってたわよ。」

 な、なんだってー!?
 私がやらないといけない仕事があるのか!?
 しかも、わいわい七夕イベントが始まりそうな今!?
 タイミング悪いな。
 
「後じゃダメ?」
「ちょっとぐらいなら良いんじゃないかしら」
「うんうん。せっかく白ちゃんが準備して来てくれたんだし」

 おい魔王。おい上司。それでいいのか。
 吸血っ子が山のような書類をドスンと机の上に置く。
 女の子が持つ量じゃねえ。
 いや、人間が持つ量じゃない。

「私はメラゾフィスを呼んでくるわね」
「じゃあ白ちゃんはラースくんを呼んできて」

 なんで私!?
 魔王が呼んで来ればいいじゃん。
 こちとら七夕の用意で疲れてるのに……。

「だって、私ってば魔王じゃん?いつ誰がくるか分かんないからこの部屋を出るわけにはいかないんだよー」
 
 魔王なら、あくせく働いている部下たちを無視して自分だけ七夕してちゃダメだと思いますー。
 
「白ちゃんがなにか言いたげな顔してるけど、何も言わないってことはオッケーってことでいいよね?」
「……うん」
 
 くっ……魔王と二人きりだったら反論できたのに。
 しょうがない、転移でパッと行ってこよう。
 


 めんどいので鬼くんの部屋の中に直接転移。
 あれ、私が来たこと気づいてないっぽい。
 せっかく七夕セットフル装備で来たのに、話しかけないとダメじゃん。
 なんて声かけよう?
 ……あ。あれやってみたいな。
 仕事に集中して私に気づかなかった報いだ!
 
「だーれだ?」
「!……白さん」

 なぜバレたし。
 目も塞いだし魔術でボイチェンもしたのに。
 魔術はこういう時に使うもの。
 え。これも違うって?
 またまたー。

「バレた……」
「転移でいきなり部屋に入って来れるのは白さんだけでしょ?」

 抜かった……。
 面倒くさがらずにドアから入ればよかった。
 ってそれって本末転倒じゃんか!詰んでる!
 
 で、私を見て何か言うことはないのか?
 ……ていうか、いい加減書類から目を離せ!
 私を見ろ私を。

「ところでこの前頼んだ書r」
「転移」

 強制転移。
 そこから先は言わせん。
 


 転移で魔王の部屋に戻ると既に吸血っ子がメラを連れて戻って来ていた。
 早くない?
 私が行く必要あった?

「みんな集まったことだし書こうかー」
「何を書くんですか?」
「?」
「あなたそんなことも分からないの?願い事にきまってるじゃない」

 ここぞとばかりに吸血っ子がマウントをとる。
 後ろ振り返って私を見なかった鬼くんの自業自得。
 私まだ君の後ろにいるよー。へいへーい。
 背後から笹をフリフリ振ってみる。

「白さんどうしたの?……って笹?」
「七夕」
「あー、七夕か」
「……ご主人様何も言わずに連れて来たの?」

「……」
 
 そんなわけないじゃないですかー。
 二言ぐらい喋りましたよー?
 
「笹ってこの世界にもあったのかい?」
「ない」

 残念ながらこの世界には笹は無かった。
 地球とは自生している植物が違うんだからしょうがない。
 
「では白様が日本から買ってきて下さったのですか?」

 日本でっていうのは正解。
 でも、私は無一文だから買ったわけじゃない。
 わざわざ日本の竹林から笹を[[rb:奪 > と]]って来た私を労わるのだ。
 探すのに結構時間かかったんだから。
 けど説明するのは大変なので頷いておく。
 ……そのおかげで、やらないといけない仕事がたんまり溜まってるとかそんな事は決してない。ないったらない。

「短冊も白ちゃんが用意してくれてるよ」

 質感にこだわって作りました。
 でもその分日本に売っている高級な和紙より上質だと自負してます。
 
「確かに手触りが良いわ」

 そうだろう、そうだろう。
 もっと褒めてもいいんだぞ?

「そうだね。それにしても白さんが着色するなんて珍しい」

 着色めんどかったです。

「面倒くさがりのご主人様なのに」

 吸血っ子ひどいぞ!
 証拠はあるのか!

「どうしても七夕がやりたかったんだねー」

 やりたいことのためなら面倒なことも厭わない真面目な蜘蛛ですから。

「これ」

 書くのにはゴルフ場とかで貰えるこのペンを使ってくれ。
 羽ペンで書くと滲む。

「おー。アンケート書くときにもらえるアレだ」

 そうそう、無料で貰った。
 日本円を一銭も持ってない私にはありがたい。

「書いたらこのペンもらっていい?」

 だめー。それ希少だからだめー。

 魔王がペンをとって書き始める。
 さて、私も書こうか。
 願い事ー。うーん……。
 この後、溜まった大量の仕事をやらなくても済みますように。
 真面目に考えよう、うん。
 魔王の悲願が叶いますように、とか?
 でもこれって抱負だよね。
 私の力ではどうにもならない願うことしかできないこと……。
 Dの眷属にならなくて済みますように。
 これにしよう。
 Dが私に飽きてくれることを願おう。そうしよう。
 まあそんなこと万に一つもないだろうけどね。
 
 ところで書いた願い事って誰が叶えてくれるんだっけ?
 織姫と彦星だったっけ?
 え。ほんと誰だっけ?
 ……短冊に願い事を書いたら神様が叶えてくれる、はず。多分きっとメイビー。
 でもこの世界の神様ってアイツでしょ?
 叶えてくれるわけないじゃん。
 だから私がみんなの願いを叶えてあげようじゃないか。
 織姫と白織って名前も似てるし。
 だから四人共、私でも叶えられるような簡単な願い事を書いてくれると嬉しいんだが。
 自分の力では叶えられない願いを書こうって言ってたのは誰だって?
 私の願いを叶えるのは私じゃないから問題ない。
 みんな大好き() 邪神様が叶えてくれる。
 
 ……あれ?Dの眷属になりたくない!って願いを本人が叶えてくれるわけ無くない?
 逆にDの魔の手から逃げられる率下がったのでは?
 私はアホか?
 
「みんな書けたね?じゃあコレは部屋の角に飾っておくから」

 魔王が笹及び私の短冊を部屋の隅に持っていく。
 もう過ぎたことは気にしてもしょうがないよね!
 これからのことを考えよう。
 願うだけじゃなく自力でDから逃げおおせる実力を手に入れないと。
 結局これも抱負になってしまった。
 よし。これが終わったら早速魔術の練習するか。

「白さん、短冊の隣に積まれてるものは……」

 差し当たっては、溜まりに溜まった書類仕事を片付けるところからだな……。
 
2/6ページ
スキ