短編
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※物語の重大なネタバレがありますので、ご注意ください。
前半が夢主、後半がメルル視点になります。
『メルル』
見間違うことなどない純白を見かけて、声を掛ける。
私に名前を呼ばれて振り返った彼女は、ふんわりとまるで聖女のような微笑みを浮かべた。
「名前さん!」
タタタッと愛くるしい小動物のように駆け寄ってきたメルルが私に抱きついてくる。それを軽く受け止めて背中に手を回せば、彼女は嬉しそうに笑みを零した。
「もっとぎゅっとしてください…」
『うん』
仰せのままに抱きしめる力を強めると私の肩口に甘えるみたいにメルルが顔を埋めた。
いつからだったか仲間の死を悲しんで泣いているメルルを抱きしめた時から、私たちは2人きりになる度にこうするようになった。
誰かの優しさや温もりに甘えたり、寄りかからないと心が壊れてしまいそうだったからかもしれない。
お互いを支え合って裁判を乗り越えていくうちに、私がメルルに対して特別な感情を抱くようになるまで然程時間はかからなかった。
メルルと一緒にいると安心すると同時にドキドキする。絶対に大切な彼女を失うわけにはいかないし、失ったら自分は間違いなく魔女化するだろうことは想像に容易かった。
「名前さんは私のこと好きですか?」
『……好きだよ。誰よりもメルルのことだけ』
「!そうなんですね。嬉しいです…!」
顔は見えなくても、メルルの声が弾んでいることから悪い反応じゃなくてほっとした。
「……それなら、私のために死んでくれませんか?」
『え……?』
彼女の言葉と同時に胸元に衝撃が訪れた。ゆっくり視線を下に向けると胸にナイフが突き立てられているのが見えて、それを確認した途端、急激に今まで感じたことのない痛みに襲われて、湧き上がってくるかのように喉を伝ってきた血が口から溢れ出て、思わず噎せてしまった。
永遠のように感じたこの苦しみはきっと一瞬のことなのだろう。流れる血と痛みのショックでか、身体が崩れ落ちる。意識が暗闇にのみ込まれていく寸前まで私は、彼女の細く白い手を汚い血で汚してしまったことが気になっていた。
**********
「どうして…」
こうすれば、名前さんは魔女化すると思っていたのに最後にみた彼女の表情は私のことを心配していたように見えて、私はショックで床にへたりこんでしまった。
その間も目の前で倒れている名前さんの血は止まらず、じわじわと辺りを侵食するように流れ出ている。
名前さんがどうすれば魔女化するのかそれを考えながら今まで一緒にいただけだった。
ふとある日、大事な人に裏切られたら憎しみも倍増するんじゃないかと思い至って、行動に出た。名前さんを心配する気持ちはあった。でも、それは他のみなさんに向ける気持ちと大差はないもので、特別ではなかったはず、なのに――
「こんなのは、嫌、です…っ」
私は自らが刺した傷に向かって治癒魔法をかける。魔女化してくれたらいいと思っていた。もし、失敗して殺してしまっても魔女裁判を起こせるからそれでいいとさえ思ってたのに…。
「あ!よかった…目が覚めたんですね!」
数分間魔法で治療し続ければ、傷はまるでなかったかのように綺麗に塞がった。それから少しして、ゆっくりと名前さんの瞼が開かれて私はほっと安堵の息を吐きぎゅっと強く名前さんの手を両手で握りしめる。
『メル、ル……?』
名前さんは状況が掴めていないのか困惑した様子で私を見つめていて、私はそれに優しく微笑み返した。
「本当は私、名前さんを魔女化させようと思っていたんですけど、気が変わってしまったんです」
『えっ!?』
驚いている名前さんの頬に祈りを込めて口付ける。
「好きです。私の仲間になってくれませんか?」
――きっと、あなたなら頷いてくれますよね?
前半が夢主、後半がメルル視点になります。
『メルル』
見間違うことなどない純白を見かけて、声を掛ける。
私に名前を呼ばれて振り返った彼女は、ふんわりとまるで聖女のような微笑みを浮かべた。
「名前さん!」
タタタッと愛くるしい小動物のように駆け寄ってきたメルルが私に抱きついてくる。それを軽く受け止めて背中に手を回せば、彼女は嬉しそうに笑みを零した。
「もっとぎゅっとしてください…」
『うん』
仰せのままに抱きしめる力を強めると私の肩口に甘えるみたいにメルルが顔を埋めた。
いつからだったか仲間の死を悲しんで泣いているメルルを抱きしめた時から、私たちは2人きりになる度にこうするようになった。
誰かの優しさや温もりに甘えたり、寄りかからないと心が壊れてしまいそうだったからかもしれない。
お互いを支え合って裁判を乗り越えていくうちに、私がメルルに対して特別な感情を抱くようになるまで然程時間はかからなかった。
メルルと一緒にいると安心すると同時にドキドキする。絶対に大切な彼女を失うわけにはいかないし、失ったら自分は間違いなく魔女化するだろうことは想像に容易かった。
「名前さんは私のこと好きですか?」
『……好きだよ。誰よりもメルルのことだけ』
「!そうなんですね。嬉しいです…!」
顔は見えなくても、メルルの声が弾んでいることから悪い反応じゃなくてほっとした。
「……それなら、私のために死んでくれませんか?」
『え……?』
彼女の言葉と同時に胸元に衝撃が訪れた。ゆっくり視線を下に向けると胸にナイフが突き立てられているのが見えて、それを確認した途端、急激に今まで感じたことのない痛みに襲われて、湧き上がってくるかのように喉を伝ってきた血が口から溢れ出て、思わず噎せてしまった。
永遠のように感じたこの苦しみはきっと一瞬のことなのだろう。流れる血と痛みのショックでか、身体が崩れ落ちる。意識が暗闇にのみ込まれていく寸前まで私は、彼女の細く白い手を汚い血で汚してしまったことが気になっていた。
**********
「どうして…」
こうすれば、名前さんは魔女化すると思っていたのに最後にみた彼女の表情は私のことを心配していたように見えて、私はショックで床にへたりこんでしまった。
その間も目の前で倒れている名前さんの血は止まらず、じわじわと辺りを侵食するように流れ出ている。
名前さんがどうすれば魔女化するのかそれを考えながら今まで一緒にいただけだった。
ふとある日、大事な人に裏切られたら憎しみも倍増するんじゃないかと思い至って、行動に出た。名前さんを心配する気持ちはあった。でも、それは他のみなさんに向ける気持ちと大差はないもので、特別ではなかったはず、なのに――
「こんなのは、嫌、です…っ」
私は自らが刺した傷に向かって治癒魔法をかける。魔女化してくれたらいいと思っていた。もし、失敗して殺してしまっても魔女裁判を起こせるからそれでいいとさえ思ってたのに…。
「あ!よかった…目が覚めたんですね!」
数分間魔法で治療し続ければ、傷はまるでなかったかのように綺麗に塞がった。それから少しして、ゆっくりと名前さんの瞼が開かれて私はほっと安堵の息を吐きぎゅっと強く名前さんの手を両手で握りしめる。
『メル、ル……?』
名前さんは状況が掴めていないのか困惑した様子で私を見つめていて、私はそれに優しく微笑み返した。
「本当は私、名前さんを魔女化させようと思っていたんですけど、気が変わってしまったんです」
『えっ!?』
驚いている名前さんの頬に祈りを込めて口付ける。
「好きです。私の仲間になってくれませんか?」
――きっと、あなたなら頷いてくれますよね?
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