短編
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「おはよう。小吉くん」
――爽やかな笑みで挨拶してきた彼女に心臓を貫かれた。
名前ちゃんは最初からみんなを名前呼びしているから、自然とオレのことも名前で呼ぶけど、ほんと好きな子からの名前呼びって威力半端ないんだって!ほんとだよ!
「おはよー!名前ちゃんは今日も可愛いね!」
「もう、会って数秒で嘘つかないでよっ!」
「……ごめんごめん!」
こんな調子でオレのアタックはいつも無となる。
大体さ!オレが名前で呼ぶ女の子は名前ちゃんだけなのになんでちっともオレを意識してくれないわけ?もしかしなくても、名前ちゃんって凄い鈍感なの?鈍感だよね?じゃなかったら説明つかなくない?
「名前ちゃんって、恋ってしたことあるのー?もちろんオレはないよ!ウソだけど」
「……?」
オレの言葉に混乱したのか目を瞬かせる名前ちゃん。
そんな表情も可愛い!とか思っちゃうオレはもう末期だし、表情に出ないように必死に笑顔をキープした。
「小吉くんが言ったことはよくわからないからスルーするけど…」
「たはー!スルーされちゃうかー!」
「私が恋をしたことがあるかって言ったらそりゃあ、あるよ」
そう言った名前ちゃんは真剣だ。
真っ直ぐオレを見つめる名前ちゃんに緊張が走る。
ゴクリと思わず喉を鳴らし「それって誰なの……?」と震える声で問いかけた。
「誰って?」
「は?え、いや、なんかオレおかしい事言った?」
「うん、だって私が恋してるのって自分の才能にだもん!」
「……あー、そういうこと」
ホッとしたような、複雑なような……なんとも言えない気分で名前ちゃんを見ていれば名前ちゃんはキラキラ目を光らせて、自身の才能について語っている。
あーもぅ、バカ。バカほど可愛いなぁー!チクショー!
『惚れた弱みは見せたくない』
「あ、そういえばそう言う小吉くんこそどうなの?」
「え、何がー?」
「だから、恋したことあるの?」
「………………」
思わず真顔で見つめれば、名前ちゃんが「な、何?」とたじろぐ。
もう、お前に恋してるよっ!!!!と勢いに任せて抱きしめて押し倒してやろうかと思うけど、そういうわけにもいかないのが恋愛というものだ。
嘘か本当かの駆け引きなら得意だけど、生憎恋の駆け引きは専門外で、しかも相手は驚くほど鈍感で正直お手上げだけど。
「おーい!小吉くーん?」
名前ちゃんは黙り込むオレの顔の前で手をぶんぶん振っている。
その手首を掴んで止めて引き寄せれば、名前ちゃんはバランスを崩し身体をこっちに倒したけどすんでのところで転ばずに済んで、文句を言うためにかオレを見て、そして固まった。
「オレは名前ちゃんに恋してるよ」
「っ…………!?」
しっかり目を合わせて、キスしてしまいそうなぐらいの至近距離でそうらしくないぐらい真剣に言えば、名前ちゃんはわかりやすく顔を真っ赤に染めて後ずさった。
「え、それって……」
「まぁ、嘘なんだけど!」
「っ!!!!小吉くん!!」
堪らず嘘を付けば今までからかった中で一番怒った様子の名前ちゃんがにじり寄って来たからオレはダッシュでその場を去った。
「名前ちゃんでもテレたりするんだ……」
ニヤける顔を好きな子に見せるわけにはいかないから、絶対見つからない場所に逃げなきゃと頭を回転させ名前ちゃんが行かなさそうで身を隠せそうな場所を目指して駆ける。
その足取りは、ここ最近で一番弾んだものだったと思う。――本当に。
