短編
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※ネタバレ&捏造注意。V3最終章までクリア済推奨です。
突然だけれど、自慢をさせてほしい。
私の幼馴染みは人気者だ。
明るくて優しくて友達想いで、誰からも好かれるよく出来た子。
どんな風に育てばあんな人として完璧な子になれるんだろうって、幼稚園から一緒で家も近所で毎日のように一緒にいる私が言えることじゃないんだけどさ。
でも、冗談じゃなくて本当にそうなんだって名前ちゃんは――
「ねぇねぇ!昨日のダンガンロンパ観た?凄かったよね、天海くん!彼は本当に頭が良いよね。憧れちゃう!」
そうキラキラした瞳で語る彼女は今日も大好きなダンガンロンパという人気番組の話しを私の隣でする。
超高校級の才能を持ったクラスメイト同士が黒幕に監禁され、提示される動機ごとに殺し合いをするという悪趣味……サイコポップでクレイジーなあまり関心や興味があることも少ない私も嫌いじゃない作品だ。
最初は不謹慎だとか子供の教育に悪いだとかいう理由であまり良く思われていなかったらしいけど、どんな手を使ったのか最近ではもうすっかり大人気番組の仲間入りを果たしている。シリーズが増える事に世間の注目を集めている作品だ。
ミーハーな幼馴染みはすっかり番組にハマっていて、シリーズ52作品目の推しはさっきも名前が上がった天海とかいう人らしい。
「その話し昨日も聞いたよ」
「えー、だって天海くん毎回活躍しててカッコイイんだもん!」
「苗木や霧切はもういいの?」
「よくない!もちろん好きだよ!日向くんも七海ちゃんもね!」
「……名前ちゃんはほんと主人公とヒロインが好きだね…」
彼女が毎回好きになるキャラは決まって主人公とヒロインだった。
彼女にキラキラな瞳と惜しみなく語られる愛の言葉と好意を全面に向けられる登場人物達にさえ私は嫉妬してしまう。
だってこの世の誰が好きな子の好きな人の話し聞いて喜ぶんだって思うけど……。
「うんうん。わかるよ!やっぱりダンガンロンパは主人公とヒロインが特に輝く作品だもんね」
「あ、やっぱりキミはわかってくれるんだねっ!」
いるんだよね……それも同じクラスに。
名前ちゃんと同じでダンガンロンパの熱狂的なファンで、私と名前ちゃんの間に入ってくる帽子をかぶっていて暗くて興奮すると早口になるいかにもって感じの男の子。
あからさますぎてクラスの大半にドン引かれている彼は、ダンガンロンパを通じて人気者の名前ちゃんに近づく邪魔者だ。
クラスメイトどころか、名前ちゃんを好きな男子によく思われてないけれど、優しい名前ちゃんは彼にもみんなと同じように接しているから、名前ちゃんに嫌われたくなくて厄介なことにみんな手が出せない。
けど、私は違う。
名前ちゃんの幼馴染みである私は他のみんなより明らかに優位で、名前ちゃんに信頼されているし、ちょっとやそっとのことでは嫌われないだろうという自負がある。それに基本、人が傷つこうが死のうが全然気にしないタイプだから。
だから、名前ちゃんに好きになってもらえるならダンガンロンパに出て死んだっていい。……欲を言えば名前ちゃんに好きになってもらえる主人公かヒロインになりたいけどね。
「ねぇ、名前ちゃん。私、次回作のダンガンロンパのオーディションの書類選考通過したんだ」
「えっ!?凄い!!いつの間にオーディション申し込んでたの?私も一緒に申込みたかった!」
「ダメだよ。名前ちゃんには私がダンガンロンパで活躍するとこ見ててほしいから」
「っ!う、うん!見るよ!応援するよ!めちゃくちゃ推すよ!」
ギュッと私の手を握って羨望の眼差しで見つめてくる名前ちゃんに優越感に浸った顔でライバルの彼を見てやった。
「私の勝ちだね」と口パクで彼に言って私は笑って見せつけるように名前ちゃんを抱きしめた。
『キミの好きが欲しい』
名前さんはクラスの人気者でモテモテでいつも一緒にいる幼馴染の子も美人で、僕みたいな暗くて気持ち悪がられている奴とは天地がひっくり返ってもつり合わない素敵な女の子だ。
そんな彼女と仲良くなれたのは狛枝じゃないけど幸運のお陰でしかない。
たまたま席替えで名前さんと席が隣になって、誰だろうと分け隔てなく接する彼女と話をするうちにお互いダンガンロンパのファンだということが発覚したのだ。
好きな作品を通じて気になる女の子と仲良くなっていく、まったく幸せでしかない。
でも、やっぱり人気者の彼女と僕とじゃ障害が多い。
まず、クラスの大半が僕の敵だ。
彼女と僕の仲を応援してくれる人なんて誰一人いない。ほんと、いじめられないのが奇跡レベルで嫌がられているのがわかる。
まぁ、いじめられないのはきっと優しい名前さんのお陰なんだろうけれど。
そして、一番の障害は彼女の幼馴染みだ。
いつも名前さんの横を離れず、前に名前さんに告白しようとした男子を返り討ちにしたり、気安く名前さんに近づく奴が気に食わないと言うような鋭い大きめな瞳を向けてくる彼女。
僕をまるでゴミでも見るような敵意むき出しの目を向けてくる彼女が僕は苦手だった。
でも、名前さんと一緒にいるためには最終的に彼女に勝たなくちゃならないのだ。
「その書類選考、ぼ、僕も受かったよ!」
名前さんを抱きしめて笑う彼女にムッとして、名前さんを驚かせようと黙っていたかったのに勢いで受かったと言ってしまった。
本当は最終オーディションに受かってから報告したかったけど、名前さんが満面の笑みを浮かべて僕の手を握ってくれたからそんな考えはどこかに吹っ飛んだ。
「って、名前さんっ……手…っ」
「えぇ!?キミも!?凄い!凄い!友達が二人も次回作に出ちゃうかもしれないなんて、もう凄すぎるよ!」
「う、うん。キミの期待に応えられるように、僕頑張るから。僕のこと見ててくれる……?」
「もちろん!!」
眩しい彼女の笑顔に目を逸らすとイライラした様子で僕を睨む彼女と目があった。
薄々感づいてはいたけれど、彼女もきっと名前さんに好きになってもらいたくて、名前さんに近づく奴に負けないように必死なんだろう。
「はっ。どうせまぐれでしょ。……次回作に出るのは絶対に私だから」
「ぼ、僕だって絶対次回作に出るよ」
僕と彼女は名前さんが好きだからこうなるのは仕方のないことなんだろう。
