短編
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七夕夢女子編に続く男子編。
同じく、平和な世界線でお送りします。
【苗木誠の場合】
「さーさーのーは、サーラサラ~♪」
笹の葉に願い事を書いた短冊を飾る苗字さんはご機嫌だ。
小さく歌を口ずさみながらニコニコしている彼女は今日も可愛い。
彼女はボクに「今年もみんなと仲良しでいられますように」と書かれた短冊を笹に飾ったのを見せて一層笑みを深くした。
「苗字さんは、七夕が好きなんだね」
「うん。大好き。願いごとをする日って素敵だと思うから」
「そうだね。みんなの願いごとを見るのも楽しいし」
「そうそう!」
楽しそうな苗字さんにぎゅっと胸が苦しくなる。
彼女の笑顔をずっと見ていたい。出来れば一番近くで。
でも、勇気が出なくて短冊には『みんなが笑顔で過ごせますように』と書いてしまった。まぁ、これも嘘じゃないし叶ったらいいなと思う。
「苗木くんはなんて書いたの?」
見せて~と寄ってきた彼女の肩がボクの肩に触れた。
傍から見たら恋人同士が寄り添っているように見える距離なんじゃないかと思ったら気が気じゃない。
「苗木くんの願いごと素敵だね」
「っ…うっ、あ、そうかな?」
間近で微笑んだ苗字さんを見て大ダメージを受ける。
なんとか言葉を返して笑えば、ボクの短冊を持った苗字さんが大神さんのところに駆けて行って、何言か交わしてからボクのところに戻ってきた。
その手には短冊はない。
「あれ?短冊は?」
「大神さんに渡してきたの。一番高いところに飾ってもらおうと思って…すっごい良い願いごとだったからどうしても叶って欲しくて…」
「……」
「苗木くん?」
不思議そうにボクを見つめる苗字さんを見つめ返した。
「ボクは苗字さんが笑ってるのを見るのが好きなんだ。みんなの笑顔も良いけど、ボクにはキミの笑顔が一番だから」
「っ…!そ、そっか。ありがとう…」
苗字さんの顔がほんのり赤く染まる。
初めて見る表情に嬉しくなって内心ガッツポーズを決めた。
「私も苗木くんの笑顔好きだよ」
テレた様子でハニカム苗字さんはやっぱり可愛かった。
【狛枝凪斗の場合】
『みんなの希望が輝きますように』
そう書いた短冊を笹の葉に飾ろうとしたのを苗字さんに止められて書き直しを命じられてから1時間。
没になった山済みの短冊に苗字さんは呆れた様子だ。
ボクが書いた短冊は全て名前さんに没にされてしまっている。これもボクがダメなせいだね。苗字さんが気に入ってくれるような願いごとのひとつも書けないなんて。
「もう。狛枝くんには希望以外の願い事はないの?」
「…あぁ、希望がダメだったんだ」
それは盲点だった。まさか希望がダメだっただなんて!
確かにずっとボクは希望に関しての願いごとを書いていた。
『希望が絶望なんかに負けませんように』『ネガティブ思考な罪木さんが希望を強く持ってくれますように』『ソニアさんに相手にされなくても左右田くんが希望を捨てず頑張ってくれますように』『苗字さんがいつまでも希望溢れる人でいてくれますように』などなど。
全部本心からの願い事だったのだけれど…他の誰でもなく、苗字さんがダメと言うならば仕方ない。
「でも、そもそもボクが願い事をすること自体おこがましいのに、希望以外のことを願っていいのかな…?」
「良いに決まってるよ!」
優しい苗字さんは真っ直ぐな瞳でそう言った。
今日も苗字さんは希望に満ちあふれている。
「じゃあ、これにするよ」
「ん?………えっ!!?」
短冊を見た苗字さんが驚いて体勢を崩し、倒れそうになる身体を引き寄せた。
ボクにしがみつく体勢で見上げてきた苗字さんは状況を理解したのか顔を真っ赤に染めた。
「わっ、ごめんっ!!」
慌てた様子でボクから離れて頭を下げた苗字さん。
そんなに慌てなくても、ボクにとっては役得というか、幸運なんだけどな…。
「これ、本当に?私をからかってるとかじゃなくて?」
「まさか。ボクがキミをからかうわけないじゃない」
『卒業したら苗字さんがボクと結婚してくれますように』そう書いた短冊を笹の葉に飾って苗字さんを振り返った。
「本気だよ。ダメかな?」
「…か、考えさせてくださいっ!」
真っ赤な顔で駆けて行く苗字さんの背を見て小さく笑みが溢れた。
「あはは。可愛いなぁ」
けれど、少し転ばないか心配だとハラハラしながら苗字さんを見送った。
【最原終一の場合】
『苗字さんが幸せになりますように』
勢いでそう書いた短冊を飾ろうか飾らないか考え込んで10分ほど。
これを飾れば苗字さんに好意があることがバレてしまう。
けれど、この願いごと以外に強く叶って欲しい願いごとが思いつかない。
でもいつまでも悩んでいるわけにもいかない。
待ち合わせの時間まで後5分。いつ苗字さんやみんなが来てもおかしくない。
どうしようか決めないとと焦り始めて、でもそこで名前を書かなければ誰が書いたかバレないのでは?と思いついて、さっと少し上の見えにくい位置に短冊を飾った。
そういえば、東条さんまでこんなギリギリまで来ないのは珍しいなぁと考えながらスマホで時間を確認した。
「お待たせ。最原くん」
落ち着いた女の子らしい声に振り返ればそこには急いできたのか少し息を切らせた苗字さん。
「僕も今来たところだよ」
何もなかったように平然を装いそう迎えれば苗字さんはならよかったと微笑んだ。
「はい。これ」
冷たい缶コーヒーを僕に差し出した苗字さんに「ありがとう」と受け取る。
丁度喉が乾いていたことが苗字さんに伝わっていたんじゃと思ってしまうぐらいタイミングが良かった。
「最原くんは何をお願いするの?」
僕に短冊とペンを差し出してそう聞いてきた苗字さんに僕はどう応えようかと目を逸らす。
まさか、もう書いて飾ったとは言えずうーん。どうしようかなぁと考える素振りをした。
「苗字さんは?」
「あー、えっと…」
言葉に詰まった様子で苗字さんが目線を下にやった。
暫しの沈黙に少し気まずくなってこの空気を打開すべく僕は声を上げた。
「そういえば、みんな遅いね!」
「あ、うん…そうだね」
「………」
「………」
き、気まずい。
「あ、あのね!みんなは来ないの」
「え?」
「だから…最原くんと私の2人だけなの」
「っ!!」
苗字さんの話しによると、僕を誘う時に2人でと言うのが恥ずかしくてみんなでと言ってしまったらしい。
「それって僕と2人がよかったってこと?」
「うん…」
「そっか」
どうしよう。
すごく嬉しくて、口元が緩んでいるのを手で覆い隠した。
「苗字さん。さっき僕に何お願いするの?って聞いたよね?実は…」
僕はさっき隠すように飾った短冊を見せた。
「苗字さんが来る前に書いて飾ったんだ」
「え…」
短冊に書いた僕の願い事を見て苗字さんが驚く。
そして、苗字さんは自分の書いた願い事を僕に見せて微笑んだ。
「一緒だね」
『最原くんが幸せになりますように』
そう書いてあるのを見て僕は思わず苗字さんを抱きしめた。
「もう僕は充分幸せだよ」
「私も幸せだよ」
苗字さんの手が僕の背にまわって、そのまま暫く2人で抱きしめあったまま笹の葉が風に揺れる音を聞いていた。
