短編
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5.23(キスの日記念)
『最原終一の場合』
「終一くん」
彼の背にそっと声をかける。
事件を解決した日の夜。彼は決まって何か考え込むように自室を出てベランダから夜空を見上げる。
私より広い背中がその時ばかりはなんだか弱々しく見えた。
優しく彼の背を抱きしめれば終一くんは私の手を強く握った。
「……ん。どうしたの?名前さん」
取り繕ったような明るい声音が癪にさわる。
私の前でくらい正直にありのままの終一くんでいてほしい。
「知ってますか?今日はキスの日らしいですよ」
「ふふっ。なんで敬語?」
「き、緊張して?」
「……可愛い」
身体を反転させ、こちらを振り向いた終一くんがそっと私の頬に手を添えた。
彼の瞳の奥に僅かに熱が宿っているのを見て、そっと目を閉じた。
そのすぐ後に唇に柔らかい感触が触れ、ゆっくりと離れる。
そっと目を開けば、終一くんがテレくさそうに微笑んで私を抱きしめた。
「お仕事お疲れ様」
そう言って彼の背に腕をまわせば終一くんは深くため息をついた。
「はぁ……。名前さんが好きすぎて困るよ……」
「嬉しい。私も終一くんのこと好きすぎていつも困ってるから」
「っ……!それ以上は、その、勘弁してください」
紅い顔を隠すように終一くんが私の肩口に顔を埋めた。
「…今日は一緒に寝て」
懇願する声にしては何処か力強さを感じて、私は「うん」と小さく返事を返した。
「ありがとう。……愛してるよ」
心底嬉しいというように笑った彼に私の心臓はうるさく高鳴って止めようがない。
「私も、愛してる」
お返しとばかりに笑ってそう言った私に、終一くんは困ったように口元をおさえた。
「困ったなぁ。愛してる以上に名前さんのことを想ってるのに、それ以上の言葉が見つからないかんて……」
真剣に悩み始めた彼がおかしくて、私は少し笑ってしまったのだった。
『天海蘭太郎の場合』
「名前っ!」
デートの待ち合わせ場所で女の子に逆ナンされていた蘭太郎を見て踵を返した私に、どうやら彼は目ざとく気づいたらしい。
大きめな声で名前を呼ばれて無視するわけにもいかず、私は渋々振り返った。
すると、蘭太郎をナンパしていたチャラめの女の人2人と目が合う。
不機嫌そうに私を睨みつけてくる彼女らに私は頭をおさえたくなった。
「何?」
「何って、そっちこそなんでどっか行こうとしてるんすか」
「だって、楽しそうに私以外の女と話してたから……」
「楽しそうに見えたんすか?」
「いや、楽しそうではなかったけど…」
ジト目で蘭太郎に見られて思わずそう答えてしまったけど、絶対ヘラヘラしてたよ!
それは確かに外面かもしれない。けれど、彼女としてはそれすらも面白くないわけで……。
「なんで蘭太郎が怒ってるの。私が怒るとこだよね?」
「……そうっすね。すみません」
不機嫌そうな謝罪に苛立って蘭太郎の両脇に立つ誰かも知らない女の人達を見たくもなくて私は背を向けた。
「やっぱ今日はデートやめよっか」
そう言って歩きだそうとしたところで強引に腕を掴まれた。
「待ってください。今日デートしようって言ったの名前なのに勝手っすよ」
「彼氏がナンパされてるの見ていい気分になる彼女なんかいないでしょ!……わかってよ」
「俺、そんなに信用ないっすか?ナンパにほいほい捕まりそうに見えます?」
「……見えないけど。嫌だったんだもん」
「…そうっすか」
何を思ったのか蘭太郎は私からナンパしてきた女の人達に視線を向けた。
「ずっと見てたからわかると思うっすけど、俺たちカップルなんで貴女たちとは遊べないっす。それに……」
蘭太郎が私の顎に手を添え、上を向かせた。
突然の行動に驚く私の唇をあっさり奪うと蘭太郎は微笑んだ。
「キスの日にデートに誘ってくれた彼女を放っておきたくないんで」
「……気づいてたの?」
「もちろん気づいてたっすよ。名前が誘ってくれなければ俺からデートに誘うつもりでいたし」
「……そう」
テレてそっぽを向くと蘭太郎はそんな私を見て幸せそうに笑った。
彼をナンパした女の人達はすっかり戦意喪失したようで「リア充爆発しろ」という言葉と共に去っていった。
『王馬小吉の場合』
「名前ちゃん!」
やけにニヤついた小吉くんの声に私は一瞬で良いことではないと察した。
無視をすることに決めて、スマホから顔を上げないでいたら、彼は強硬手段というように私をスマホごと抱きしめてきた。
「愛しのカレシ様が呼んでるっていうのに無視ー?ひっどいなぁ」
言葉とは裏腹にニコニコとご機嫌な小吉くんに嫌な予感が止まらない。
私はそっと近い顔を逸らして、問いかけた。
「何?」
「今日はキスの日なんだって!凄いよねぇ。恋人のためにあるような日じゃん。そう、オレたちみたいなね!」
「……エイプリルフールは嫌いなくせに」
~の日とかに興味ないように見えて意外と興味あるんだろうか?
エイプリルフールだって結局は百田くんやキーボくんをからかいに行ってたし……。
「む~。エイプリルフールとキスの日は違うでしょ!大体オレは嘘が大嫌いなの!特に人に吐かれるクオリティの低い嘘がね」
あ、後半は本音だ。
「とにかく!今日はキスの日だよ!恋人らしくキスしようよー!!」
「なんでそんなにノリノリなの……?」
小吉くんのテンションに気圧されて、彼から離れようと胸を押したが、意外と力が強い彼からは逃れられそうになくて、私はあっさり諦めて抵抗をやめた。
「もう……」
仕方なく私は彼の頬に軽く口付けた。
近づけた顔から離れればいつまで経っても彼が真顔で微動だにしない。
「うわぁ。めっちゃテレたー!ねぇ、オレの顔赤くなってない!?タコみたいに!」
「えっ、それテレてるの?」
黙った彼の本音がわからない。
小吉くんは真顔のままで、私に顔を近づけ私の額に自分の額を押し当てた。
「不意打ちは、ずるいよ」
「小吉く……っ!?」
至近距離で見た小吉くんの表情は頬をほんのり赤く染め余裕がなさそうだった。
私の唇に自身のそれを重ねた小吉くんは、私から離れた時にはいつもの顔に戻っていた。
「お返しだよ!」
眩しい笑顔に私も思わず頬を緩めてしまうのでした。
