短編
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紅鮭モード(ネタバレ&百合注意)
綺麗で艶のある髪。
整った眉に、長い睫毛、何もかもを見透かすようなミステリアスで綺麗な大きめな瞳。
触れたら汚してしまいそうな錯覚さえ起こす透明感のある白い頬、ぷるぷるで触れたくなる薄いピンクの唇。
一緒に鍵盤に向かう度に触れ合いそうになる繊細で細い指先と細く柔らかな肩。
その全てに私は気を取られ、気が気じゃなくなりそうになる。
冷静じゃいられない。大好きなピアノの音もよく聴こえなくなるほどに……だって、私は――
「楓ちゃん」
全てを包み込むような柔らかな優しい声が私の名前を呼んで、そこでようやく私の意識が戻ってくる。
「どうしたの?名前ちゃん」
なんて取り繕った笑みを浮かべたところでもう遅い。名前ちゃんは、僅かに紅潮した頬を押さえた。
「その、そんなに見られるとさすがに緊張しちゃうかなって…」
やっぱりあんなに熱のこもった目で見つめてしまえば、バレバレだ。
私はテレ笑いを浮かべて「ごめんね。名前ちゃんがあんまりにも綺麗だからつい、見惚れちゃって」と本音を口にすれば頬を更に赤くした彼女は、軽く私の肩を叩いた。
「っも、もー!あんまりからかわないでよ!」
「からかってなんかないよ!名前ちゃんは天使かってぐらい綺麗で素敵だよ!」
――本当に綺麗で困るんだ。
だって、男の子達はみんな名前ちゃんをほっとかないから……。
いつも誰よりも早く名前ちゃんの部屋に行ってデートに誘う私の必死さは王馬くんも引くレベルだし、誰にも名前ちゃんとのラブアパートは例え夢でも体験させたくないと、夜はカジノに入り浸ってコインを荒稼ぎし愛の鍵を買い占めようとしている私に同じく意外にもカジノ常連者な最原くんに苦笑されてしまうほどに。
「初めて会ったときからビビっとくるぐらい名前ちゃんは素敵な女の子だよ!」
「そ、そうかな……?」
恥ずかしそうにこちらを見る名前ちゃんに力強く頷けば彼女は控えめに笑った。まるで、花が綻ぶような綺麗な笑み。
「ふふっ、ありがとう。でも私は、楓ちゃんの方が私よりずっと綺麗だと思うよ」
「……へっ?」
何言って……私の言葉は弱々しく口内で消えた。
「みんなを励ます明るい笑顔に前向きな言葉、それに絶対に諦めない強い意志……。そして何よりも優しい綺麗な音色のピアノを奏でる楓ちゃんが私は大好きだよ!」
「っ~~~!!!!」
うぅぅうぅぅぅ!!名前ちゃんほんと好き……!大好き!
耐えきれずに隣に座る名前ちゃんを抱きしめれば途端に彼女の香りに包まれ気がおかしくなりそうになる。
驚いた声を上げる名前ちゃんに申し訳なく思いつつも、ドキドキと煩く鳴る心臓の音が聴こえてしまうんじゃないかってぐらい抱きしめる腕に力を込めて更に密着した。
でも、さすがにこのスキンシップに違和感を感じたのか名前ちゃんは身じろいだ。
「どうしたの?楓ちゃん」
「……好き」
「うん。私も楓ちゃんのこと好きだよ?」
「違う!そういうんじゃなくてさ……私は恋愛的な意味で名前ちゃんが好きなんだよ」
「……えっ」
驚いた様子の声を聞きながら私はそっと名前ちゃんを抱きしめていた腕を解き、ゆっくりと身体を離した。
「名前ちゃんは私と同じ女の子で大切な友達だって、それは変わらないけど。私はそれ以上の好意を持ってるんだ。――こんな感情抱くなんておかしいよね……でも、でもねっ!好きになっちゃったものはしょうがないと思うんだ。好きな人がたまたま同性だったってだけだもん」
「楓ちゃん……」
早口で理屈っぽいことを連ねる私は酷く滑稽だと思う。
でも、私はこの恋を諦めたくないんだ。
だって、名前ちゃんが他の誰かのものになるなんてそんなの耐えられない。
私以外の人と恋人になったり、私以外の子と仲良くしてるとこなんてみたくない。
――私だけ、見てほしい。
そんな醜い欲の通りに行動して名前ちゃんの頬を両手で包んで私に視線を向けさせて、そして――
「もし、少しでも、ほんのちょっぴりでも私を大切だって思ってくれてるなら……」
『私のこと、好きになって?』
その言葉の後に私の唇は楓ちゃんの唇に奪われた。
軽く触れた唇が離れて顔から火が出そうなぐらい真っ赤であろう私の顔を見て、目の前の楓ちゃんは微笑んだ。
「はじめてキスしたんだけどさ、好きな人とのキスってこんなに幸せな気持ちになるんだね」
なんて嬉しそうに微笑む楓ちゃんを意識するなっていうほうが難しいんじゃないかって私は頭を抱えた。
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