短編
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※ウィキッド視点。
「苗字さん。こんなところにいたんですね。探しましたよ」
(たく。こんなクソ暑いとこで一体何してんのよ。いつもみたく大人しく教室の隅で一匹狼という名のボッチ気取ってなさいよね)
優秀な委員長の私を頼りきりの無能教師に頼まれて、信頼稼ぎのためにあちこち探し回って疲れてるっていうのに、暑さで更に嫌な汗をかき、肌に張り付く制服の感触が気持ち悪い。
μの気まぐれなのか、それとも誰かさんが願ったからなのか、高校内のこの場所──花壇だけは春夏秋冬それにあった気候、気温なのだ。
つまり、今は夏だから超暑いってこと。
それを我慢して、人好きされる笑みを張りつけ、優しく話しかけてやったっていうのに、肝心の目の前の女は、呑気に花に水やりなんかしている。
同じクラスの苗字名前は、目立たず数人の仲のいい同級生としか話さない何処にでもいるモブみたいな女だ。
ただ、よく見ると顔立ちは整っており声も聞き心地が良い。話し方も柔らかく人を不快にするような言動はしない。万人受けする人間は居ないに決まってるけど、こいつを嫌いな奴はあんまいないだろうなって感じのそんなタイプ。可もなく不可もないつまらない女。
そして、そんなやつが意外なことに私たち楽士の一人であるノーネームなのだ。
カギPが居なくなった即席の穴埋めってとこだろうけど、ソーンに気にかけられているこいつが少し気になったのは事実だった。
……誰に見られてるかわからないからイイコちゃんモードで接してやってるけど、そうじゃなかったら文句言ってぶん殴っていたに違いない。実際頭の中ではそうしたし。
って、楽士とはいえ、こいつも私がウィキッドだってことは知らないんだし駄目ね。優しい水口さんでいなくちゃ。
『水口さん。探させちゃってごめんね……。あ…』
何を思ったのかそいつはスカートのポケットからハンカチを取り出して私に近づくと、それで頬に拭って、至近距離に近づいた顔を緩ませた。
(……うっわ。警戒心ゼロの緩みきった表情。自分の方が長い時間ここにいて汗かいてる癖に…。何、自分のことより私のことを気にかけて優しさアピールのつもり?)
思わず顰めそうになる表情筋を堪えて柔和な笑みをキープした自分を褒め讃えたい。
離れていく際にふわりと香るシャンプーだか香水だかの甘い香りが妙に鼻に残って、癪に触った。
『今日暑いね〜』
そう言って忌々しげに天を仰いだそいつに苛立ちが増していく。
もういい。少しぐらい話でもしようと思ったけれど、さっさと用件だけ言ってこの場を去ろう。関わったところで気分を害するだけだ。
『あ、それで何の用事?もしかして今日、定例会の日だったりしたかな』
「は?」
(今こいつなんて言った?定例会って言ったの…?まさか……)
乱されそうになるも平静を装おい、不思議そうに小首を傾げてその場をやり過ごす。
「定例会…?その、私はただ先生が苗字さんを探していたのを手伝って探しに来たんですが…」
何も知りませんとばかりにすっとぼけてみせれば、今度はそいつが不思議そうに首を傾げた。
『もしかして、秘密にしてる?通りでなんか違うなと思った……。だとしたらごめんね。ウィキッド』
「…………ちっ。バレてんのかよ」
そこまで言われたらもう何を言っても無駄だろうと、取り繕うことをやめて苛立ちを隠さずにノーネームを睨んだ。けど、それもほんの一瞬でやめにして私はまた朗らかで爽やかな笑みを貼り付ける。
「……詳しい話はまた今度。その話をするのに相応しい場所でしましょう。あなたもこんなところで話すのは困るでしょうし。ね、ノーネーム」
『?……もしかして、人目を気にしてる?なら必要ないよ。この場所は楽士とμしか入れないように設定されてるし、もし迷い込んでくる人がいればそいつは処分していいことになってるから』
「まさか、それで私の正体に気づいたって言うわけ?」
『そう。あとは、定例会で聞いてる声かな。感じは違うけど、声質は変わってないから』
「………」
最初からバレていた。その事実が現実との出来事と重なってゾワゾワとした不快感が背中に走った。
それが吐き気を促して私は思わず口元を押えてその場に踞る。
(最悪最悪最悪最悪。なんでこんななんも考えてなさそうなやつにバレてるわけ!?ふざけんな……ふざけんな!!!!それじゃあ、何?こいつは私の正体を知っていながら、普通に接してたわけ?私が必死に外面を取り繕っていることを知りながら、それを今日まで指摘することなく見過ごしていたわけ?何よそれ、恩でも売ってるつもり?それとも仲間意識?キッッッモ!!!!)
ほんと今すぐぶちまけてやりたいけど、吐き気のせいで声に出すことも出来ない。
こんなやつの前でこれ以上弱みをみせてなんかやるものかと必死に持ち堪えようとしていたら、ふと目の前に影がさす。それに見上げれば日傘をさし心配そうにこちらを見つめるノーネームの姿があった。
『大丈夫?保健室……は、駄目だよね。きっとウィキッドはそれじゃ気が抜けない。よし。私の家に行こ!……μ。聞こえる?助けて!』
そう言った瞬間、目の前が白く弾け、白い悪魔の姿を目にしたと思ったと同時に私も意識を失った。
※※※※※
「うっ……」
『………んん』
「はぁ?」
目を開けて視界に入ってきたのは天井でも、壁でも、布団でもなく、ノーネームの顔だった。
どうやら私は何故かノーネームに膝枕されているようで、理由を問い質したくても無防備に眠っているから聞けやしない。
……起こせばいい。そうは思いつつも起こす気になれずただそのだらしない寝顔を見つめていた。
意識してる……?こいつを?私が?
そうかもね。実際気になってたのは確か。モブにすぎないあんたが楽士になってから、その理由を探して目で追ってた。その甲斐あって、そこそこ人となり交友関係なんかは把握していたつもり。
でも、そんなことで知った気になっていたのかもしれない。実際に接したあんたはなんだか底知れなくて侮れなくて気色悪くて、それに──
『……おはよう。よかった。顔色良くなったね』
「うっざ。こんなことで貸しとか思わないでよね」
伸ばしかけた手を落としてそっぽを向けば、くすくす笑う気配がして落ち着かない。……ムカつく。やられっぱなしは性にあわない。やられたら倍にして返す。そのほうが私には合ってるでしょ?
「っ……はっ!なっさけない顔」
頭を押さえて唇を奪ってやれば、熟れた果実のように真っ赤になった顔で唇を震わす面白い顔が見れた。
『え、な、今……キス?なんで……』
動揺しまくる目の前のそいつは、さっきまでの得体の知れない楽士ノーネームじゃない。素の苗字名前に違いない。
余裕の表情を崩せたことによる歓喜で口角が上がる。
(……そうよ。いつだって私が優位じゃなきゃ。あんたにもどっちが上なのかしっかり躾て教えこんであげる)
「ご褒美よ。癪だし、頼んでないけど倒れたのを助けられたのは事実だから」
『もしかして、お礼ってこと?え、ウィキッドって現実では海外に住んでたとか……?』
「住んでねぇよ。バーカ。キスの意味ぐらい知ってる。バカにすんなよ」
乱暴に言い放ったにも関わらず、デレデレと恥ずかしそうに顔を両手で覆ったノーネームの手を無理やり掴んで顔から引き剥がし、もう一度唇を奪った。
今度は深く深く。全部奪ってやるつもりで口内を荒らした。
ぎゅっと恥ずかしそうに目を瞑るノーネームは抵抗しようにも慣れない行為に力が入らないのか私の肩を柔く押すだけで、翻弄されて為す術もない様子だった。
完全に優位に立ったとみた私は、反転するようにノーネームを床に押し倒した。
あまり家に帰らないのか必要最低限の部屋のフローリングには絨毯すら敷いていない。それどころかベッドすらなかった。
(だから、膝枕だったわけね)
今やっとわかった事実に私の胸は高揚した。
気がないやつに膝枕までする?答えはきっとNoだ。
不安と羞恥でか、目を涙で潤ませこちらを見上げるノーネームに加虐心が煽られゾクゾクする。
「さぁ、今からたっぷりお礼してあげる」
制服の邪魔くさいネクタイを緩め後ろに放った。
「苗字さん。こんなところにいたんですね。探しましたよ」
(たく。こんなクソ暑いとこで一体何してんのよ。いつもみたく大人しく教室の隅で一匹狼という名のボッチ気取ってなさいよね)
優秀な委員長の私を頼りきりの無能教師に頼まれて、信頼稼ぎのためにあちこち探し回って疲れてるっていうのに、暑さで更に嫌な汗をかき、肌に張り付く制服の感触が気持ち悪い。
μの気まぐれなのか、それとも誰かさんが願ったからなのか、高校内のこの場所──花壇だけは春夏秋冬それにあった気候、気温なのだ。
つまり、今は夏だから超暑いってこと。
それを我慢して、人好きされる笑みを張りつけ、優しく話しかけてやったっていうのに、肝心の目の前の女は、呑気に花に水やりなんかしている。
同じクラスの苗字名前は、目立たず数人の仲のいい同級生としか話さない何処にでもいるモブみたいな女だ。
ただ、よく見ると顔立ちは整っており声も聞き心地が良い。話し方も柔らかく人を不快にするような言動はしない。万人受けする人間は居ないに決まってるけど、こいつを嫌いな奴はあんまいないだろうなって感じのそんなタイプ。可もなく不可もないつまらない女。
そして、そんなやつが意外なことに私たち楽士の一人であるノーネームなのだ。
カギPが居なくなった即席の穴埋めってとこだろうけど、ソーンに気にかけられているこいつが少し気になったのは事実だった。
……誰に見られてるかわからないからイイコちゃんモードで接してやってるけど、そうじゃなかったら文句言ってぶん殴っていたに違いない。実際頭の中ではそうしたし。
って、楽士とはいえ、こいつも私がウィキッドだってことは知らないんだし駄目ね。優しい水口さんでいなくちゃ。
『水口さん。探させちゃってごめんね……。あ…』
何を思ったのかそいつはスカートのポケットからハンカチを取り出して私に近づくと、それで頬に拭って、至近距離に近づいた顔を緩ませた。
(……うっわ。警戒心ゼロの緩みきった表情。自分の方が長い時間ここにいて汗かいてる癖に…。何、自分のことより私のことを気にかけて優しさアピールのつもり?)
思わず顰めそうになる表情筋を堪えて柔和な笑みをキープした自分を褒め讃えたい。
離れていく際にふわりと香るシャンプーだか香水だかの甘い香りが妙に鼻に残って、癪に触った。
『今日暑いね〜』
そう言って忌々しげに天を仰いだそいつに苛立ちが増していく。
もういい。少しぐらい話でもしようと思ったけれど、さっさと用件だけ言ってこの場を去ろう。関わったところで気分を害するだけだ。
『あ、それで何の用事?もしかして今日、定例会の日だったりしたかな』
「は?」
(今こいつなんて言った?定例会って言ったの…?まさか……)
乱されそうになるも平静を装おい、不思議そうに小首を傾げてその場をやり過ごす。
「定例会…?その、私はただ先生が苗字さんを探していたのを手伝って探しに来たんですが…」
何も知りませんとばかりにすっとぼけてみせれば、今度はそいつが不思議そうに首を傾げた。
『もしかして、秘密にしてる?通りでなんか違うなと思った……。だとしたらごめんね。ウィキッド』
「…………ちっ。バレてんのかよ」
そこまで言われたらもう何を言っても無駄だろうと、取り繕うことをやめて苛立ちを隠さずにノーネームを睨んだ。けど、それもほんの一瞬でやめにして私はまた朗らかで爽やかな笑みを貼り付ける。
「……詳しい話はまた今度。その話をするのに相応しい場所でしましょう。あなたもこんなところで話すのは困るでしょうし。ね、ノーネーム」
『?……もしかして、人目を気にしてる?なら必要ないよ。この場所は楽士とμしか入れないように設定されてるし、もし迷い込んでくる人がいればそいつは処分していいことになってるから』
「まさか、それで私の正体に気づいたって言うわけ?」
『そう。あとは、定例会で聞いてる声かな。感じは違うけど、声質は変わってないから』
「………」
最初からバレていた。その事実が現実との出来事と重なってゾワゾワとした不快感が背中に走った。
それが吐き気を促して私は思わず口元を押えてその場に踞る。
(最悪最悪最悪最悪。なんでこんななんも考えてなさそうなやつにバレてるわけ!?ふざけんな……ふざけんな!!!!それじゃあ、何?こいつは私の正体を知っていながら、普通に接してたわけ?私が必死に外面を取り繕っていることを知りながら、それを今日まで指摘することなく見過ごしていたわけ?何よそれ、恩でも売ってるつもり?それとも仲間意識?キッッッモ!!!!)
ほんと今すぐぶちまけてやりたいけど、吐き気のせいで声に出すことも出来ない。
こんなやつの前でこれ以上弱みをみせてなんかやるものかと必死に持ち堪えようとしていたら、ふと目の前に影がさす。それに見上げれば日傘をさし心配そうにこちらを見つめるノーネームの姿があった。
『大丈夫?保健室……は、駄目だよね。きっとウィキッドはそれじゃ気が抜けない。よし。私の家に行こ!……μ。聞こえる?助けて!』
そう言った瞬間、目の前が白く弾け、白い悪魔の姿を目にしたと思ったと同時に私も意識を失った。
※※※※※
「うっ……」
『………んん』
「はぁ?」
目を開けて視界に入ってきたのは天井でも、壁でも、布団でもなく、ノーネームの顔だった。
どうやら私は何故かノーネームに膝枕されているようで、理由を問い質したくても無防備に眠っているから聞けやしない。
……起こせばいい。そうは思いつつも起こす気になれずただそのだらしない寝顔を見つめていた。
意識してる……?こいつを?私が?
そうかもね。実際気になってたのは確か。モブにすぎないあんたが楽士になってから、その理由を探して目で追ってた。その甲斐あって、そこそこ人となり交友関係なんかは把握していたつもり。
でも、そんなことで知った気になっていたのかもしれない。実際に接したあんたはなんだか底知れなくて侮れなくて気色悪くて、それに──
『……おはよう。よかった。顔色良くなったね』
「うっざ。こんなことで貸しとか思わないでよね」
伸ばしかけた手を落としてそっぽを向けば、くすくす笑う気配がして落ち着かない。……ムカつく。やられっぱなしは性にあわない。やられたら倍にして返す。そのほうが私には合ってるでしょ?
「っ……はっ!なっさけない顔」
頭を押さえて唇を奪ってやれば、熟れた果実のように真っ赤になった顔で唇を震わす面白い顔が見れた。
『え、な、今……キス?なんで……』
動揺しまくる目の前のそいつは、さっきまでの得体の知れない楽士ノーネームじゃない。素の苗字名前に違いない。
余裕の表情を崩せたことによる歓喜で口角が上がる。
(……そうよ。いつだって私が優位じゃなきゃ。あんたにもどっちが上なのかしっかり躾て教えこんであげる)
「ご褒美よ。癪だし、頼んでないけど倒れたのを助けられたのは事実だから」
『もしかして、お礼ってこと?え、ウィキッドって現実では海外に住んでたとか……?』
「住んでねぇよ。バーカ。キスの意味ぐらい知ってる。バカにすんなよ」
乱暴に言い放ったにも関わらず、デレデレと恥ずかしそうに顔を両手で覆ったノーネームの手を無理やり掴んで顔から引き剥がし、もう一度唇を奪った。
今度は深く深く。全部奪ってやるつもりで口内を荒らした。
ぎゅっと恥ずかしそうに目を瞑るノーネームは抵抗しようにも慣れない行為に力が入らないのか私の肩を柔く押すだけで、翻弄されて為す術もない様子だった。
完全に優位に立ったとみた私は、反転するようにノーネームを床に押し倒した。
あまり家に帰らないのか必要最低限の部屋のフローリングには絨毯すら敷いていない。それどころかベッドすらなかった。
(だから、膝枕だったわけね)
今やっとわかった事実に私の胸は高揚した。
気がないやつに膝枕までする?答えはきっとNoだ。
不安と羞恥でか、目を涙で潤ませこちらを見上げるノーネームに加虐心が煽られゾクゾクする。
「さぁ、今からたっぷりお礼してあげる」
制服の邪魔くさいネクタイを緩め後ろに放った。