私と雲雀さんの約三十日闘争


日が暮れた並盛の町を雲雀は走っていた。
その様子は普段の彼からは想像もできない、まさしく必死の形相とも言えた。
彼女の名前を呼び、移動手段を変えた方が良いか、いや、その為の時間すら惜しいと雲雀は唇を噛み再び走り始めた。

一方その頃、彼女とは言うと。

「誰だびょん!八を止めてるのは!!」
「ちょっとぉ!ダイヤの四も止めてるの誰よ!全然進まないじゃない!」
「こんな根暗みたいなことするのは柿ピーに決まってるびょん!」
「うるさいよ、犬」

クロームちゃんがちらりと私のことを見てくる。出さなくて良いんですよと私は目で合図を送った。
それもそのはず、私達がしているのはトランプの七並べだからだ。
なぜ私が黒曜ランドにいるのか、なぜ七並べをしているのか、説明するために少しだけ時間を巻き戻そうと思う。

私が雲雀さんに罵倒の言葉を浴びせ、一人公園のベンチに腰掛け、今後のことに少しだけ目に水がたまりそうになり、ごしごしと腕で擦っていたときのことだ。

「久しぶりだな」
「あ、、、ヴェルデさん」

緑色の髪に丸い眼鏡、白衣姿のヴェルデさんが紙袋を抱えて立っていた。

「こ、こんにちは」

ヴェルデさんは私の姿を上から下へ眺め、随分と面白い姿になっているなと口を開く。
挨拶を返されなかっったことに少しだけ落ち込みながらも、私は返事をした。
そんな私の様子に少しも気づいていないヴェルデさんは慣れた様子でベンチに座り、紙袋のなかをがさがさと漁る。
何をしているんだろうと黙って見ていたら、紙袋の中から真っ赤なりんごが出てきた。
食べろと言われなかば無理矢理りんごを渡される。

「ありがとう、ございます?」
「気にするな」

ヴェルデさんも紙袋の中からりんごを取り出すと、そのまましゃりしゃりと食べ始めた。
私も同じようにりんごにかじりつく。

「万有引力、ですか?」
「なにがだ?」
「あ、いや、なんでもないです、、、」

りんごを食べるヴェルデさんを見て、木からりんごが落ちてくる話を思い出したが特に関係はないようだった。

「それで、どうしたんだ」
「え?いや、ちょっと、、、」

なにから話したら良いのだろうか、どこから話せば良いのだろうかと私が言葉をつまらせ、ちょっといろいろあってと答えたらヴェルデさんはりんごと一言呟いた。

「りんご?」
「食べただろう」
「あ、はい、おいしいですね」
「答えないなら返してもらおう」
「え!?食べちゃったんですけど、、、」

一口だけ噛り跡のついたりんごを、はいと渡すと食いかけを返すなと怒られてしまった。

「今度買って返します、、、」
「ダメだ、今すぐ返せ」
「そんな無茶苦茶な、、、」

そういえば、ヴェルデさんはアルコバレーノの試練の時もボンゴレの初代の試練の時も、結構無茶苦茶なことしてたなぁと思い出す。

「返せないなら、話してみろ」
「ヴェルデさん、、、。話せば長くなるんですけど、、、」

私はことのいきさつをなるべく簡潔に伝えられるように話した。
途中で話が長いだとか、なにかしらちゃちゃを入れられるかと思ったが、意外にもヴェルデさんは黙って話を聞いてくれた。

「ジャンニーイチの倅が」

ヴェルデさんはなにか考え込むような仕草をし、そのまま黙ってしまった。
私も一緒に黙りこみ、居心地が悪くなってしまった私は先程と同じようにりんごにかじりつく。
何かに気づいたのか、ヴェルデさんは私のことをじっと見つめ、少し触るぞと言うと私の前髪をくくっているゴムに手を伸ばしてきた。
雲雀さんは最初、普通の黒いゴムを使っていたのだが、最近はキャラクターがくっついているゴムで前髪をくくられていた。
いつからだっけ、そうだ、学校に行き始めてからだと思い出す。
前髪が重力に負け、少しだけはねている髪の毛を慌てて手で直した。

「それは雲雀さんの、」
「ふんっ」
「あっ、雲雀さんのなのに!」
「見ろ、発信器だ」

ヴェルデさんはゴムについているキャラクターをばきっと手で分解すると、私に中を見せてくれた。
本来であれば空洞になっているはずの場所に、ぴこぴこと小さな機械が入っているのが私にも分かった。

「発信器?なんでこんなところに?」
「誰がやったのかは想像がつくがな」

ヴェルデさんは発信器を土の上に落とし、ベンチから飛び降りるとそのまま踏みつけてしまった。

「それで、これからどうするんだ?」
「え?」
「雲雀恭弥のところに戻るのか?」
「それは、」
「まぁ戻った方が賢明だろう。その姿じゃ生活も」
「戻らないです」

私がそうはっきりと答えると、ヴェルデさんは黙ったまま私のことを見ていた。

「雲雀さんのところには、戻らないです」
「何故だ?」
「それは、、、」
「それは?」
「嫌だから、です。なんて言ったら良いのか分からないけど、嫌だから、だから、その、、、」
「そうか、なら着いてきたまえ」

ヴェルデさんは一言だけそう呟くと、すたすたと歩き始めてしまった。
私が動揺し、おろおろと立ちすくんでいると、早くこいとヴェルデさんから言われてしまう。
言われるがまま、私は小走りでヴェルデさんの後を追いかけ、そして着いた先は黒曜ランドだった。
黒曜ランドのまだ使える階段を登り、大きな部屋へと案内される。

「ちょっと、アンタどうしたの?」

最初に私達の姿に気づいたMMちゃんは驚いた顔をし、にやにや笑いながら私の顔をつつきはじめた。

「ちょっと、いろいろあって、、、」
「ふぅん、なんでヴェルデと一緒にいるわけ?」
「それも、いろいろあって、、、」

苦笑いしながら私は答える。MMちゃんはあんまり興味がないのか、そのまま私の頬をつついている。
どうしたのだと、次に部屋に入ってきたのはクロームちゃんだった。
クロームちゃんは私に気づくと嬉しそうに顔色を明るくさせた。

「かわいい、、、」

クロームちゃんは私の頭をなでながら、猫のように目を細める。
MMちゃんは面白くないという顔で私達のことを見ていた。

「これはこれは、、、珍しいお客さんですね」
「骸ちゃん!」
「骸様、、、」

まるで霧のように現れた彼の姿に私は少しだけ驚き、こんにちはと挨拶をする。
はい、こんにちはと律儀にも挨拶を返してくれて思わず拍子抜けしてしまう。

「なーんでコイツがここにいるびょん!」
「うるさいよ、犬」

わあわあと話しかけられた私は先程ヴェルデさんに話した内容を簡単に繰り返す。

「んで、なんでここに来たびょん?」
「え、えっと、」

ぐっと顔を近づけて睨み付けられるものの、なんでここに来たのか、連れてこられたのかは私が知りたかった。
ヴェルデさんをちらりと見るも、本人は素知らぬ顔で優雅にコーヒーカップに口をつけている。

「うっさいわね!良いじゃない別に!」
「おわわっ」

後ろからMMちゃんに抱き締め上げられ、変な声を出してしまった。
じいっと見つめられ、MMちゃんは口の端をにやにやと動かすとそのまま力強く抱き締められる。

「かっわい~!アンタ全然こっちに遊び来ないし、突然来たかと思ったらこんな姿になっちゃって、、、」
「ご、ごめんなさい」

ぎゅうぎゅうと抱き締められていると、クロームちゃんが控えめにそっとMMちゃんの手を握っていた。

「あんまりぎゅうぎゅうしたら、かわいそう、、、」
「はぁ?可哀想じゃないわよ!嬉しいわよねぇ??」

二人の間に小さく火花が散っている気がして苦笑いをこぼす。

「ねっ、ねっ、骸ちゃん!ここに置いておいても良いわよね?」
「置いておくって、犬や猫じゃないんですから」

MMちゃんは若干目をきらきらとさせながら、ここの家主?へと尋ねていた。

「骸様、、、」

クロームちゃんも上目遣いで、お願いをするように見つめている。
あぁどうしよう、困らせてしまっている。

「あの、自分の家に戻るから大丈夫ですよっ」
「さっき自宅には誰もいないって言っていただろうが」

ヴェルデさんの言葉に思わず喉を鳴らしてしまう。
そうか、ヴェルデさんにはそう言ってしまっていたかと反省をするものの時既に遅しだ。

「取り敢えず今日は休んでいったらどうですか?」

にこりと微笑まれてはいるが、どう思われているのか分からなかった。
気を遣われているのかと申し訳ない気持ちになりながらもお礼を伝える。

「決まりね!」
「うわわ、」

MMちゃんから再びぎゅうと抱き締められ、思わず両手を伸ばすと、クロームちゃんが私の指をきゅっと握り笑っていた。
その後はクロームちゃんとMMちゃんにお風呂にいれてもらい、髪の毛を乾かしてもらい、そして冒頭へと戻る。
これだけ人数がいるんだから、トランプが良いだろうということになった。
クロームちゃんが少しだけ困った顔をしていたものだから、どうしたのだと尋ねる。

「いつも負けちゃうの、、、」

しょんぼりとしたクロームちゃんがなんだか可愛くて、それだったら一緒にチームを組もうと申し出てみる。

「良いの?」
「うんっ、どうせこの体だし、誰かと一緒に組みたいって思ってたから!クロームちゃん嫌じゃない?」
「嬉しい、、、」

頬を朱色に染めながら遠慮がちに笑みを浮かべるクロームちゃんに思わず庇護欲が湧き上がってきた。

「あ、ちょっと!ずるいじゃない!」
「ずるくないよぉ、私とクロームちゃんは二人で一つだもん、ねー!」

クロームちゃんも嬉しそうにこくこくと頷き、私のことを膝にのせてくれる。
MMちゃんは、ぷくりと頬を膨らませていたが、なんだかその姿が年相応に見えて思わず笑ってしまった。
七並べは私とクロームちゃんの圧勝に終わり、次はなんのゲームにするかと皆でわいわいとカードを混ぜる。
やっぱり良くないよな、私は皆に一言添え、離れた場所にいる二人の元へと足を運んだ。

「どうしたんですか?貴方が落とし物を拾ってくるなんて珍しい」
「別に、深い意味はない」

六道骸はコーヒーカップに口をつけているヴェルデを横目で見る。
ふぅん、そうですかと言ったものの、その視線は如実に伝えたいことを表していた。

「何が言いたい」
「別に、何も言ってないじゃないですか」

嫌な子供だな、ヴェルデは口にこそ出さなかったが小さく舌打ちをする。
輪から外れ、短い足を動かしながら彼女が自分達の方へ向かってきている姿が見えた。

「おや?どうしましたか?」

先に口を開いたのは六道骸だった。
彼女は手をもじもじとさせ、行儀良く頭を下げる。

「あの、もう帰ります。お邪魔しました」

トランプを混ぜていた四人も静かになり、どうしたんだとこちらを伺っていた。
六道骸はくすりと笑みを浮かべる。

「彼のことが恋しくなってしまいましたか?」

その言い方は、小さい子供に声をかける姿と全く一緒だったのだが、彼女は首を横にふり、気にすることなく話を続けた。

「ここでお世話になったら、頼る先を雲雀さんからかえただけになります。だから、」
「誰がタダで置いてやると言った?」

六道骸より先に口を開いたのはヴェルデだった。
彼女は顔を上げ真っ直ぐにヴェルデのことを見つめる。
ヴェルデの視線はコーヒーカップに向いたままだった。

「新発明の製作に猫の手も借りたいと思っていたところだ」
「で、でも、迷惑かけちゃうかも、、、」
「猫よりは役に立つだろう。私は容赦なくこき使うぞ、覚悟しておけよ」

良いんですかと言いたげな目で視線を移す彼女に、六道骸は笑みを浮かべる。

「ヴェルデ博士の発明は我々にとっても重要ですからね。貴女が嫌じゃなければ是非」

彼女は大きく目と口を開き、その頬は少しだけ朱色に染まっていた。

「頑張りますっ!頑張って、役に立てるようにします!」

ヴェルデは鼻をならし、ちらりと視線を彼女へと向ける。

「ついでだ、元に戻る発明品も造ってやる」
「え、でも、、、」
「ついでだと言っているだろう。ジャンニーイチの倅に造れて、私には造れないと言いたいのか?」
「そう言う訳じゃなくて、そこまでしてもらうのは悪いというか、、、」

またもや彼女の顔が暗くなっていたのが分かったのか、ヴェルデは大きく舌打ちをした。

「ついでだと言っているだろう。あまり聞き分けのないことを言うと、、、」
「わわわ、、、!お、お願いしますっ」

頭をこれでもかと下げられ、ヴェルデはコーヒーを一口飲む。
その瞬間、彼女の体は持ち上げられ、後ろを振り替えると他の四人が集まっていた。
彼女を持ち上げたのはやはりというかM・Mだった。

「だいたい、お前みたいなチビが外に出たら一発でヤられるに決まってるびょん!」

大きく口を開く城島犬に彼女は小さい声で何かを言っていたがM・Mの声の方が大きく聞こえなかった。

「ちょっと犬!元はと言えばアンタが冷たい態度とったからでしょ!謝りなさいよ!」
「なっ、つめてー態度なんてとってねーびょん!」
「謝りな、犬、、、」

クローム髑髏は彼女の頭を撫でながら大丈夫かと身を案じている。
わいわいと騒いでいる五人を横目に、六道骸はヴェルデへと話しかけた。

「随分と優しいじゃないですか」
「優しい?誰がだ」
「元に戻る発明も造るなんて、、、。貴方にはあまりメリットがないような気もしますがね」
「何が言いたい?」
「別に、なんでもありませんよ」

やはり嫌な子供だ、今度はそう口に出し、ヴェルデは小さく舌打ちをした。

翌日、俺は学校へ向かいながら昨日のことを思い出していた。
アイツ、見つかったのかな。
まぁヒバリさんが居場所は分かっていると言っていたのだから問題はないだろう。
大きく口を開きあくびを漏らすと、目の前に学ラン姿のヒバリさんがいた。
声をかけると勢いよく俺の方へ振り返るヒバリさん、その顔は焦っているというより怒っているといった表現がぴったりだった。

「あの、もしかしてアイツ見つかってないんですか?」

俺がそう聞くと、ヒバリさんからうるさいと怒られてしまった。
まさか、そんな、俺は慌ててヒバリさんへと詰め寄る。
今まで走り回っていたのだろうか、ヒバリさんの額から頬から汗が流れ落ちていた。

「ど、どうしよう、アイツ小さくなっちゃってるし何かあったら、」
「その心配はありませんよ」

俺とヒバリさんは声が聞こえてきた方へ体を向ける。

「骸!」
「どうも、お久しぶりです」

クフフと何時もの笑い方をしながら、骸はヒバリさんのことを真っ直ぐと見ていた。

「僕は忙しいんだ。君の相手をしている暇は」
「彼女なら僕達の所にいますよ」

骸の声にヒバリさんの体が大きく揺れたのが分かった。
何も言わないヒバリさんの代わりに俺が口を開くことにする。

「なんでお前のところに」
「ヴェルデ博士が拾ってきたんですよ」

骸の話し方はまるで、子供が捨て犬や猫を拾ってきたのだと言っているみたいで俺は思わず苦笑いを浮かべてしまう。

「え、でもなんでわざわざヒバリさんに?」

元の場所に返してこない子供の代わり、ということでもなさそうだった。
骸はふぅと息を吐き、頼まれたからだと口を開く。

「彼女から、自分のことを探していたら伝えておいて欲しいと。まぁ、彼女は君が探しているとは思っていないみたいでしたけどね」

そう言った骸は、どうみてもヒバリさんのことをバカにしている顔をしていた。
俺が気づいてヒバリさんが気づかないわけがなかった。
ヒバリさんは短く、そうとだけ答えるとすたすたと歩き始めた。

「会いに行かない方が良いと思いますよ」

骸の横を通りすぎようとした瞬間、そう言われたヒバリさんの足がぴたりと止まる。

「君には関係ないだろう」
「ありますよ、彼女にはヴェルデ博士の発明の手伝いをしてもらってるんです。勝手に連れていかれては困りますからねぇ」
「僕には関係ないことだ」

ヒバリさんがまた歩き始めようとすると、骸は溜め息をつき口を開いた。

「彼女は君が自分のことを探していないと思っている、この意味が分かりますか?」
「何が言いたい」
「本当は分かっている癖に、、、。暴力で人を従わせることはできても、心までは所有することはできませんよ」

骸の言葉にヒバリさんが唇を噛んでいるのが分かった。僕はもう行きます、そう言うと骸は霧のように消えた。

「あの、ヒバリさん、俺が様子を見てきますから、、、待っててくれませんか?」

俺がそう言うと、ヒバリさんは目を丸くした。
あのヒバリさんもこんな顔をするんだ、と少しだけ親近感がわいたのは俺だけの秘密だ。

学校をサボり、そのまま黒曜ランドへと向かう。
飯はどうしているんだろうと気になった俺は一度家へと戻り、母さんに弁当を作ってほしいとお願いをする。
学校をサボったことに、なにか言われるかと思ったが幼馴染みの名前を出すと喜んで弁当を作り始めてくれた。
リボーンが居なくて良かったと胸を撫で下ろし、俺は黒曜ランドへと向かった。

前に訪れた時より修繕箇所が増えていたため、俺は難なく黒曜ランドの中を進んでいく。
がたがたと音が聞こえてきて、ここかと顔だけを出し中の様子を見る。
つんつんと洋服を引っ張られ、なんだどうした後にしてくれとしっしっと手で追い払う、が。

「シンニュウシャ、シンニュウシャハッケン」
「え?」
「ハイジョ、ハイジョシマス」

くるりと後ろを振り替えると、そこには小さいサイズのモスカがいた。
標準をがちゃんと俺に合わせ、その瞬間眩しい光が発射される。

「うわぁあ!」

レーザー銃ってどういうことだ、そのまま部屋の中に転がり込む。
そこには思った通り、つなぎ姿の幼馴染みとヴェルデがいた。
幼馴染みは俺に気づくと目を丸くし、驚いた顔をしている。

「ツナヨシ君!どうしたの?」
「どうしたの、じゃない!コイツ止めてくれよ!」

未だにぷしゅぷしゅと俺にレーザー銃を向けてくるモスカから逃げながら大声で叫ぶ。
幼馴染みは口をぽかんと開いたまま、ヴェルデの顔をちらりと見る。
横にいたヴェルデが面倒くさそうにリモコンを操作するとモスカの動きは無事に止まった。

「よ、良かった、、、」
「何の用だ、沢田綱吉」

俺が額の汗を拭うと、やはり面倒くさそうな顔をしたヴェルデと不思議そうな顔をした幼馴染みが近づいてきた。

「何の用って、、、」
「そうだよ、どうしたのツナヨシ君、学校は?サボっちゃったの?」

お前も現在進行形でサボっているだろうとは言わず、取り敢えずお弁当を見せると幼馴染みは飛び跳ねて喜んでいる。

「わーい!奈々さんのお弁当だ!ヴェルデさん、お昼にしませんか?」

幼馴染みの姿を見たヴェルデは、もうそんな時間かと腕時計を見つめていた。
そんなこんなで、俺と幼馴染み、そしてヴェルデの三人で母さんの作った弁当を食べることになった。
三人で食べるのでも充分な量があったため、温かいお茶と共に、俺もおにぎりやおかずを口にいれる。
美味しい美味しいと口におにぎりを頬張る幼馴染みの姿はハムスターやらリスやらを想像させた。

「というか、お前こそ何してるんだよ?」
「私?私はヴェルデさんのお手伝いしてるの」
「お手伝い?」

詳しく話を聞いてみると、ここに置いてもらうのと元に戻る発明品のためにヴェルデの助手をしているとのことだった。
そう言った幼馴染みの顔は確かに黒く汚れていた。
あ、そうだ、ヒバリさんから元に戻る薬を貰ってくれば良かったと今更ながらに後悔をする。
まぁ、また来るときにでも持ってくれば良いか、俺はふぅと息を吐きお茶を飲む。

「それで?何の用なんだ?」

ヴェルデから早く質問に答えろと先程と同じ質問をされ、俺は幼馴染みへと視線を送る。
俺の視線へと気づいた幼馴染みは、おにぎりをお茶で流し込むと首をかしげた。
その姿は小さい頃に一緒に遊んだ幼馴染みと全く同じで、俺はどう切り出したら良いのかと迷ったが口を開く。

「骸がこっちの方に来て、それでお前がここにいるって分かったんだ。ヒバリさんがお前のこと心配してて、、、」

俺がヒバリさんの名前を出すと、幼馴染みはぴたりと動きを止める。
お茶に映った自分の姿を見ているのか、くるくるとコップを回し、そうなんだと短く答えた。
ヴェルデは黙ったままだった。

「そうなんだって、、、。ヒバリさんのところに戻らなくて良いのかよ?」

幼馴染みも黙ってしまったが、俺は何とか説得を続ける。

「ヒバリさん、お前のこと一日中探して」
「それがどうした」

俺はヴェルデの言葉に思わず変な声を出してしまう。
幼馴染みはコップから視線を上げ、ヴェルデのことを見つめていた。

「彼女が探してほしいと言ったのか?心配してほしいと言ったのか?違うだろう?彼女は元に戻る薬が欲しいと言ったんだ。それに対して雲雀恭弥はなんて言ったんだ?」

ヴェルデの言葉に俺は黙ってしまう。
でも、ヒバリさんのあの顔を思い出したら退くわけにも行かず、もう一度幼馴染みの顔を見る。

「あのさ、もう一回ヒバリさんと話して、」
「やだ」

幼馴染みの視線はコップへ戻っていた。
やだって、そんな子供みたいなこと言うなよと俺が言うと、睨み付けるような目で俺のことを見ている。

「ツナヨシ君だって、雲雀さんが私になんて言ったか見てたのに、なんで、雲雀さんの味方するの!」
「味方って、そんなつもりじゃ、」

幼馴染みの激昂している姿に、俺は思わずたじろいでしまう。
怒らせるつもりはなかったのに、どうしたら良いんだと頭を悩ませるが良い方法は思いつかなかった。

「どうせ雲雀さんの機嫌を取りたくて私に会いに来たんでしょ!」
「な、そんなわけないだろう!俺だって心配して、」
「やだ!ツナヨシ君もやだ!帰ってよ!お弁当置いて帰って!」

弁当箱をぎゅっと抱き締めながら睨まれてしまう。
ヴェルデから帰ったらどうだと言われてしまい、俺はしょうがなく部屋から出ていく。
部屋から出ていく前にヴェルデの耳元で、今度来るときにヒバリさんから薬を貰っておくからと伝えると必要ないと一蹴されてしまう。

「私が造るから必要ない」
「つくるって言っても最初からだろう?それだったら、」

ぎろりと睨まれてしまい、俺はそれ以上は何も言えなかった。
並中へと戻った俺は応接室の扉を叩こうとした瞬間、がらりと先に扉が開く。
ヒバリさんは焦ったような顔で俺を見ていて、幼馴染みが一緒にいないことに気づくと、分かりやすく肩を落としていた。

「あの、すみません。一緒に帰ってこれなくて、、、」
「別に、構わないよ」

入りなよ、飲み物ぐらい出すからと言われ、応接室へと足を踏み入れる。
お茶を出され、どうだったんだとヒバリさんからは尋ねられた。

「元気、そうでしたよ」
「そう」

なら良かった、そう言ったヒバリさんの顔は全然良さそうでなく、俺は沈黙が苦しくなる。
薬、と呟いたかと思ったらヒバリさんは胸ポケットから袋を取り出し机の上に置いた。

「君が持っていた方があの子に渡せるだろう」
「あの、なんでアイツに渡さなかったんですか?」

そうだ、この薬を渡していたらこんなことにはなっていなかったのでないか、俺は単純に気になっていたことを聞いてみた。

「分かってねぇな、お前は」
「え、」

天井を見ると、何かが落ちてきていることに気づく。
またこのパターンかよ、頭では分かっていたが体が追いつかず、落ちてきたリボーンから踏まれてしまう。

「ってえぇ~!!リボーン!お前なぁ!」
「ちゃおっス、大丈夫か?ヒバリ」

俺じゃないのかよと悪態をつくものの、リボーンは全く気にしていないようだった。

「やぁ、赤ん坊」
「その様子だと、今にもやられそうな感じだな」
「ちょ、ヒバリさんになに言ってるんだよ!やめとけって、リボーン!」

リボーンの肩をがしっと掴むが、当の本人は全く気にしていないようでヒバリさんのことを煽る煽る。

「今回はお前の自業自得だな」
「ひぃ、やめろって!」

咬み殺されてしまう、俺は慌てて頭を腕で守るがヒバリさんは椅子に座ったままだった。

「分かってる」

ヒバリさんが椅子を窓へと向けると少しだけ音が響いた。それ以上はリボーンも喋る気にならなかったのか、俺達は応接室を後にする。
結局、ヒバリさんから薬は貰わなかった。

ー中編に続く
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