ロイの指導の下、健一は交易の基本を学び始めた。教えられたのは、村で使用されている3種類の通貨についてだった。


最も価値が低いのは流木コイン。
これは村周辺の川や海で拾える流木から作られている。

次に価値があるのは樹脂コイン。
特定の樹木から採取される貴重な樹脂を加工して作られている。

最も価値が高いのは星石コインで、鉱山から採掘される希少な金属を使って作られていた。

「流木コインは手に入りやすい反面、価値が低い。商人たちもあまり喜ばないことが多いんだ」とロイは説明した。

「一方で、樹脂コインや金属コインは価値が高く、信頼性もあるから、取引の際に重宝される。」

村の周辺にはさまざまな資源があり、これを利用して村人たちが生産物を作っていた。

特に薬草は隣の村で高値で取引されており、健一はこれを使った取引を考えた。

ある日、健一が市場で取引のコツを学んでいると、一人の少女が近づいてきた。

彼女の名前はミア。ポメラニアンの特徴を持つ獣耳族の少女で、その妖艶な姿と艶やかな笑顔は市場の人々の目を引きつけた。

彼女の大きな瞳は好奇心に輝き、ふわふわとし
白銀の毛並みは陽の光を浴びて美しく輝いていた。

「君、見慣れない顔だね。ここで何をしているの？」ミアが興味津々に尋ねた。

健一は笑顔で答えた。「僕は健一。この村で交易を学んでいるんだ。君は？」

「私はミア。別の村から来て、ここで交易の手伝いをしているの。」

健一とミアはすぐに打ち解け、取引の話をするうちに、健一はミアから村やその周辺の情報を教えてもらった。

その中で、二人は市場で評判の良くない商人と出会った。その商人は常に高い値段で商品を売りつけ、逆に買い取るときは安値で買い叩くことで有名だった。

「この商人には皆苦しめられてるの」とミアが悲しげに言った。

健一はこの商人との取引を通じて、自分の交易スキルを試すことにした。「この薬草を売りたいんだけど、どうだろう？」健一は商人に声をかけた。

「ふん、その薬草なら流木コインでしか買い取れないな」と商人は鼻で笑った。

ミアは不安そうに健一を見つめたが、健一は微笑んで彼女を安心させた。

それに反し健一は堂々と自信に満ちていた、
「これから西の国で大規模な戦争があるそうです。」
「それに向けて鉄を溶かして武具を作る燃料に木が多く使われて流木コインの価値がこれから騰がりますよ？」

「それは本当か？」

「数日前から木材を詰んだ荷馬車の出入りの多さをご存知ないですか？」
機転を効かせ、通りすがりの荷馬車を笑顔で指さして笑顔で話すミア。

「、、、、、流木コインが安いうちに買い取らせてもらうよ。」と商人が言ったとき、健一はこう切り返した。

「今は流木コインは使わず集める時期です。樹脂コインか星石コインで払った方が良いですよ。流木コインが騰がることも考えれば損はありませんよ。」

商人は一瞬戸惑ったが、提案に乗った方が得策だと考えた。結局、健一は星石コインで支払ってもらうことで、実際の価値以上の利益を得ることができた。

取引が終わり、ミアは健一に近づいてきた。彼女は微笑みながら、健一の腕に軽く触れた。「健一さん、すごい！あなたの取引のスキルには本当に感心するわ。」その言葉と共に、ミアの目は輝き、彼女の艶やかな笑顔が健一の心をとらえた。

「西の国って平和だけど戦争なんてどこから聞いたの？」


「でまかせだよ。流木コインが騰がるのをずっと待つはずさ。」

健一は照れくさそうに微笑み返した。

「ありがとう、ミア。でも君の助けがあったからこそ成功したんだよ。」

「それでも、健一さんの腕前は本物よ。」ミアはさらに健一に近づき、彼の胸にそっと手を当てた。その仕草は妖艶でありながら、健一に対する信頼と感謝が感じられた。

その後、ミアは健一を自分のお気に入りの場所に連れて行くことを提案した。「健一さん、私の特別な場所を見せたいわ。きっと気に入ると思う。」

ミアは健一を村の外れにある静かな丘に案内した。そこは一面に広がる草原で、夜になると星が美しく輝く場所だった。二人は並んで座り、星空を見上げながら語り合った。

「ここ、すごく綺麗だね。まるで別世界みたいだ。」健一が感嘆の声を漏らすと、ミアは微笑んだ。

「この場所が好きなの。静かで、何もかも忘れられる気がするから。」ミアは健一に寄り添い、そっと手を握った。

二人はその夜、星空の下で未来について語り合いながら、絆を深めていった。健一はこの異世界での新たな生活に希望を見出し、ミアと共に前向きに進む決意を固めた。