第1章: 新たな世界への目覚め
港町ウォーレンに到着した三人は、早速酒場を見つけ、杯を重ねた。
「久しぶりの馬車旅も疲れたけど、まあまあ楽しかったな」とチャーリーが笑いながら言った。
五郎は苦笑しながら、「お前は酒を飲んでいただけで何もしてないだろ」と突っ込んだ。
健一は笑顔で満ち溢れていた。神の目で見た美女が、酒場の店員だったからだ。彼女は碧色の長い髪に整った優しい顔立ち、華奢な体に反して豊満な胸を持ち、腕と足には鳥のような羽毛と鉤爪があった。まさにハーピー族そのものだった。
「こんにちは、お嬢さん。お名前を聞かせてくれないか?」と健一が微笑みながら尋ねた。
少し驚いた様子の彼女だったが、すぐに明るく答えた。「初めまして、レイスです。」
チャーリーは酔っ払いながら、「ちょうどいい、彼女にいろいろ教えてもらおう」と提案した。
五郎はため息をつきつつ、「突然で済まない、お嬢さん」とレイスに声をかけた。
レイスは微笑みを絶やさず、「全然大丈夫ですよ。なにかお困り事ですか?」と三人に問いかけた。
健一は事情を説明し始めた。「先日、洗脳されたドラゴンに襲撃されたんだ。その背後には北の塔の集団がいるらしい。他の地域でも悪事を働いているので、討伐するために旅を続けているんだ。」
レイスは驚いた表情を見せた。「実は、この街ウォーレンも夜になると通り魔が出て困っているんです。どうやら街から少し離れた神殿からやってくるようで、何人も神殿へ捜査に向かったのですが、帰ってくる者はいませんでした。」
彼女は健一たちに真剣な表情で頼んだ。
「どうか通り魔を討伐してください。夜は皆外を出歩けなくて困っています」とレイスは深刻な表情で言った。
酔っ払った健一は、その言葉を聞いて椅子から立ち上がり、大声で言った。「討伐した暁には、報酬にレイスをくれ!」
「また馬鹿な事を言っている」と笑いながら、チャーリーは更に酒を飲み始めた。その横で五郎はレイスに向かって深々と頭を下げた。「いきなり無礼な事を言って申し訳ない。」
レイスは微笑んで答えた。「かまいませんよ。通り魔を討伐してくださったら、この身は健一様に捧げます。」
予想外の返事に驚き、チャーリーと五郎は騒ぎ始めた。健一は目を輝かせ、「絶対だからな!」とレイスに詰め寄った。
レイスはその騒ぎに少し驚いたあと、冷静に提案した。「それではまずは宿屋で夜までお休みになられては? 長旅の疲れもあるでしょうし。」
健一とチャーリーと五郎は、その提案を受け入れて宿へ向かうことにした。
宿屋に到着した三人は、早速部屋に入り、また酒を飲み始めた。酒の勢いでさらに騒ぎ立てる三人だったが、夜も更けた頃、外から悲鳴が聞こえた。
「やばい、通り魔だ!」健一が立ち上がり、チャーリー、五郎とすぐ外へと飛び出した。
健一たちは宿屋から出た途端、目の前に惨殺された遺体が横たわっているのを見つけた。遺体はまるで彼らに見せつけるかのように配置されていた。
「なんてことだ…」五郎が呟く。
「やったのはあいつだ!」健一が街の入口に目をやると、黒いローブをまとった人物が急いで街の外へ逃げていくのが見えた。
「奴を追うぞ!」五郎が叫び、すぐに走り出した。健一は五郎を追い越しながら興奮気味に叫んだ。「レイスは俺のものだ!」
「じゃあ、俺はゆっくり行くとするか」チャーリーは酒瓶から一口飲み、のんびりと歩き出した。「着く頃には終わってるといいんだがな」
健一と五郎は通り魔を追い、森を抜けていった。やがて神殿にたどり着くと、その入口に黒いローブを着た人物が立っていた。
その人物は腰に神々しい剣を下げていた。その剣を見た五郎は言った。「どうやらこいつが犯人で間違いなさそうだな」
「レイス、追い詰めたぞ!」健一が叫び、彼の左目が黄金色に輝いた。
五郎は驚いた。「健一、お前は最初から犯人だと分かっていたのか?」
「やっぱりあなたも神器を持っていたのね」レイスがフードを下ろし、冷笑を浮かべた。「神器と神器は惹かれ合うのね」
五郎は問いかけた。「なぜこんなことをしている?その剣も神器なのか?」
健一が代わりに答えた。「神の剣を手にした者は、その切れ味の虜となり、心の弱い者は命を絶つ快楽に溺れてしまうのだ」