第1章: 新たな世界への目覚め
ゴンは改めて洗脳を解いてくれたことに感謝し、「俺はそろそろ故郷に帰ろよ」と皆に伝えた。
「わかった。貴重な情報をありがとう」と五郎が言うと、
健一は酒を一口飲み、「元気でな」と軽く手を振った。
「もう捕まるんじゃないぞ」とチャーリーは酒を飲みながら冗談めかして言った。
ゴンは苦笑いし、元のドラゴンの姿へと変わると、力強く翼を広げ、空高く舞い上がり、西の方へ飛び去っていった。
五郎は一息つき、健一を鋭い目で見つめながら、「リリスの神の目を奪ったんだろう」と問い詰めた。
健一は酒を飲み干し、「そうだ。今は俺の左目に宿っている」とあっさりと答えた。
チャーリーは「無くした宝がやっと帰ってきてくれたな」と笑いながら酒を一気に飲み干した。
五郎は呆れつつも、「北の塔に向かう前に準備はしておくべきだ。どこか立ち寄れる場所を探してくれ」と健一に指示した。
健一は内心、偉そうに指図しやがってと腹を立てながらも、渋々と「了解した」と答えた。酒をもう一口飲むと、面倒くさそうに右目を手で覆い、周りを見渡した。
健一はしばらく周りを見渡すと、東の方に港町と若く魅力的な女の子の姿が見えた。
「東に港町がある。そこなら必ず有益な情報が得られるはずだ」と興奮気味に言い切り、酒を一口飲んだ。
五郎は頷いて、「確かに港町なら様々な土地の取引相手の情報が得られそうだな」と同意した。
健一は続けて、「ただ、少し距離があるようなのでこの街で馬車を買おう。時は一刻を争う」と真剣な表情で五郎とチャーリーに言った。
五郎は健一が神の目を手に入れ、真っ当な人間に矯正されたことを喜び、「馬車の手配は俺がしてくる」と言い残し、足早に去っていった。
一方、酔っ払ったチャーリーは面倒くさそうに「遠いのか」と呟きながらも、「まあ、馬車があるなら歩かなくて済むし良いか。馬車の中で飲む酒を買ってくるよ」と言い、ふらふらと外へ出かけていった。
健一はパブに腰を下ろし、酒を飲みながら二人を待つことにした。彼の心は先程見た港町の若い娘の姿に占められており、早く会いたいという期待に胸を膨らませていた。彼は酒瓶を飲み干し、一息ついた。
しばらくすると、チャーリーが酒瓶を片手に入ってきた。「やっぱりここにいたか」と笑いながら近づくと、「途中で五郎に会ったから、買った酒は馬車に積んできた」と言って、自分の酒を一気に飲み干した。
健一は不機嫌そうに顔をしかめ、「五郎は遅いな」と声を荒げた。
チャーリーは肩をすくめて、「旅に必要な食料とかポーションとか用意してくるって言ってたな」と答えた。
「もたもたしやがって」と健一の怒りは収まらない。
その時、五郎がパブの扉を押し開けて現れた。「待たせたな、健一」と息を切らしながら、「馬車に食料と寝袋とポーション、そしてお前らの酒を積んできたぞ」と明るく告げた。
健一は舌打ちし、唾を吐いて怒りを抑えながら、「ありがとう、助かるよ。ただ、もう少し早くして欲しかったな」と、怒りをこらえつつ五郎に詰め寄った。
五郎は申し訳なさそうに頭を下げ、「すまない。あまり大きな町ではなかったから、特に保存の効く食料の調達が難しくて」と謝った。
「まあいい、出発するぞ」と健一は命じるように言った。
二人は揃って「了解した」と応じ、すぐに行動を開始した。
五郎の準備のお陰で、馬車での旅は快適だった。食料と酒は十分にあり、旅の心配はほとんどなかった。
昼間、馬車の中で健一がチャーリーに国歌を教えた。「こう歌うんだ、チャーリー。『我らが国の〜』」と健一が歌い出すと、チャーリーも笑いながら真似をする。
「なんだよ、その音痴っぷりは!」と健一が笑うと、五郎も大声で笑い返した。「お前こそ、音程外れてるじゃないか!」
三人は仲良く歌い、笑い声が絶えなかった。
夜になると、焚き火を囲んで五郎の作ったシチューに舌鼓を打つのが習慣になった。「五郎、このシチュー最高だな!」と健一が大喜びで食べる。
「本当に、これは絶品だよ」とチャーリーも満足げに言った。
五郎は二人の様子を見て満足そうに微笑んだ。「お前らが喜んでくれるなら、それでいいんだ」と、静かにシチューを味わった。
そんな日が数日続いた後、ついに三人は港町ウォーレンへたどり着いた。
「やっと着いたな、ウォーレン!」と健一が興奮気味に言った。
「ここでどんな情報が得られるか楽しみだな」と五郎も期待に胸を膨らませた。
「まずは酒場だな」とチャーリーが提案し、三人は港町の活気に溢れた通りへと足を踏み入れた。