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「いつになったら入れるかな~早乙女くん」
「いつだろうね~天道くん」
「「……はぁぁぁ」」
なまえたちがシュウマイを手にしていたその頃、玄関先での闘いも激しさを増していた。
家主の天道早雲、居候で乱馬の父である早乙女玄馬が帰ってきたというのに、三人は闘いをやめない。
「くらえ!!」
「いつもより重くないぜ!?」
良牙の飛び蹴りを、乱馬は胸の前でクロスした両腕で受け止めた。
その反動を利用して良牙は宙で一回転して飛び退く。
「軽口を叩けるのは今の内じゃっ」
「くっ!」
乱馬の隙を付いたムースは、暗器を袖口から飛ばし乱馬に絡み付かせた。
動きを封じられた乱馬は紐を千切ろうともがくが、足や腕などあらゆるところに巻き付いたソレは簡単には千切れない。
「今じゃ、良牙!」
「乱馬っ!くらえー!!」
ムースの言葉に良牙は、きつく握り締めた拳を乱馬目掛けてふりかぶった――――その時だった。
「爆砕点穴ーーーっ!!」
突如聞こえた叫び声に三人の動きが止まった。
「だ、誰だ!?」
「おらたち以外にも暗示を知ってるやつがいるだか!?」
「……さっき、なびきが九能先輩に話しちまってよ」
乱馬の一言に良牙とムースは叫び声の聞こえた玄関の方を見た。
「ならば、今の声は九能……」
「こうしちゃおれん!なまえー!」
「な、ムース!そうはさせるか!」
「あっ!待ちやがれっ!」
ムースが玄関の扉を開けて天道家へ突入したのに続いて、良牙とも家の中へ入っていく。
乱馬はぐぬぬっと体に力を込め、絡みつく暗器の紐を千切り先を行く二人を追いかけた。
バタバタと上がり込む三人は、玄関にいたなびきに「道場よ」と言われ、一目散に駆けていく。
道場の扉は開けられており、中央付近に座っているあかねとなまえに九能はじりじりと詰め寄っていた。
「さあなまえくん、もう一度僕の胸へ飛び込んでくるのだ!」
玄関で見せたように両手を広げ、息を吸い込んだ九能。
思いきり叫ぼうとしたのだが……。
「そうはさせん!」
「なまえさんは渡さーんっ!」
道場にたどり着いたムースが乱馬のときと同様に、暗器を袖口から投擲すると紐で九能を縛り上げた。
そして良牙が後ろから飛び掛かってくるが、すんでで交わした九能。あとからやってきた三人の姿を捉えた彼は、眉根を寄せて心底嫌そうな顔をしている。
「なんだ貴様ら!僕となまえくんの甘美な時間を邪魔する気か!?そうはさせん!いざ……」
爆砕点穴!!!
九能がそう叫んだのに続いて、良牙とムースは慌てて同じく合図を叫んだ。
「あっ!くそっ、爆砕点穴!」
「な!ば、爆砕点穴!」
「やめろお前らあああ!!!」
乱馬の止める声も聞かず、三人は欲望のままに合図を叫び続けた。
「爆砕点穴!」
「爆砕点穴!」
「爆砕点穴!」
「爆砕点穴!」
「爆砕点穴!」
「爆砕点穴!」
しーーーーん。
「……あ、あれ?」
かろうじて声を出せたのは、爆砕点穴合戦に参加しなかった乱馬のみ。
一通り叫んだところで、ぜ〜は〜と息を乱しつつもなまえが全く抱き着いてこないことに気づいた三人は、?マークを浮かべながらなまえの方を見た。
その様子を眺めていたあかねは、姉・なびき譲りのにこーっとした意味深の笑顔を作る。
そして小指を立ててマイクを握りしめるとあかねは声を張り上げた。
「ふふふ、残念だったわね。なまえは今、イヤホンで音楽を聴いているのよーっ!!」
「「「なにーーーっ!!?」」」
「そうか、その手があったか!」
「だからいくら暗示をかけても無駄よ!!」
あかねの言葉に愕然とする三人と対照的に、指をパチンッと鳴らして納得した乱馬。
そう、なまえが合図に反応しなかったのは――耳にイヤホンをつけて音楽を聴いているからであり、合図が音楽に遮られたからだ。
これがなびきの言っていた《いい考え》である。
「く、くうう盲点じゃった……ならば……」
悔しそうに奥歯を噛むムースだったが、その眼鏡がキラリと光った。
「そのイヤホンを取って暗示を言うまでじゃ!」
「な!そうはさせるか!」
「僕より先に行くとは許せーん!」
「お前らいい加減にしろよ!」
ムースに続いて良牙もなまえを目掛けて走りだした。九能も暗器の紐を解き遅れて走り出す。懲りずに走る三人のその姿はまさに欲望の塊だ。
「乱馬!これを使って!」
「これは…!…よしっ!」
そうなることを予想していたあかねは、かすみから受け取ったおかもちからセイロを取り出すと乱馬に投げた。
受け止めた乱馬は飛んでくるセイロの中に何が入っているかを瞬時に理解し、三人の前方へ飛び込む。蓋を開けると乱馬はセイロの中身、シュウマイに手を付けた。
「くらえ、火中天津甘栗拳ー!!!」
声高らかにそう叫ぶと、乱馬の片手が高速で動きだす。
しゅぱぱぱぱっ。
軽快に動くその腕は、目にも止まらぬ速さで三人の口元へ正確にシュウマイを運んだ。
「ぬぁ!?」
「ん!?」
「んぐっ!」
突然口の中に飛び込んできたシュウマイに驚いた三人だったが、日頃の条件反射で咀嚼し飲み込んでしまった。
それを確認した乱馬は道場の床に足をつけると、片足をダンッと鳴らした。
「お前らさっさと家に帰りやがれーっ!!」
ピキピキピキ……ッ。
乱馬の床を踏みつけた音の《合図》と帰れという《命令》に反応した三人は動きをピタリと止めた。
そして――……、
「◆くん、あかねくん、デートはまた次の機会としよう」
「なまえさん、あかねさん、また改めてお邪魔します。では」
「今日のことろは家に帰るだ。再見」
――三人はおのおの挨拶をすると道場を出て行く。傀儡芝でかかった暗示の命令通り、家へ帰ったようだ。
騒々しかった道場がようやく静寂さを取り戻した。
「やっと終わったわね」
「あぁ、もー傀儡芝は懲りごりだ」
床にへたりこむあかねと乱馬に、イヤホンを外したなまえが近寄った。
安堵の笑みを浮かべる二人になまえは嬉しそうに微笑む。
「あかね、乱馬くん、本当にありがとう。すごく助かったよ」
「気にしないで。なまえが無事でなによりよ」
「そーだ。これでもう爆砕点穴って聞かなくて済むんだからな……あ、」
ぎゅっ。
油断していたのか、すっかり気の抜けた乱馬はうっかり合図を言ってしまい、例のごとくなまえは乱馬に抱きついた。
その様子を間近で見たあかねは残っていた最後のシュウマイを手にすると、乱馬の口に放り込む。
ひょい、ぱく、ばちーん!
飲み込んだのを見計らって、平手打ちをかましたあかね。
「トレーニングに行ってこーい!」
「わ、悪ぃ、なまえー!!!」
「まったく油断も隙もないんだから……」
「あははは」
赤い紅葉を頬に作った乱馬は、なまえへ謝罪をしながら足早に道場を出て行った。
あかねが暗示をかけたからである。
そんな乱馬の後ろ姿にあかねはぷりぷりとした様子で悪態をついていた。
「ねぇ、なまえ。今日は家に泊まってかない?」
「え?」
乱馬の姿が見えなくなると、あかねは一変していつもの様子でなまえに微笑みかけた。
なまえのきょとんとした顔を見てふふっと笑いながら続ける。
「帰り道も心配だし、また三人が来るかもしれないでしょ?」
「う、うん……」
「家にいたほうが安全だし、私も安心するわ」
「そう?」
「ええ。それに暗示の効果も半日くらいでなくなるから、それまで私が用心棒!」
ぎゅっとなまえの両手を握りしめてあかねは頼もしげに話した。
そんなあかねの言葉になまえは釣られて笑うとひとつ頷く。
「じゃあお言葉に甘えちゃおうかな」
「そうこなくっちゃ!」
なんだかお泊まり会みたいね、そう続けたあかねになまえは同じことを考えていたと話す。
ドタバタな傀儡芝騒動はこれでおしまい?
いつも通りの日常に戻ったあかねとなまえはかすみの手伝いをしようと、道場をあとにした。
「傀儡芝ねー、誰に使おうかしら」
なびきは自室のイスに座り、机にある《あるもの》を眺めていた。
それは二つのシュウマイ。
イヤホンを使うことを教えた変わりに頂戴したものだ。
あかねとなまえは交換条件を一度拒否したが「現金一万円と交換よ。そのシュウマイにはそれ以上の価値があるでしょう?」そう言ったなびきに逆らえずしぶしぶ渡したものでもある。
「乱馬くんを下僕にしてもいーし、あ。九能ちゃんに募金お願いしちゃうのもいいかもね」
ふふふ。
怪しげな笑みを浮かべるなびきが行動を起こしたのは翌日。
誰が罠に掛かったのかは……言うまでもありません。
END.
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な、な、長かった……!
傀儡芝、再び。いかがでしたでしょうか??誰落ちとかなくて申し訳ない…!
とりあえずなびき最強(いや最恐)です笑