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「帰ったら道場に行くか」
天道道場の塀が見えてきたところで乱馬が呟いた。
道中三人が心配していた良牙とムースの襲撃はなかった。
「なんかごめんね」
「気にしないで、私たちが勝手にしてることなんだし」
「そーそ。それに遅かれ早かれあいつらはお前を見つけに来るだろうからな」
「あかね、乱馬くん……」
巻き込んでしまった申し訳なさからなまえは謝罪するものの、乱馬とあかねは気にするそぶりを一切見せずににこりと笑った。
その笑顔に救われるなまえもぎこちなく微笑んだ。
「まー、暗示がとけんのは時間の問題だからな。あいつらが来ても少しでも長く引き止められるよーにしねーとな」
「二人ともありがとう」
「いーのよ」
「そーだ、気にすんな」
心強い二人の存在になまえは安堵するように笑った。
そして三人は大きな門をくぐり、玄関までのアプローチを歩く。
扉の前であかねは持っていた買い物袋を少し掲げた。
「道場行く前にお姉ちゃんにこれ渡さないと」
「んじゃ先にそっち行くか」
乱馬はそう話しながら玄関の扉を開けた。
ぞろぞろと玄関に足を踏み込む三人だったが――上がり框(かまち)に見慣れた人物が腰掛けているのに気付いた。
「……九能先輩?」
九能はなまえや乱馬たちと同じ風林館高校に通う学生であり先輩だ。
彼が天道家へ訪ねに来るのは度々あるのだが、好意を寄せるあかねやおさげの女――女の姿に変身したらんま――が不在のときに来るのは滅多にない。珍しいタイミングでの来客に乱馬は首を傾げた。
そして九能は乱馬の声を聞くと、じっと閉じていた目を開けてゆらりと立ち上がる。
目の前に立ち塞がる乱馬に九能の眼光は鋭くなった。
「いつもならばここで貴様を蹴散らしても構わんのだが……生憎、早乙女!貴様に用はない!」
「あー?いっつも返り討ちにあってるくせに口だけは達者なやつだな!」
九能の口に乗せられて乱馬は拳を握り構えた。
しかし九能は背にある木刀を手にせず――
「ふん、なんとでも言いたまえ。僕となまえくんの愛が本物であることを見せてやる!さぁ、我が胸に飛び込んできたまえ、なまえくんっ!」
「…え、」
「まさか…」
――そう言うと両手を広げて叫んだ。
「爆砕点穴ー!」
ぎゅっ。
合図に反応した◆の体は暗示の通り、九能に抱きついてしまった。
「「「えええ!!?」」」
予想打にしていなかった出来事に、九能を除いた三人は驚きを隠せなかった。
「ああ、なんと愛おしい……」
「やめんか、こら!」
なまえを抱き締めたままスリスリと頬を寄せる九能の顔面に、乱馬の渾身の蹴りが入り九能はその場に倒れた。
解放されたなまえは呆然としながら、あの場にいなかったはずの九能の行動に困惑している。
「どうして九能先輩が暗示のこと知ってるの!?」
「さー……」
あかねが声を荒らげるも、当の本人――九能は白目を向いて倒れており、乱馬も首を傾げるしかなかった。
……が。
「ごめーん!言っちゃった!」
「なびきお姉ちゃん!?」
騒ぎを聞き付けたのか、あかねの姉・なびきが悪びれる様子もなくケラケラと笑いながら階段を降りてきた。
そして伸びている九能を見て「あーあ、九能ちゃんたら」と、これまた悪びれる様子もなく笑った。
「お姉ちゃん、どういうこと!?」
「やーね、学校帰りに乱馬くんたち見かけてねー、近寄ってみたらすごいことになってんじゃないの」
小脇に抱えたポテチを食べながら、なびきは続ける。
「それで、ばったり帰り道で会った九能ちゃんに話しちゃったってわけ!ごめんねー、なまえちゃん」
「なんてことしてるのよ、お姉ちゃん!!」
「だーって、この情報高く買ってくれたんだもーん!」
「おねいちゃん!!!」
「あにやってんだよ、おめー……」
なびきは貯金が趣味のため、あの手この手で荒稼ぎするのだ。好意を寄せる三人――◆、あかね、おさげの女――のためなら金に糸目をつけない九能に情報を高値で売りつけたらしい。
あっはっはっ。と笑う楽観的な姉に、あかねはぎゅっと手に力を込めた。相手が武闘をしているなら手が出るところだが、行き場のない怒りがこみ上げる。
それは自身もこの暗示の強さを知っているからこそだ。
「爆砕点穴」 ぎゅっ。
「ちょっと」
「爆砕点穴」 ぎゅっ。
「九能先輩」
「爆砕点穴」 ぎゅっ。
「あの!」
「「ええ加減にせい!!!」」
バキッ。
乱馬とあかねの拳が九能を直撃し、二人のなびきへ対する怒りはここで発散された。
九能は再度白目を向くはめに。
ちなみに先ほどの行為は、意識を取り戻した九能がなびきの話に平行してなまえに合図をかけまくっていたもので、乱馬とあかねには目障りに感じてしまった結果である。
「へぇーえ?結構強力な暗示なのね?」
そんな乱馬やあかねを気にすることなく、なびきは目にした光景にポリポリとポテチを食べて呑気に呟いた。
「なびきさん……他人事過ぎますよ……」
「だって他人事だもーん!」
あっけらかんと笑って言ったなびきになまえはげんなりするばかりだった。
「おいなびき!九能先輩以外に言ってねーだろーな!?」
「そーねぇ、九能ちゃん以外にも言えば良かったわね」
「くぉら、なびき!」
「冗談よ、じょーだん!九能ちゃん以外には言ってないわ」
どこまでが本当なのかわからないなびきの発言に乱馬を始めとする三人は、意気消沈とするほかなかった。
そんな中、また新たな人物が天道家の玄関の扉を開けようとしていた。