オールキャラ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
こ、こ、これは、いったいどういうことだ?
ゆ、夢か……?
想いを寄せるなまえからの熱い抱擁に驚きを隠せず固まる良牙の瞳から、一筋の涙が流れた。
どうやら感動しているようだ。
「ご、ごめんね、良牙くん。なんか勝手に体が動いて……」
「い、いえ!全然!その……嬉しかったです!」
「え?」
「あ、いや。あはっ、あははははは」
ゆっくり離れるなまえに名残惜しさを感じた良牙だったが、その場を取り繕おうと出た言葉は彼の本音だった。
行き場のない手が頭をガシガシと掻いている。
そんな二人のやり取りを見ながら乱馬は似たようなやり取りを先日したな……と思い、ムースに視線を送った。
問題は良牙が突然出てきたことよりも、目の前でなまえがいきなり良牙に抱きついたことなのだ。
「おいムース。もしかしておめー、そのシュウマイに傀儡芝入れたんじゃねーだろーな」
「な!?なぜ《傀儡芝》のことを!?……はっ!」
あからさまな反応を見せたムースに乱馬ははぁぁぁとため息をついた。
やっぱり。面倒なことになっちまった。
つい先日シャンプーに同じ手でやられた口だ。まーだあの厄介なやつが残っていたとは。
「てことは、なまえが掛かった暗示は……」
乱馬は頭を抱えて考え込んでいる良牙を見た。
良牙は傀儡芝のことは知らねぇ。もちろんなまえもだ。
ムースは暗示をかけたが反応する《合図》にはまだ気付いてねぇようだが、おそらくアレが《合図》に違いねぇ。
はえーとこ、なまえを安全な場所に移さねぇと……。
そんな乱馬の考えなど微塵も知らない良牙は、一人悶々と考えを巡らせていた。
響良牙、今までにこんな幸運に巡り逢えたことがあるだろうか。
会いたい会いたいと幻影さえも見えかけた刹那、暗くて狭い土の中から出れば会いたい人に会えて、ましてや願ってもみない熱い抱擁を受けるなんて、俺って俺って……、
ちょおおお幸せ者おおお!!?
い、いや、待て。落ち着け良牙!
そんなに容易く目の前に幸せは転がっているものなのか!?
これは俺がなまえさんを抱きしめたいという願望と妄想から来たものだ!きっと幻だ!そうだ!そうに違いない!
世の中そんなに甘くないのだ……!
ええい、くそっ!
俺の修行がまだまだ足りんのか!一から出直しだ……!
乱馬が行動を移そうと一歩踏み出した……その時。
良牙は人差し指を振りかざし、再び叫んだ。
「爆砕点穴ー!!」
「「「あっ!」」」
ぎゅうううっ。
良牙の声に再びなまえの体が動き、その腰に腕が回される。
ムースは眼鏡を掴み、まじまじとその様子を眺めており、乱馬は「あちゃー」とぼやきながら目元を手で覆った。
「……なまえ、さ、ん……?」
「あれー?どうしたのかな……」
絞り出した良牙の声はなまえには届かず、勝手に動く自身の体になまえは首を傾げながら良牙から離れた。
両手や体のあちこちを見るも、別段変わった様子もないのでなまえには訳がわからない。
抱き締められた当人は、二度の同じ出来事にワナワナと奮えだした。
い、一度ならず二度も!!?!?
こ、これは現実なのか!?どうなんだ!?
い、いや、幻覚に惑わされてはならん!修行だ!修行に行くんだ!!!
良牙はまた人差し指を振りかざした。
「爆砕点穴ー!」ぎゅっ。
「爆砕点穴!!?」ぎゅっ。
「爆砕点穴!!!」ぎゅっ。
「ばーくーさーいーてーんーけーつううう!!!!!」
ぎゅううう!!!!!
「何回やっとるんだ、おまいは!!」
ぶぎゅる。
怒りをあらわにした乱馬が両足で良牙の頭を踏みつけると、勢いのあまり良牙は地面に突っ伏した。
しかし良牙は感動で痛みを感じていないのか、滝のような涙を流しつつおかしなテンションになっている。
はあああああ!これは、これは、
夢 で は な い っ っ ! ! !
あの柔らかな感触……ほんのり香った甘い匂い……あれは紛れもなく女の子!そして……、
なまえ さ ん の も の っ っ ! ! !
「我が青春、最高なりーっ!!!」
がばっと体を起こすと大声で良牙は、鼻息荒くなまえに近づいた。
ギラギラとした眼光になまえが怯む。
「り、良牙くん!?」
「なまえさん!君の熱い気持ちしかと受け止めた!」
「え?」
「二人きりになれるところへ行こう!!!」
ぐわしっと肩を掴む良牙の力はすごいもので、その勢いと力の強さになまえの背中に冷や汗が流れる。
そんな二人のやり取りを眼鏡に手を添えて唖然と眺めていたムースは、やっと合点がいったようでわあわあと慌てだした。
「そうだか!おらの暗示は良牙の《爆砕点穴》でかかっちまっとるな!?」
「っわ!」
ぎゅっ。
《爆砕点穴》
そのフレーズに反応して良牙からムースの元へなまえが駆けていき、良牙と同じように今度はムースが抱き締められた。
訳のわからないなまえは、どうして先程から良牙やムースを抱き締めているのか見当もつかない。
そんななまえの気持ちなどお構いなしに、ムースは
「……お、おらは幸せもんじゃあ……」
と、なまえの背に腕を回してじーんと感動しており、良牙は良牙でなまえの行動に
「な!なまえさあああんっ!!」
と、天国から地獄に落とされたような顔をして固まっていた。