ある日の放課後物語。
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「肉まんいっぱいだな……」
今すぐ食べたい衝動を堪えるあなた。家はすぐそこです。
角を曲がろうとしたとき、道でうずくまっている何かが視界に入りました。
「ぐわっぐわー!」
白いチャイナ服を引き摺ってこちらへ近寄ってくるのは、服と同じ白いアヒルです。
頭の上に眼鏡を乗せた見覚えのあるそのアヒルに、あなたは声をかけました。
「ムース?」
「ぐわ!」
「水かぶっちゃったの?良かったら家においで。お風呂入ってったら?」
「ぐわわっ!」
白いアヒルは水を被ってしまったムースでした。
アヒル……もといムースは、あなたの申し出が嬉しいようで、どうにか喜びを表現しようと翼をバタバタさせました。
「……助かっただ」
「戻れてよかったね」
曲がり角から家は近く、ムースはすぐに元の姿に戻れました。ムースは水を被るとアヒルになるという特異体質の持ち主です。
「あのばあさんはどうにかならんもんかのう……」
「あぁ、あの家の前で水撒きしてるお婆さん」
「そうじゃ。にしてもなまえに会うて良かっただ。謝謝」
「気にしないで」
あなたの家のリビングで律儀に頭を下げるムースに、あなたは微笑みます。
そしてムースがシャワーを浴びている間に準備した温かいお茶をムースに渡しました。
「おお……すまんな」
受け取ったムースは、お茶を飲んでほっこりしています。
「ねぇムース、お腹空いてない?」
「む?そうじゃの、空いておるが……なぜじゃ?」
「さっきシャンプーに会ってね、肉まん貰ったの。たくさんあって食べきれなくて」
そう言ってあなたは先ほどシャンプーからもらった肉まんの入った紙袋をテーブルに置きました。
その紙袋を見たムースは目を見開きます。
「こ、これは!」
「ムースも知ってるの?」
眼鏡をかけて紙袋をまじまじと見るムースは、目を見開きました。
「見覚えのある紙袋じゃと思ったら……隅にある丸にムの印!やはりこの紙袋は、おらがなまえのために作ったもんじゃ!!」
「……え?」
「……はっ!」
自分のためというムースの言葉にあなたは驚きました。
自分の言葉に気付いたムースは、恥ずかしさで次の言葉がなかなか出ません。
「……え、えーと、その……、じゃ」
「お、お前さんが喜ぶんじゃなかろうかと思って……」
「その……、作ってみただ……」
噛みながらもムースは必死に言葉を紡ぎました。その顔は珍しく赤く染まっています。
その姿がとても嬉しくて、あなたは優しく微笑みました。
「そうだったんだ……ありがとう」
「う、うむ……」
「せっかくだからムースも一緒に食べよう?二人で食べた方がおいしいよ」
「……そうじゃな」
紙袋から肉まんを取り出し、ムースに差し出したあなた。ムースははにかみながら受け取ります。
「じゃがな、なまえ……」
「?」
「これは肉まんではなく、あんまんじゃ」
「そうだったの!?」
食べる前に気まずそうに話したムースでしたが、勘違いしていたことに思わず笑ったあなたを見てほっと胸を撫でました。
そして甘いあんまんと等しいほどの甘い時間を、二人は過ごしたそうです。
END.
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ムース落ち!
なぜシャンプーがあんまんの入った紙袋を持っていたかというと、コロンが肉まんを入れるために置いていた紙袋と、ムースがあんまんを入れた紙袋が同じものだったからです。
なのでムースは印をつけたのですが、シャンプーはそこまで見ていませんでした。
持ち出された紙袋に気付いたムースはシャンプーを追い掛けるものの、その先で水を被ってしまった……そんな流れです。
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