中編:もしも本命には奥手だったら
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「それでいつ終わるのだ」
「さぁね。出来たら渡すね」
そう言ってなまえはピン札の一万円を封筒に入れ、ポーチに入れると更にバッグにしまった。
写真を見てみるとなびきがいいのを撮ってくれているし、種類を増やしてもよさそう……そう考えながら。
なまえの様子を眺めたあと九能はまた顎に手を添え、しばらく空を見つめたあと口を開いた。
「……そうか」
九能は立ち上がると椅子を引いて深く腰掛けると長い足を組んだ。
それと同時に小さな機械音がプリントアウトの終了を知らせる。
規則正しい機械音が止まり、パソコン室はしんと静まり返った。聞こえるのは外からの文化祭らしい賑やかな声だが、窓は閉めきられているのでそれは微々たるもの。
九能の一連の流れを見ていたなまえは口を開く。
「戻らないの?」
「……どこに?」
どこにって、こっちが聞いたんだけど……。
えーと、友達のところとか、クラスとか……剣道部のとことか…?
「どこにどういようと僕の勝手だ」
「……え、」
ここにいるつもり?
パソコン室を借りている立場としては追い出すにも追い出せないし……いや、追い出してもいいのだけれど。
というよりは一万円をもらってブロマイドを渡してない手前、追い出すのに気が引けるというのが正直なところ。
一人で作業した方がはかどるのは目にみえているが、どうしたもんか……。
言葉につまらせる様子を気にもせず、九能はなまえをじっと見つめたままこう言った。
なぜ用もない僕がここ居座るのか考えているのだろう?
「それよ、なんで?」
「理由などない」
「……はぁ?」
思いもよらぬ言葉になまえの動きが一瞬止まった。
何言ってんだ、コイツ。自分で聞いておいてそんなのないだって?
「意味わかんないんだけど」
「そうだな」
「そうだなって、あのね……」
「……僕がここにいるのは迷惑か?」
「だから、そーいうんじゃなくて」
斜め上をいく返答になまえは頭を悩ませた。どう話したところでここから出る気はないらしい。
やっぱりブロマイド待ち、……とか?
一番答えに近いのかもしれないけど、本当のところはわからない。面倒になったなまえは考えるのを放棄した。
ここで時間を取られたら写真の仕上がりが遅くなってしまうのだ。
「……わかった。いてもいいから邪魔しないでね」
「邪魔などせん」
なまえからの言葉に少しむっとした表情を見せた九能。
しないと言ったらしない。すると言えばする、九能とはそういう男だ。
内面がわかるからこそ、そのむっとした表情は不機嫌というよりもいじけたように見えたなまえだったが口にはしなかった。
仏頂面のまま九能はどこから取り出したのか《おさげの女ブロマイド集》と書かれたアルバムを広げていた。
そのブロマイドのほとんどはなまえとなびきが撮って九能に売り付けたものだ。
その姿はいつも教室で見る光景と重なるが、やはりここから出ていく気はないらしい。
なまえは軽くため息をつくとパソコンに体を向け、慣れた手つきでマウスを動かした。
二人の会話は途切れたものの、静寂なパソコン室に再び規則正しい機械音が響きだす。
To be continued...
-----
やっと九能ちゃん登場です!お待たせしました!変態は少ないと思います。