中編:もしも本命には奥手だったら
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《次はエントリーナンバー3番――》
外の賑やかな喧騒とはうってかわって、なまえはパソコン室にいた。
デジカメのデータをブロマイド化させる作業をするためだ。
グラウンドの楽屋を出たあと、なびきはミスコンの撮影係をなまえは現像係と仕事を分担した。効率のいいやり方である。
ちなみにパソコン部の部員たちは製作した動画を視聴覚室で放映するようで今は不在だ。
「たくさん撮れたなー……」
ぽつりとなまえは呟いた。
デジカメのデータを取り込んだパソコンの画面には、先程撮ったらんまの写真がたくさん並んでいる。
同時進行で隣のパソコンではあかねのデータの読み込みが始まった。
なまえはらんまとあかね、二人の写真を大量に現像しようと意気込んでおり、その目はギラギラと輝いている。
「よしっ」
プリンターをセットし指定した写真の印刷に入る。
クリックするだけで印刷スタートだ。機械らしい一定のリズムで写真が刷り上がっていく。
なまえは席を立ち隣のパソコン台に移ると、らんまのデータと同様にあかねの写真を選別していった。
《優勝は……エントリーナンバー6番、天道あかねさんです!》
外から一段と大きな歓声が聞こえた。
あかねちゃんが優勝か……。
あかねとらんまの一騎討ちだろうと考えてはいたけれど、《ミスコン》ならばあかねに軍配が上がるのは普通なのかもしれない。
他校や一般の人ならともかく、らんまの本当の姿を知らない人は九能以外にいないのだ。
ぼんやりと考えつつなまえは直に届くであろうデータを待ちながら、印刷を終えた写真を選別をしていた。
「みょうじなまえはいるか」
「ん?」
ガラッと戸が開けられたと同時に名前を呼ぶ声に反応したなまえが顔をあげる。
そこには少し前までグラウンドで人目を気にせず、あかねとらんまの応援に励んでいた九能帯刀の姿が。
「九能ちゃん?どうしたの?」
「天道なびきからだ」
「なびきから?」
入ってきたときの勢いとは裏腹に丁寧に扉を閉め、九能はなまえの方へ近づいていく。
いつもの剣道着に天道あかねファンクラブ会長と書かれた襷を掛け、頭にハチマキを巻いたその姿からは、大いにミスコンを楽しんだ様子が伺える。
九能はなまえが座っているパソコン台の側まで来ると、懐からケースに入ったSDカードを差し出した。
「もしかしてミスコンのデータ?」
「そこまでは知らん。お前に渡すよう言われたからな」
「……ふーん?」
なまえがSDカードを受け取ったのを確認すると、ハチマキと襷を取って綺麗に畳み、懐にしまった九能はなまえの隣の机に軽く腰掛けた。
手持ち無沙汰なのかその腕はがっちりと組まれ、ほどなくして足も組まれた。
口を開かねばその仕草は様になっており、内面を知らねばイケメンと持て囃される部類だ。
しかしなまえは九能の中身も充分知っているので隣にどう座ろうとお構いなし。
用は済んだはずだけど出ていかないのかな。
気になったなまえだったが、受け取ったSDカードをパソコンに取り込んだ。
画面に映し出されたのは、舞台裏とは違う表情を見せているあかねやらんまの写真だった。
間違いなくなびきが撮った写真のデータで、私たちのSDカードだ。
ミスコンの写真だとわかるとなまえの販売意欲に火がつく。
いくつかをまた選別し、再び印刷を始めようとなまえはプリンターに用紙をセットした。
「お前はしばらくここにいるのか?」
「うん。作業中だからね」
「ふむ」
パソコンの画面とにらめっこするなまえをチラリと見ながら九能は顎に手を添えた。
九能ちゃんこそいつまでいるのよ、そう思ったなまえだったが構わず作業を続ける。
印刷ボタンを押すと再びプリンターが規則正しく動き出した。パソコンの画面には印刷部数がカウントされてゆく。
「……もしかして出来立てのあかねちゃんのブロマイド待ってる?」
「な!今なんと!?」
「あかねちゃんのブロマイド待ってる?って……」
「なにいいい!!?!?」
ガタッと立ち上がった九能はなまえ越しにパソコンの画面を覗きこんだ。
そして稼働しているプリンターから出てきた写真を手にすると、画面と写真を交互に見て、九能は鼻息を荒くした。
「こ、これはミスコンのててて天道あかねとっ、おさげの女の写真ではないかっっ!!!!!」
「そうだけど」
「みょうじなまえ、でかした!褒めてやろう!いくらだ!!」
「何様ー……3枚二千五百円、コンプリートなら一万円よ!」
「買った!!!」
ダアアアンッと、勢いよくお金を机に置き、更にどこから取り出したのか九能は日の丸の扇を広げて高らかに笑った。
一方のなまえは早速得た収入に喜びを隠さず、両手で掴んだ一万円をうっとりと眺めた。
喜びは別のものだが互いに幸せそうな顔をしており、明らかに浮かれている二人。
今一度まじまじと画面を見つめたあと扇をしまった九能は、再び同じ場所に腰掛けた。