中編:もしも本命には奥手だったら
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おさげの女ー!天道あかねー!」
「相変わらずね、九能ちゃん」
「ホントね」
校庭から聞こえる級友の声に窓から外を覗いた。
いつも目にする光景なので特にこれといった感情はない。
いとこのなびきが呆れながらも呟いたその一言に同意した。
「そういえば、今度文化祭でミスコンあるじゃない。あかねちゃん出るの?」
「さーね」
あかねはなびきの妹で、風林館高校で知らない者はいない有名人。
変態との異名をとる九能帯刀に交際を迫られたり、九能だけでなく男子生徒の多くも隙あらば彼女との交際を狙っていて、言うならば学校のマドンナ的存在なのだ。
そんな彼女がより一層目立つ存在となったのには許嫁の早乙女乱馬が出てきたからか。
障害があればあるほどその存在を手に入れたいと思うのは人の性かもしれない。しかしながら九能が乱馬に破れたことにより多くの男子はその身を引いたが、やはりあかねは気になる存在であり恋愛感情は抑えつつも、まるでテレビの中のアイドル的存在に移行しつつもある。
それを裏付けるように密かに「天道あかねファンクラブ」なるものが存在し、日に日に会員は増えていっているのだとか。
そんな彼女が文化祭のミスコンに出るとあらば、優勝はほぼ間違いない。
「もし出るんだったら舞台裏の密着しちゃおーかしら。なまえもくるでしょ?」
「もちろん!あかねちゃんのミスコンブロマイドは押さえなきゃね~」
二人して顔を見合わせ、にっと笑った。
なびきとなまえはとても気が合い、お互いの考えていることは言わなくてもわかっているというほどだ。
二人の関係は友人ではなくいとこ。
同い年で家も近いため、幼い頃から一緒に育った故に似た者同士になってしまったのか、その辺は二人しか知らない。
「舞台裏ブロマイドだと……5枚三千円ってとこかな」
「そうね。まーミスコンっていうプレミアが付くからもう少し上乗せでもいーと思うのよね」
「でも五千円とかだと逆に厳しいじゃない?」
「それなら……、」
なびきはどこから取り出したのかわからないが電卓を軽快に押し、その電子部分に出た数字を見せた。
そこには無機質な黒で2,500の文字。
そして反対の手を電卓の横に三本の指を強調して並べた。
「どう?これなら文化祭のあとでも買いやすいわ」
「3枚、二千五百円…。よし、決まり!文化祭過ぎたら3枚二千円にしてもいいわね」
それでも黒字よ。
そう続いた言葉に二人はにやりと口角を上げた。
文化祭は《祭》なのだ。財布の紐が緩むこの日は見逃せない。少しくらい上乗せしても《祭》効果で変に思われることもないのだ。
「あと、いーこと思い付いちゃった」
指を数えては広げ、数えては広げと動かしていたなびきの手が止まった。
上がっていた口角が更に上がる。
いやに怖いその笑みに初めて見た者は恐れをなすだろうが、なまえは目を輝かせ、わくわくとしながらその続きを急かした。
「なに?」
「3枚一組のセットを5種作ってまとめて販売するっていーんじゃない?」
「5種15枚ね。そしたら……一万円ってとこ?」
「ふふ、当たり」
少しずつ稼ぐと言うよりは大胆に稼ごうとでもいうのか、なびきは満面の笑顔で電卓を叩いている。
真っ先に購入するであろう人物を思い浮かべながら、もう一度窓の外を覗いた。
必死にあかねとおさげの女を追い回していたその人物は二人から蹴りを食らったようで、お決まりのポーズで地面に伏している。
「九能ちゃんって見てて飽きないよね」
「見てる分にはね」
なびきもなまえと同じく、再び窓の外を覗いた。
更におさげの女から蹴りをくらっている九能なのだが、突如おさげの女があかねの後ろに隠れて震え出した。
恐らく「おさげの女に踏まれることすら愛おしい……」などと、ど変態な言葉を言ったからに違いない。
「ねー、らんまくんもミスコン出ないかな」
「そうね。らんまくんが出てくれるともっといい商売になるわ」
頬杖を付きながら窓の外の様子を眺め出したなびきを一瞥して、なまえは腕を組んだ。
外にいるおさげの女はあかねの許嫁の早乙女乱馬であり、彼は水を被ると女になってしまうという特異体質を持っている。
乱馬とわかっていながらも女の姿をしたらんまのブロマイドは、あかねと同じくらい男子生徒に人気なのだ。
仮に彼も……いや彼女も?ミスコンに出ると決まったならば文化祭もより一層盛り上がるだろうし、なにより二人にとっては稼げるまたとないチャンスである。
「だけど簡単には出てくれないよねー。なんか特典っていうか、らんまくんの気を引くようなことしないと」
「問題はそこよね。まぁらんまくんのブロマイドは普通の写真でも割と人気だから、ミスコンの写真撮れたらラッキーくらいのスタンスでいきましょ」
「そーね。あー!文化祭が楽しみ!」
なまえは組んでいた腕を頭上へ伸ばし、大きく伸びをした。
その様子を横目でチラリと見たなびきの顔は、先程と同じような含んだ笑顔だったのをなまえは知らない。
To be continued...
-----
バレンタインの設定と同じです。いとこもお金大好き。
九能ちゃんと絡んでなくて申し訳ない…。