中編:交換日記と幽霊。
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{―――――ってことがあったんですよ}
場所は変わって一年F組。
例のごとく昼休みに九能がなまえの元へ交換日記を届けたあと、幽霊〈なまえ〉が姿を現し、自分が見た事のあらましを語った。
九能となびき、二人の掛け合いを姿を隠して見ていた幽霊〈なまえ〉は語り終えると、なびきという脅威の存在に怯えだした。
それを聞いていたお馴染みのメンバー――なまえ、乱馬、あかね、右京――は幽霊〈なまえ〉の姿を見て苦笑いする他なかった。
今までなびきに振り回されたことがあるだけに、今回の件にはドンマイと言うしかないのだ。
「なびきか~~」
「手強い相手やわ」
{た、確かにお金儲けはすごかったです}
乱馬はため息を吐きながら遠くを見る。一番の被害者は彼なのかもしれない。
賛同する右京に幽霊〈なまえ〉はうんうんと頷く。
「そっちなの?」
会話のやり取りよりもお金の方?となまえは思うも、話はそのまま進んでいく。
「なびきお姉ちゃん、貯金が趣味だもんね」
「貯金っつーより荒稼ぎだろ」
「あはは、言えてんな」
ケラケラと笑う右京に対して驚いた様子の幽霊〈なまえ〉は口をパクパクさせたあと、声をしぼりだした。
{あの方はあかねさんのお姉さんなんですか!}
「そう。って言ってもあたしとは正反対の性格かなー」
あかねの言葉に幽霊〈なまえ〉を除く全員が頷く。
あかねは誰にでも優しく分け隔てなく接する心優しい性格だが、なびきは頭の回転が早く思ったことは口にするさっぱりとした性格だ。
そしてお金のこととなると人一倍、いや百倍はしつこい。
特に乱馬は今までのなびきから受けた苦い記憶を思い出しては、手をわなわなと震わせていた。
「なびきのやつ、あの手この手で金を巻き上げてくっからな……」
「アンタだいぶお姉ちゃんに気に入られてるみたいだしねー」
「ちげーよ!利用されてんだよ俺は!あの金の亡者にな!!」
「誰が金の亡者ですって?」
「でぇっ!?」
「なびきお姉ちゃん!」
あかねとのやり取りの中で突如会話に入ってきたなびきの存在とその声に、乱馬は飛び上がって驚いた。
思いっきり油断していただけに、乱馬の心臓はバクバクと音をたてる。
そんな乱馬を見てにこにこ笑うなびきなのだが、只でさえ怖いというのに笑顔の裏では何を考えてるかわからない。なので余計怖い。
「誰が金の亡者だってー?乱馬くん」
「あ、あの、それは……その…………、」
「あら、いーのよ!別に間違っちゃいないし。それに《金の亡者》?いい響きじゃない。ねー?乱馬くん!」
「ひっ……!す、す、す"み"ま"せ"ん"て"し"た"……」
なびきの口から飛び出る棘のある言葉が乱馬にドスドスと突き刺さる度に、乱馬は冷や汗をダラダラ流し
「(当分このネタで揺すられるな……)」
と今の状況と未来の自分を思うと、なびきに逆らうことは出来ないのである。
見兼ねたあかねが「お姉ちゃん!そのくらいにしてあげなよ!」と助け船を出したところで、なびきの攻撃……否、口撃はすっぱりと終わった。
落ち着いたところで、そのようすを見ていた右京は口を開く。
「で、なびきは何の用なん?」
「そんなに威嚇しないでよー、噂の幽霊ちゃんを見にきただけ」
そう言ってなびきは幽霊〈なまえ〉をチラリと一瞥した。
突然やってきたなびきに驚いたあまり姿を隠せなかった〈なまえ〉は咄嗟になまえの背後に隠れていたのだが、視線を向けてきたなびきとバッチリ目が合いドキドキしながらゴクリと喉をならす。
「やっぱり遠くで見るより近くで見た方がいーわね。かわいい顔してるじゃない」
{……っ、}
「な、なびきさん……、」
にこにこと笑顔を浮かべながらなまえに近付き、その後ろを覗き込もうとするなびき。
そんな彼女に乱馬は首をかしげながら話し掛けた。
「ってかおめー、別にここまで来なくてもおめーのクラスで見れっだろ?」
「それもそーやな」
「確かお姉ちゃん、隣の席が九能先輩だって言ってたよね?」
乱馬の問いにその場にいた全員が頷き、なびきならば知っていて当然なのではというあかねの言葉に彼女は首を振った。
「それがねー、見たことないのよ」
「え?」
「なーんか姿を見せたくない訳があるみたいでね」
交換日記がなまえの手元にあるときは当然のように姿を見せていた幽霊〈なまえ〉を知っているだけに、なびきのその言葉は乱馬たちには意外なものだった。
そして思い出したかのようになまえが口を開く。
「そういえば九能先輩の前では姿を隠してるって言ってたよね」
「そうなの?」
なびきだけでなくその場にいる全員から視線を浴びせられる幽霊〈なまえ〉は、しばらく考えるように俯かせていた顔を上げポツリポツリと話し出した。
{……交換日記をしたかった彼と九能さんが似ているんですが、この通り、私は幽霊なので九能さんにお姿をお見せするのは恥ずかしくて、、、なので陰ながら拝見しています……}
「……ふーん。だから九能ちゃんの側では見なかったのねー」
恋する乙女の心境をなびきは理解したのだろうか。
あっさりと納得したような素振りを見せただけに幽霊〈なまえ〉は一瞬怯むも、慌てて念押しをする。
{あ、あの、これは九能さんには秘密でお願いします……!もし九能さんに幽霊が取り憑いている交換日記を持っているなんてバレてしまって、拒絶されたり交換日記をしていただけなくなったら……私、もう二度と成仏出来ないような気がするんです……っ!}
「なびきお姉ちゃん、あたしからもお願いっ!」
「私も、お願いします!」
「うちからもや」
「しゃーねぇなぁ。俺からも頼むぜ」
矢継ぎ早に口を揃えて同じことを言う五人に、なびきは近くの席に腰掛け頬杖をつくと再び五人を見た。
そして一呼吸置くとその薄い唇がゆっくりと開く。
「なぁに~~?もしかして疑ってるの?こう見えてもアタシ、口は堅い方よ?言うつもりはないわ」
{ほ、本当ですか!}
「なびきお姉ちゃん……!」
「なびきさん……!」
なまえたちがぱぁっと顔を明るくしたのも束の間、なびきは恐ろしいほどの満面の笑みを見せてこう言うのだ。
「だけど世の中そう甘くないのよ。その秘密を守るからには相応の対価をもらわないとね、幽霊の〈なまえ〉ちゃんっ?」
{……え?}
その数日後、なびきの自宅――天道道場が期間限定でお化け屋敷に変わり、幽霊〈なまえ〉はおばけ役(本物)をやらされるはめに。
本物の幽霊が出るらしいぞ!とお化け屋敷の噂はまたたく間に広がり、大繁盛!
そのお陰でなびきの懐は大いに潤ったのであった。
もちろん約束通り、幽霊〈なまえ〉のことをなびきの口から九能に話されることはない―――――とは言いきれない。
おまけ。
幽霊〈なまえ〉の協力者なため、必然的にお化け屋敷の運営に関わらされた乱馬、あかね、右京、なまえの四人。
「やっぱりなびきお姉ちゃんがそう簡単にいく訳ないわよね……」
「ね、思った以上だったよ……〈なまえ〉さん。おばけ役、お疲れ様……」
{ありがとうございます……。なびきさん、かなりヘビーですね……}
「ヘビーなもんかよ。俺たちも口答えでもすりゃぁ、他にも何かやらせられっぞ?!」
「あら~~?乱馬くん、何か言ったかしら?」
「ひっ……!(バシャッ)な、なーんか、わたし今、写真撮られたい気分なの、お姉さまぁーっ!」
「まー!そうなの!?じゃんじゃん撮って稼がせてもらうわよ、乱子ちゃん!」
「とほほ……」
「ほんま、なびきにゃ敵わんな……」
いろんな衣装を身に纏わされるらんまの姿に、苦笑いをしつつため息を吐く三人であった。
To be continued...
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幽霊ばかり目立ってすみません……っ!