中編:もしも本命には奥手だったら
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階段の踊り場で繰り広げられるその展開に、いつの間にか周りにはたくさんのギャラリーが出来ていた。
尻餅男に突き付けられた木刀。
それはなまえの後ろから頬の横を過ぎて伸びおり、その黒い木刀の持ち主をこの校内で知らぬものはいない。
尻餅男と同様に驚いたなまえは咄嗟に振り向く。
「九能ちゃん!?」
「な、何だテメー!」
やれー!九能!負けんじゃねぇぞ!
尻餅男と九能のやり取りにギャラリーが囃し立てる。
九能の鋭い眼光に怯んだ尻餅男は一歩後ろへ下がるも負けじと激を飛ばした。
そしてなまえの前に自ら出た九能は左手でなまえを庇い、右手は木刀を握っている。
「貴様こそ何だ!人に名を問う時は自分から名乗るのが礼儀だ!よし、僕から名乗ろう!!」
九能の迫力に押され口をパクパクさせたまま尻餅男はその場に固まってしまうも、それに気付くことなく九能はペラペラと語り始めた。
「風林館高校2年E組、九能帯刀。剣道部主将、人呼んで"風林館高校の青い雷"とは僕のこと!さぁ僕は名を名乗ったぞ。次はお前の番だ」
「な!?て、てめぇがどこのどいつだろうが、知ったこっちゃねぇ!関係ねぇやつは引っ込んでろ!」
我に返った尻餅男は九能目掛けて拳を振りかぶった。
両手で木刀を握った九能はゆるりと構え、一際鋭くなったその双眸で向かってくる男を捉える。
「関係あってこそ首を突っ込んどるのがわからんのか!」
「……っ!!?」
突き突き突き突き突き突き突き突き突きーーーっっ!!!!!
目にも止まらぬ速さで尻餅男に突きを何度もくらわせた九能。
渾身の突きを受けた尻餅男は再び尻餅をつくことになり、服はボロボロになってしまった。
九能の圧勝にギャラリーはわっとわき、その強さを目の当たりにした尻餅男とその友人らは足をガクガクさせている。
「……彼女は僕の連れだ。僕の断りもなしに連れていこうというのか?」
「「「ひっ!……す、す、すみませんでしたー!!!」」」
ジロリと睨まれたことで更に肝を冷やした三人は脱兎のごとくその場を走り去っていった。
三人が消えた方を見ながら九能は鼻を鳴らす。
「ふん、たわいのない……。この僕が本気を出すまでもなかったな……はっはっはっは!!!」
肩を揺らして高笑いをする九能にチンピラとの喧嘩を見ていたギャラリーは、はぁぁとため息をつかざるを得なかった。
先程まではヒーローのような格好よさだったというのに、性格は非常に残念。みながそう思った瞬間だった。
そしてあっという間にギャラリーは散り散りになり、何事もなかったかのように文化祭が再び始まる。
気が済むまで笑った九能はなまえの元へ近寄ると少し満足げな表情をしながら口を開いた。
「みょうじなまえ、大丈夫か?」
「あ、うん。ごめんね、巻き込んじゃって」
申し訳なさそうに笑ったなまえに九能は一瞬眉を寄せると顔をそらした。
「気にするな。僕が勝手にしたことだ」
九能の行動が「助けてやったぞ」という風に見えたなまえは、どこまでもプライドの高いこと。そう思った。
つっけんどんな物言いの九能だが、尻餅男に向けていた鋭い瞳から優しいものへ変わったのになまえは気付いていない。
しかし少し見る目が変わったのと助けてもらったことは事実。
「九能ちゃん……、ありがとう」
「……うむ」
なまえから紡がれたその言葉に再び九能は満足げに口角を上げるのだが、顔を反らしたせいでこれもなまえに気付かれることはなかった。
To be continued...
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九能ちゃん大活躍!?
ちなみに突き突き突きー!は、九能ちゃんだけに九回言わせてみました(笑)