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今日の猫飯店は客が少ない。
昼飯時を過ぎてからというもの客足は遠退き、来客はあっても学生が数人来る程度だ。
店の電話も全く鳴らず、出前にすら出ていない。
ここ数日忙しくててんてこ舞いじゃったというのに、、こんなに暇なのはひさしぶりじゃ。
「ヒマじゃ~」
「無駄口を叩くでないぞ、ムース。それが終わったら次はこっちじゃ」
「……おらも遊びに行きたいだ……、」
おばばに聞こえぬよう小さな声で呟いた。
普段出来ないところの掃除をしたり、道具の修理をするにしてもなかなか時間は進まない。
シャンプーはとっくの昔にどっかに出掛けたし(おそらくはあの乱馬のところか)、おばばはおらには指図するものの雑誌を広げてのんびりとしておる。
あーーーひまじゃ。
おらもシャンプーのように出掛けたいもんじゃ。……が、雇われておる分自由はきかん。
こんなにヒマならばなまえとデートをしたり話したりしたいだ……。
ここ数日の忙しさでほとんど会話を出来ておらん恋人を想い、おらは少し切なくなった。
なまえ……、どうしてるだか……。
「こんにちはー」
ガラガラガラと戸が開き、まさにいま想いを馳せていた彼女ーーなまえが店に入ってきた。
たたたっと駆け寄る。
「なまえ!会いに来てくれたんか!?」
「うん。忙しかった?」
「いーや。なまえのために貸切で用意をしてたところじゃ!」
「そうなんだ?」
ガラガラの店内を見渡したなまえには冗談が通じたようで、ふふふっ、と口許を隠して笑うなまえの姿につられておらも笑った。
ひさしぶりじゃ~この感じ!
ぐっと拳を握っておらはささやかな幸せを噛み締めたーー
「ムース、ちょっとこっちへ来い」
ーーが、おばばの一言で現実に引き戻される。
「な、なんじゃ……まだ何かやることがあるのか?」
「当たり前じゃ。しっかり働け」
そういっておばばは四つ折の小さな紙をおらに突き出した。
なんじゃ?その紙を広げると店で使っている食材やらの名前がイー、アー、サン、スー、、、今度は使いっぱしりか。
やっとなまえに会えたというのに……!
「なまえ」
「はい。何でしょう?」
「来てすぐで悪いが、今日は帰ってくれんか。この通り客も来ない。早めの店仕舞いさ」
「……わ、わかりました」
ぐぬぬぬ、とおらが唸っておる横でおばばはなまえにそう言った。
さっきまでの明るい顔がみるみる暗くなるなまえに、おらは「今すぐ来た客を突き返すだか!?」そう口にしようとした瞬間、
「ムース。それとは別に使いを頼むが、よいか?」
「っぐ、まだ何かやるだか!?」
「あぁ」
ーーなまえを家まで送り届ける使いを、な。
「っ、!?」
思わぬ物言いにおらの言葉は詰まった。なまえも同じように驚いた顔をしておる。
おらたちの顔を見ておばばはにやりと笑い、更に続けた。
「一通り掃除も済んだことじゃ。お前さんもたまには出掛けて来い」
「い、いんか……?」
「言ったではないか。今日はもう店仕舞いさ。わしの気が変わらん内に出るんじゃな」
「つ、使い!行ってくるだ!なまえ、行くぞ!」
おばばからのGOサインにおらはなまえの手を取り、店の戸まで向かった。謝謝、さるの干物!
二人きりになれるこのチャンス逃すまい!
「コロンさん、ありがとうございます!」
「気にするでない」
ぐいぐいとおらに手を引かれたままのなまえは、振り向き様そう叫んでいた。律儀なやつじゃ。
退屈だった時間になまえが来たことで光がさした。
浮き足立つのを抑えながらおらたちは戸を開け、店をあとにした。