響良牙
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ーー三日後、風林館高校で待つ。
首を洗って待ってろーー。
そんな手紙が届いてから十日。
ようやく手紙の送り主が約束の場所である高校のグランドに現れた。
「早乙女乱馬はどこだ!!」
下校中の男子生徒の胸ぐらを掴み、くわっと顔を変えて手紙の主は怒号をあげている。揺さぶられている男子生徒の腕にはミサンガが付いてるが…めちゃくちゃ揺れてんなぁおい。どんだけ揺さぶるんだよ良牙。おー怖っ。
俺はそんな様子を1年F組の窓から頬杖を付いて眺めていた。
良牙の髪は乱れ服もボロボロ。修業でボロボロなのか、どんだけ迷子になってボロボロなのか。
と、考える訳もねぇ。どーせ迷子になったせいだろ。
ふぅ、とため息を一つ。
奴は手当たり次第に生徒にわめき散らしている。迷惑極まりねぇ。つーか俺探してんだよな。
なんで俺がこうまでボーッと良牙を眺めているかというと、奴の遅刻癖のせいだ。
先にも言ったが、決闘は手紙が届いてから三日後の約束のはずだった。
しかしボロボロのバンダナを頭に巻く良牙は十日も遅れて来やがった。
イライラ、まだかまだか。ソワソワ。
なーーんてなることはなく、奴が遅刻するなんてのは予想の範囲内だ。
同封されていた写真から推測して、あと三日は遅くなるだろうと思ってただけに正直まぁ良く早く来れたもんだと思ったりもする。
こんだけ待たされてんだ。ちったぁこっちの身にもなってみやがれ。
「ねぇ乱馬、」
……。なんか寸胴女の声が聞こえた気がするが、気にしねぇ。
えーと、もし手紙をくれた奴が普通の相手だったらこう思うことなんか全くねぇーけど、極度の方向音痴で短気な豚野郎こと響良牙の行動や思考を思案すれば遅刻するなんて考えんのは朝飯前だ。
簡単に言うとお約束ってヤツ。
「ねぇ乱馬ってば」
はいはい、あかね、ちょっと待てっつーの。
ま、という訳で手紙が来てからどーせその内現れっだろ。って思っていたから、俺はーーーー
「乱んん馬ぁぁああ!!!」
「でぇっ!?!?」
ーーーー咄嗟に後ろに跳ね退けた。
ドゴォッ。
物凄い音と共に良牙は俺がいたところをめがけて番傘を突き立てていた。
ガラガラ……と小さく砕けたコンクリートが教室に落ちていく。
「だからさっきから呼んでたのに」
あかねはフンッと鼻を鳴らして教室の前の方へ歩いていき、見慣れた後ろ姿に声をかけようとしている。
っ、やっべー。あかねに気ぃ取られた隙に良牙のヤツ、グラウンドから跳んで来やがった。
「よ、よぉ良牙。久しぶりだな」
ヘラッと笑って見せると、良牙はギッと眼光鋭く俺を見据えた。
「貴様!俺が来ているとわかっていながら窓際でお空の観察か!?」
「そーそ!今日は青空が綺麗だったからよっ!たまにゃ眺めねーとな!」
「なああんだーーとおおおお!?!?余裕ぶっこいてんのも今の内だぞ、乱馬!」
「へッ、余裕の大安売りしてやらぁ!!」
「その無駄口、叩けんようにしてやるッ!」
じりじりと間を取りつつ、互いにキュッと構えて飛びかかるーーその時だった。
「良牙ッッッ!!!」
凛とした声が俺たちの間合いに入り込んできた。
その声を聞いて良牙は
「は、はいっ!」
と驚きつつ焦るような表情を見せて返事をし、
「……へ?」
俺も俺で呆気を取られ声にならない声しか出なかった。
そして声を辿れば、先ほど見た後ろ姿ーー良牙の彼女・なまえが腕を組み仁王立ちしている。その隣には同じポーズをしたあかねの姿も。
なまえは俺たちを見つめたまま口を開く。
「良牙、乱馬、教室で喧嘩はダメでしょ?」
「喧嘩するんだったら外でしてちょーだいっ!」
あかねが続いてそう言った。
「し、しかし男には闘わなきゃならんときがあるんだぞ!!」
「そ、そうだ!男と男の闘いに女が口出しすんじゃねぇ!!」
二人の言葉を聞いた良牙は、先ほどまでの血気盛んな様子からは微塵も感じられないほどわたわたしつつそう答えた。
その良牙に援護するように俺も二人に反撃するも……。
「「はぁ?????」」
「「ひっ……!」」
いつか見たシャンプーのまるでゴミでも見るような冷たい視線、いやそれよりも凍てつく程の鋭い眼差しを浴びせられた。
途端になんだか寒気もしてきやがる。く、な、何なんだ…!
「ここは二人だけの教室じゃないの」
「そんなに喧嘩がしたけりゃ」
「「表でやってこーーーいっ!!!」」
どひゅーーーーんっ。
俺たちは二人の女子に蹴り飛ばされ、良牙が飛び込んできた窓から表に投げ出された。
……飛ばされながら冷静になる。
「良牙、最近なまえのヤツ怖くねぇか?」
「ひ、否定できん……。それにあかねさんも凄みが増しているというか……」
「「女って怖ぇな……」」
顔を見合せながら俺たちは身震いをしつつグラウンドに着地した。
そして1年F組の教室の窓を見上げる。
そこにはまるで俺たちを蹴り飛ばしたとは思えない、にこやかな笑みを浮かべてこちらに手を振る二人が見えた。
「あの笑顔、、」
「ほんっと女ってなに考えてっかわかんねぇーな」
「「やっぱ女って怖ぇ」」
互いに両腕を抱えて震える素振りをした。
それは俺と良牙の間に男の友情がしっかりと結ばれた瞬間だったと思う。
「とりあえず家帰ろうぜ」
戦意喪失した俺たちはとぼとぼとした足取りで天道道場へ向かった。迷子になられちゃ困るので良牙も一緒に。
「もー、乱馬ってば、良牙くんが来てるのに全っ然グラウンドに行かないんだからっ!」
「私は全く気付かなかったからあかねが良牙が来てるって教えてくれて助かったよ」
「いいのいいの!おかげでお邪魔虫は消えたから。さっ、がんばりましょ!」
俺たちが吹っ飛ばされたあとの教室であかねたちがそんなやり取りをしてるとは露知らず。俺たちは女なんてとぶつくさ文句を言っていた。…………九割方俺が言ってた気がする。
しかし俺たちは文句を言ったことを後悔することになる。少ーーしな。
というのもその日の夕方、家に帰ってきたあかねと遊びにきたなまえからプレゼントを渡されたからだ。そっぽを向きながらぶすっとした顔で渡してくるあかね、はにかみながら照れくさそうに良牙に渡すなまえ。
そのプレゼントはミサンガだった。
「おめーにしちゃ良く出来てんじゃねぇーか」
「おめーにしちゃってどういうことよ!」
「そーいうことでぃ」
ところどころほつれてるのか、変なところから糸が飛び出している。俺には赤い色で結ばれたよくわからん紐だが、まぁ結べねーこともねぇ。
「これを、俺に?」
「良牙にお守り作りたくて」
「……なまえっ!だ、だ、大事にするっっ!!」
チラリと横目で隣を見れば、まるで宝物を大事に扱うようにオレンジ色のミサンガを両手に乗せて感動でむせび泣く良牙が見えた。
そしてピンとくる。
そーか。家で作ってちゃ見られちまうから教室で作ってたんか。そりゃ追い出される訳だな。
一人納得しつつミサンガをぎゅっと優しく握った。
そして聞けばこのミサンガは利き脚に付けるといいらしい。俺と良牙は自分の利き脚に付けた。
なんでも勝負運が上がるんだとか。
俺ぁ実力と実践で強くなるタイプだと自負してるけど、まぁこーいうのがあってもいいんじゃねぇ?なんて思うよーになってんのは、ちょっと甘いんだろうか。
何に、なんて野暮なことには触れねぇが……おれはやっぱ女は怖ぇなって改めて思わされる。それは良牙も同じだったらしい。
いろんな感情を次から次に味合わせてくる女って、まじ怖ぇ。
それは彼女たち自身に感じている本質的な恐怖ではなく、いろんな出来事をまるでジェットコースターのように楽しさも嬉しさもスリルも感じさせてくれるもので、それを俺たちは茶化したように怖ぇなんて言ってみる。
つまりは惚れた弱み。
ってこったろう。……なんて、こんなこと考えさせてんのもアイツら女子か。あーあ、ほんと女って怖ぇーの。
喜ぶ彼女たちの笑顔を見え思わず口元が緩む。
そして俺と良牙の目があって互いに緩んだ頬を指摘するまであと少し。
END.
良牙夢とは…いろいろすみません( ;∀;)
ちなみにミサンガのイメージカラーです。色にも意味があるらしいです。
乱馬→赤。情熱・運動・勇気・恋愛。
良牙→橙。希望・友情・力強さ・笑顔。