負けられない闘い
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場所は変わって、天道道場。
闘いを終えたあと、乱馬と良牙は乱馬の友人たちによって天道道場へ運ばれた。
寝ている間に東風先生から手当てを受けた二人は、しばらくして目を覚ます。
あちこちに絆創膏やサージカルテープを引っ付けた二人は、一度は互いの顔を見たものの……闘いに勝利したものと、負けたものの心中は共に複雑だ。互いにかける言葉が見つからず、時間だけが流れていく。
「……いいのか、乱馬」
「今さら何言ってんだよ。男と男の約束だろ」
先に口を開いたのは良牙だった。互いの視線は交わらない。
普段なら「はっはっはー!俺の勝ちだ!」と高らかに笑って乱馬を見下すところだが、今回は事情が違う。
互いの気持ちを理解した上で、なまえを闘いの引き合いに出したのだ。
この勝負、負けた方はなまえのことを諦める。そういう約束だ。
変なところに気ぃ遣いやがってよ。
乱馬はちらりと良牙の横顔を盗み見た。ひどく真剣な面持ちをする良牙に、乱馬は軽く息を吐く。
いつもみてーに俺の勝ちだー!とかなんとか、わめいてる方が、まだましだな……。
乱馬は意を決して口を開いた。
「……おめーは、俺が唯一ライバルと認めてる男だぜ?そんだけの強さがあんだから、この先ずっとなまえのことしっかり守れよ」
「乱馬……」
「なまえのこと泣かせでもしたら、奪いに行くからな」
「……泣かせないよう努力する。俺はなまえさんを守り抜く。お前からも」
良牙の瞳には意志の強さが現れていた。決闘を決めたときも、拳を合わせたときも――いまも。
乱馬の瞳が、ほんの一瞬揺れた。
やっぱりコイツにはなまえのことじゃ敵わねーな。心のどこかではそうなるだろうと思っていたが……やっとけじめがついた。
良牙なら、なまえを任せられる。いや、なまえのことを思うなら良牙しかいねぇ。
すると乱馬は勢いよく立ち上がった。
驚いた良牙が乱馬を見上げるほんの一瞬の隙をついて、彼は自身の目元を乱暴に服の袖で拭う。相手に気取られる前にすることなど、火中天津甘栗拳を使う彼ならば、容易いことだった。
「次の勝負はぜってー負けねぇからな」
「俺も負けねぇ」
遅れて良牙も立ち上がると、ようやく二人の視線が交わる。乱馬と良牙は互いを健闘するように、軽く拳を合わせた。
「さーて、腹も減ったし、かすみさんの飯でも食いに行くかっ!」
「あ、待てっ!」
くるりと道場の扉の方を向くと、乱馬はそのまま良牙を置き去りにして駆けていった。それは近くになまえの気配を感じ、良牙に会わせてあげたいと、自分はお邪魔虫だから退散するべきだと思う、彼なりの不器用な優しさだった。
道場から出ると、気配で感じた通りなまえの姿を見付けた乱馬は「良牙は道場にいるぞ」と伝え、その場をあとにする。
幸せになれよ、なまえ。……俺、上手く笑えてたかな。