中編:恋した相手は。
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名前を見るだけでドキドキするって、かなり末期なのかもしれない。
放課後。
私はいつものようにマネージャーの仕事をしていた。
広げたノートには、土曜日に控えた試合のメンバーとポジションがびっしり。
その中には、最近良く書き込む名前ももちろんある。
始めの内は書くことなんて全然気にしてなかったのに。
ピンチヒッターとして来てくれて会話を重ねるようになって、その人柄に触れる内に自分の気持ちに気付いてしまった。
まさかあの早乙女くんと仲良くなるなんて思ってもなかったし。
あのとき助っ人として来てくれるまで、そんなこと考えてもいなかった。
――数ヵ月前の出来事を思い出す。
エースストライカーである二年の山下先輩が自転車でケガをしてしまって一週間後の試合に出れないと聞いたとき、私だけでなく部の全員が動揺した。
レギュラーメンバーが一人欠けたところで普通ならどうってことないことだろうけど、山下先輩の存在はかなり大きくて、サッカー部の絶対的エースだからこそ試合に出場出来ないっていうのはかなりのダメージだった。
そんな中、試合を五日後に控えた昼休み、たまたま用事があって部室に行ったとき居合わせたキャプテンから、助っ人を連れてくると聞いた。
かなりいい人材だぞ。
そう言って笑ったキャプテンに「誰ですか」って聞けば良かったと、あとから思った。
そのときは時間もなかったし放課後会えるならいーや、って考えちゃって。
放課後、私はキャプテンが連れてきた助っ人に目を丸くした。
『ピンチヒッターって早乙女くん!?』
『おーそうだぜ……って、えーっと……』
『私はマネージャーのみょうじなまえ、よろしくね』
『おう、よろしく』
そう言って笑った早乙女くんの笑顔は爽やかで、ほんの少しまぶしかった。
自然と差し出された手と握手をして笑ってみたけど、早乙女くんのようには笑えてなかったと思う。
――かなりいい人材だぞ。
あのときのキャプテンの言葉に、すごく納得した。
そうしてピンチヒッターを迎えた試合はかなりの好成績で、山下先輩がケガから復帰したあとも、早乙女くんは度々助っ人として来てくれるようになった。
試合だけでなく、放課後の練習にも。
友達から聞いていた通りの人懐っこさを見せた早乙女くんとは話すたびに仲良くなっていって、彼を異性として意識するようになるまで、そう時間はかからなかった。
全く関わることなんてないだろうと思っていた早乙女くん。
もっともっと色んなことを話したり笑ったりしたいな、なんて考えてみるけど《サッカー部》以外、ほとんど接点はない。
私はひとつため息を吐いてもう一度広げたノートを見た。
もっともっと色んなこと話したいって、欲張りだな。
迷惑だったらどうしよう。
考えても考えても、結局行き着く先は早乙女くんのことばかり。
会えない時間に想いはどんどん膨らんでいく。
To be continued...