中編:恋した相手は。
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早乙女乱馬。
風林館高校一と言われた九能先輩を倒した彼は、一躍有名人。
関わりがなくてもその名前を知らない者はいない。
「待てー!早乙女えええ!!!」
「だーれが待つかよっ!」
「ちぇええすとおおおっ!」
威勢のいい声に窓から外を見ると、校内の有名人が二人。
なにやら揉めているよう。
「またやってるわね、早乙女くんたち」
「九能先輩も飽きないよねー」
「ほーんと!」
ああして二人がケンカしているのは日常茶飯事で、風林館高校の名物と言っても過言ではない。
なまえは友人たちの声を聞きながら、二人の様子を眺めていた。
「(相変わらず足速いな……)」
早乙女くんの走る姿が、チャイナ服ではなく私が知るユニホーム姿とかぶった。
なんのユニホームかというと、それはサッカー部のもの。
マネージャーをしている私は、たまにピンチヒッターとして来てくれたときにその姿を見ることが出来るのだ。
実はストライプのユニホームを着る早乙女くんは、いつもの姿から二割増しの格好良さだと私は思っている。
きっとその姿を見たらみんな同じことを思うに違いない。
たまたま見た女の子たちは、遠目ながらキャーキャー黄色い声を上げていたし。
校内の人気者で格好良くて、運動神経も抜群で。
人懐っこい性格とその明るさに彼を慕う人は多い。
そんな目立つ存在だからこそ女の子たちは放っておかないし、あわよくば早乙女くんの隣に並びたいって思ってる子はたくさんいる。
……私もその内の一人だなんて、誰にも言えないけど。
「乱馬ー!アンタなにやってんのよ!今日日直でしょ!仕事しなさいよ!」
「わりー!あかね代わりにやっといてくれ!」
「なぁんであたしが!?」
早乙女くんの姿を目で追いかけていると、二つ隣のクラスから威勢のいい女の子の声が聞こえた。
あかねと呼ばれたその子も、風林館高校での有名人の一人。
かわいくて優しくて、早乙女くんと同じようにたくさんの人から慕われていて、いろんな男の子が夢中になっている存在。
そして、早乙女くんの許嫁。
早乙女くんを好きな女の子たちが一歩踏み出せないのは、彼女の存在がとっても大きい。
同じ屋根の下に暮らしていて、登下校もクラスも一緒……朝から晩まで早乙女くんと一緒の生活をしているのはみんなが知っていること。
二人の間に入れる隙なんてほとんどない。
……例外もいるみたいだけど。
そんなわけで早乙女くんを好きな女の子たちのほとんどは、ちょっと遠くから熱い視線を送っていて、いつか隣に、なぁんて淡い夢を見ている。
いつか。
本当にそんな日が来るのかなんて誰もわからないし、来ないかもしれない。
だけど好きって気持ちはどうすることも出来ない。
「……!」
天道さんと話し終えた早乙女くんと、ほんの一瞬――目が合った。
走りながらだったから気のせいかもしれないけど、目が合ったそのとき笑ってくれたような気もして。
私の存在に気付いてくれたんじゃないかって、都合のいいこと考えたりして。
本当はどうかわからない。
だけどその笑顔が私の胸をきゅっと締め付けたのは本当で。
「(……ずるい…)」
やっぱり、好きって気持ちはどうしようも出来ない。
許嫁がいても、校内の人気者だったとしても、この気持ちは止められない。
九能先輩に追いかけられていた早乙女くんは、風のような速さで校舎裏へと向かっていった。
To be continued...