中編:恋した相手は。
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ある土曜日の昼下がり。
風林館高校のサッカー部は公式試合に臨んでいた。
校内随一の運動神経を誇る、早乙女乱馬をピンチヒッターに迎えて。
「あっちへ回せっ!」
「っ、早乙女頼んだぜっ!」
「まかせと、けっ!」
強豪校と言われる対戦相手のディフェンダーをするりと交わし、乱馬は自分に回ってきたボールを器用に胸で受け止めた。
そしてゴール目掛けてキックをした、その直後。
ピーーーーーッ。
広いグラウンドにホイッスルがこだまするのと同時に、歓声がわっとわいた。
乱馬の放ったボールは見事にサッカーゴールのネットを揺らしている。
っしゃ!強豪校って言われてたところに勝ったぜ!
乱馬は最終ゴールを決めた喜びと勝利を手にしたことに心から喜んでいた。ぎゅっと握った拳を高く上げ、嬉しさを噛み締めているようだ。
逆転勝ちをした風林館高校の選手たちは、感極まってガッツポーズをする乱馬の元へ駆け寄った。
「やったな、乱馬!」
「お前ならやってくれるって信じてたぜ!」
「あのゴール痺れたぜー!」
色んな言葉をかけてくるメンバーから頭をぐしゃぐしゃと撫でられたり、撫で返したり、揉みくちゃにされながら俺はみんなと一緒に勝利を喜んだ。
前半に一点決められてから焦っちまったけど、後半に二点入れたことでなんとか勝ち越し。
その二点の内の一点が俺の得点だ。
……ってゆーと格好良く聞こえるが、時間ギリギリで回ってきたボールを半ばやけくそに蹴ったのが運良く入ったわけで、俺もかなり驚いた。
そりゃガッツポーズもしたくなるぜ。
試合が終わって俺はベンチに腰を降ろした。
今回は最初から飛ばしたからな、喉カラカラだっての。
そんな俺の様子に気付いたのか、サッカー部のマネージャーのなまえが声をかけてきた。
「早乙女くん、ナイスプレイ!今日もピンチヒッターありがとう!」
「んな、たいしたことしてねぇーって」
いや、正直なところたいしたことしてっけどな。はっはっは!
……とは言えねぇが、なまえが差し出してきたスポーツドリンクとマフラータオルを有り難く受けとった。
「あ~~ッ!生き返る~~!!」
「お疲れさま。早乙女くんがゴール決めてくれたお陰で準決勝進出だね」
「ギリギリでシュート決まって良かったぜ」
ごくごくとドリンクを飲んで一息。
今回の試合はサッカー部にとって結構大事な試合みてーで、なんとか優勝したいらしい。
それで俺はピンチヒッターで呼ばれたって訳だ。
「正直ハラハラした試合だったけど、勝って良かったよ」
「おめー拝むようにプレー見てたしな」
がしがしとタオルで顔と髪を拭いながらそう言った。
試合中にチラッと見たベンチ内で、なまえはまるで神様~っ!みてーに拝むようにこっちを見ていた。
ありゃーピッチから見たら目立つ方だぜ。
なーんて、なまえの必死な姿を思い出してぷ、と吹き出してしまった。
「そ、そんな笑わなくてもっ」
「ははっ、わりーわりぃ」
二人で笑っていると、どこからか早乙女ー!と俺を呼ぶ声が聞こえた。
俺はなまえにドリンクの礼をもう一回言うと、呼ばれた方へ向かう。
……走り様少し後ろを振り返ると、俺にしてくれたように他の選手に声をかけるなまえの横顔が印象的だった。
To be continued...
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懲りもせずな、中編の始まりです。