中編:恋した相手は。
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親友なのか、悪友なのか。
授業が終わった放課後、俺は真っ先にクラスを出た。
今日はサッカー部の練習もない。
まっすぐ帰ってトレーニングでもしようか、それとも借りてたマンガでも読もうか。
いろんなことを考えながら下駄箱から靴を取り出していると、声をかけられた。
「おい乱馬、ちょっといいか?」
「どーした?」
顔を上げるとそこにいたのは仲の良い友達、ヒロシとダイスケだった。
特に用もなかった俺は二人の誘いに乗った。
場所を変える、と言われ移動したのは学校近くの公園。入り口近くの自販機の前で二人は立ち止まった。
俺はコーラ、ヒロシはスプライト、ダイスケはコーヒーを選んで、自販機の前にしゃがみこんだ。
「で?どーしたんだ?学校じゃ言えねー内容か?」
コーラをひと口のどに流して、俺は口を開いた。
アイコンタクトをしたふたりは一度頷くと、俺をじっと見てくる。
な、なんだその目線は……。
先に話したのはダイスケだった。
「お前、最近よくサッカー部行ってるよな」
「あぁ……それがなんだ?」
あぁ、その話か。
あかねにも良く聞かれた内容だ。
大事な試合があるから来てくれって頼まれたんだと何度言ったことか。
「ずばり、それはマネージャーのみょうじさん目当てだろ!?」
「……な、っ!?」
ダイスケに続いたヒロシの言葉に、のどに流しかけたコーラを一気に吹いてしまった。
な、な、なんだって!!?
驚いた俺は言葉が出ず「汚ぇな、ばか!」「吐くなっちゅーの!」とか言われながら、コーラまみれになった二人を呆然と見ていた。
「ほぉぉー?その反応は本当みたいだな」
「図星らしいな」
二人はカバンからスポーツタオルを取り出して顔や服を拭きながら、ニヤニヤしてやがる。
誰にも気付かれてねーって思ってたのに、ウソだろ!?
コイツらの前でなまえの話とかした覚えもねーぞ!!?
「な、な、おめーら、なんで!?」
「カマかけたらお前さんが勝手に引っ掛かっただけだ」
「ま、実際気にはなってたからなー」
くそ、まぢかよ。
――格闘家たるもの常に冷静に。相手に隙を見せてはならん。
こんなときに限ってクソおやじの言葉が頭をよぎる。
弁解しよーにも、もうどーにもデキねぇじゃねーかよ!!
あ~~~くそ!!!!!
「……やられた」
目に見えるほどガックリと肩を落とした。
こんな意図も簡単な手に引っ掛かっちまうとは、それだけ俺が無防備だったってことか。
あかねは誤魔化せてもコイツらはごまかせねーってかい。
「そー落ち込むなって!けどよ、ほかの奴らも言ってたぜ?乱馬がやたらサッカー部に入り浸ってるって」
「ほかの部の誘いにゃ乗らねーから、サッカー部のやつらは乱馬の弱味でも握ってんじゃねーかっても言われたぞ」
「ふ~ん……」
「ふ~んって、お前なぁ」
「で?実際どーな訳?」
二人の矢継ぎ早な質問に俺ははぁぁぁと深いため息をつくと、持っていたコーラをごくごくと流し込んだ。
バレちまったもんはどーしよーもねぇ。
俺はしぶしぶ説明をした。
サッカー部に入り浸ってるのは、あかねに言ったのと同じ《大事な試合》ってやつと、二人にカマかけられたマネージャーのなまえが気になってるっていうのも正直に。
ほかの部の誘いを断ってんのは別に理由はねぇってのも。
あーあ。
ふたりにゃバレねーよーにしねぇと。とか考えていた俺、ドンマイだぜ。
やっぱコイツらはこーいうことになると、すぐ嗅ぎ付けてきやがるな。
一通り話終えたところで、聞き役に回っていたふたりがまた話し出した。
「お前、許嫁にあかねや右京がいながら好きなやつが別に出来るとはなー」
「贅沢なやつだぜ。シャンプーや小太刀にしばかれろ」
「お前ら味方なのか?敵なのか?」
ダイスケ、ヒロシの順に話して来たんだが……なんなんだ、おまいら。
根掘り葉掘り聞いてきた割にゃひどくねぇか?
「もち、味方に決まってんだろ。好きなやつが出来たんなら、力になるってのが男だろーよ」
「まーそういうこった。俺の友達にみょうじさんと同じ中学のやつがいるから、それとなく聞いといてやる」
「お前ら……!」
コーヒーを飲みながらニヒルに笑ったダイスケと、スプライト片手に「あいつは何組だったかなー?」と思い出してるヒロシ。
良牙やムースと違った友情に、俺はどことなくこそばゆさを感じて、ふたりに見えねぇようにこっそり笑った。
バレないようにバレないように、なんて思ってたけど、コイツらならいいんじゃね?っていう変な安心感も出てきやがって、案外、俺も単純だな。
「にしても、ちゃらんぽらんなお前が特定の女の子を作るとはねぇ~…」
「あかねたちが聞いたら病院送り決定だな。送られろ」
「あのなぁ……」
そのふたりの発言に、再び飲んでいたコーラを吐き出しそうになったが、今度は耐えた。
なんだよ、おめーらコロコロ意見変えやがって!
「面白いやつ。誰にも言わねぇから、その代わりに……な、ダイスケ」
「そーそ、俺らもタダじゃ動かねーぜ。な、ヒロシ」
「……つまりは?」
「「シャンプーのところでラーメンおごってもらおうか!」」
「……おまいら、それが目的か」
もしかしてこれが本心じゃねーの?
俺の好きなやつうんぬんもそーだけど、タダ飯食いてぇだけだろ、絶対。
半ば強引に納得させられて、俺は飲み干したコーラの缶をゴミ箱に放った。
腰をあげて行くのは猫飯店だ。
ダイスケもヒロシも腰をあげるとそれぞれ「がんばれよ」と肩パンしてきやがった。
……なんでぇ、嬉しいじゃねーか、バーカヤロー。
もしかして、学校でも猫飯店でもなく公園を選んだのは、誰にも知られたくねぇだろうっていうのを考慮したんじゃねーかって気が付いて、俺は二人が友達で良かったって思った。
……んなこたぁ、絶対言わねぇけど。
「そーだ、乱馬。明日は右京のお好み焼きな」
「明後日は駅前のハンバーガーってとこか?」
先を歩いていた二人が振り返ってニヤニヤとした笑顔を見せてくる。
明日も明後日も奢らせる、だとぉぉぉ~~~???
「お前らやっぱ敵だろ!!!」
そう叫ぶとゲラゲラと笑いだした二人。それに釣られて笑っちまう単純な俺。
くそ、しょーがねぇ。
あーあ。
こりゃ次のおこづかい貰えるまでしばらく節約生活決定だな。
To be continued...