初恋。
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雨の日の、出来事だった。
突然の雨にまたか、と思いながら家へと急いでいた。
一回り小さくなった上、水を吸って肌に纏わり付く服に、嫌気がさしてくる。
早く風呂に入ってもとの体に戻りたかった。
そんなとき、アイツを見付けた。
普段なら知らないふりをしたかもしれないのに、気になって足を止めた。
そこにいたのは、俺と同じくらいずぶ濡れの――みょうじなまえだったからだ。
「おめー何やってんだ?」
「え、あ……」
「こんなずぶ濡れでどーした?」
おっと、そうか。
みょうじは俺のこの格好を見たことないのか。
……の前に、いきなり声をかけられて驚いている様子だった。
しかしきょとんとした目が俺を見つめていたかと思うと、ふふっという小さな笑い声が聞こえた。
「な、なんだよ」
「ずぶ濡れって……あなたもずぶ濡れじゃない」
「……あ、」
確かにそうだ。いや、しかし。
「俺は慣れてるからいーんだよ」
自分でも変なことを言ってるとは思った。
でも慣れてるものは慣れてるんだ。雨でなくてもよく濡れるからな。
「ふーん……」
みょうじは納得したのかしていないのか、曖昧な返事をした。
ってそんなこと話してる場合じゃない。話している間も雨は降り続けている。
「んなことより、早く家に帰れよ。風邪引くぞ」
「あなたこそ」
「だからいーんだって」
「……私もいいの」
なんでだ?
みょうじはそう言って、一歩足を進めた。歩きながら、その視線は道を隅々まで見渡していた。
……もしかして、
「探しものか?」
「……」
「おい、」
掴んだ腕は細くて、折れそうだった。
張り付いたブラウス越しに、白い腕がうっすら浮かび上がる。
俺のみょうじに対する印象は、少し地味で何か弱々しい。
言葉を変えるなら、儚げ。
同じクラスではあるが、言葉を交わした記憶も、あやふやなくらい接点がない。
騒がしいクラスでも、大人しい部類のみょうじ。
それが故に俺にとっての彼女は地味な存在、という風に感じてしまったんだろうな、と思う。
「一人より二人のがいいだろ、」
「……でも、」
「拒否権は認めねーぜ。で、何を探してんだ?」
腕を掴んだせいか、恐る恐る顔を上げたみょうじに、拒否権はない。と追い打ちをかけた。
俺が引かないとわかったみょうじは、躊躇ったように口を開く。
「せ……、」
「せ?」
…………生徒手帳。
「は?」
うちの学校の生徒手帳がどんなもんかすら知らねー。
あの校長がいる限り、とんでもなく下らない校則があるに違いない。
いや、なに?
「生徒手帳?」
仮に入学した際、もらったとしても、俺にとっては全くの必要性がない。
格闘技についてのことが書いてあるなら別だが。……読むか読まないかは置いといて。
なぁ、生徒手帳って大事なものなのか?
「……少なくても私にとっては」
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