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「おめー好きなヤツとかいんのか?」
いつも帰りのSHRが終わると一番に教室を出る乱馬くんが、誰もいない教室に何故かいた。
外は夕焼け色に染まりつつある。
私はというと、先生の頼まれ事があったから帰りが遅くなってしまったのだ。
今日に限らず、たまに帰りが遅くなるときはあるのだが、まさか自分より早く帰る乱馬くんがいるとは思わなかった。
あかねと一緒に帰らなかったのかな。
あかねじゃなくても友達とも。
「どうして?」
乱馬くんが聞いたのは好きな人の有無。
それを聞いたところでどうするのだろう。
「いや、その……なんつーか……」
質問返ししたからだろうか、乱馬くんの歯切れは悪い。
元々、彼が恋愛をあーのこーの言ってるイメージはないため少々不思議な感じだ。
まぁ思春期なのだから互いに不思議ではないのだが。
「たまに……おめー帰るの遅いだろ?」
「ん?うん」
「ダイスケ達とお前に彼氏がいるから帰りおせーんじゃねーかって話になってさ、」
「うん……、」
「どーなんだろうと思って」
「……、」
それってどうなの?
話の内容からして、尋ねるなら好きな人よりも彼氏の有無ではないのだろうか。
そもそもどうして乱馬くん達の中で私の話が出るんだろう。
どうしてたまに遅いのも知ってるんだろう。
疑問は上げたらきりがない。
「乱馬くんは、それを知ってどうするの?」
「え、ど、どーもしねぇけど……」
やっぱり歯切れが悪い。何か引っ掛かる。
だって、乱馬くんが取り乱してる所にあんまり遭遇したことない。
だからか、妙に冷静になれる。
「……彼氏はいないよ」
「え、」
「帰りが遅くなるのは先生から頼まれたことしたり、友達と話したりしてるから」
「そ、そーだよなっ!俺ぁ、そーじゃねぇかと踏んでたんだぜっ」
どこからそんな自信が出るんだろ。
さっきまでの歯切れの悪さが嘘のような態度だった。
思わず笑いが込み上げる。
「な、なんだよ、いきなり笑いやがって」
「ごめんごめん、気にしないで」
「ったく……で、最初の質問はどーなんだよ」
ちょっといじけた乱馬くんが答えを急かす。
そういえば、話の始めに聞かれたのは好きな人のことだった。
いきなりの質問だったけれど、ちゃんと覚えている。
「好きな人のこと?」
「あぁ……」
「いるよ」
誰、なんて言わないけど。
少し視線を反らした乱馬くんからそーか、と返事が聞こえた。
心なしか小さく聞こえたのがまた引っ掛かる。
「そーゆー乱馬くんは?」
あ。これは聞かなくて良かった質問だった。
言ってから気付く。
乱馬くんはあかねと許婚だし、お互い満更でもなさそうだから。
きっと二人は両想い。
「いるぜ」
ほら、やっぱり。
わかってるつもりよ、あなたのことだから。
誰か聞いても教えてくれないだろうけど、もし彼が私に教えてくれるのだとしたら、きっと彼女の名前が出るはず。
「そうなんだ」
「……え、驚かねーんだな」
「驚いた方が良かった?」
「や、そーゆー訳じゃねーけど……」
複雑そうな顔をした乱馬くんは机に腰掛けると、腕を組んだ。
乱馬くんにしてみれば私と恋愛話なんて今までになかったから、まさか好きな人がいることを知られているなんて思ってもみなかったのだろう。
「乱馬くんに好きな人がいるのは気付いてた」
「え、」
「相手も多分わかるよ」
「ばればれってやつか……?」
拍子抜けした表情に少しずつ赤みが増す。
乱馬くんの頬をかく行動は大体が照れの表れ。
そわそわと視線を泳がせたあと、彼は口を開いた。
その視線は私を捕らえる。
「バレてるならいいよな……」
しっかりと言葉が耳に届いた。
聞き間違いではない、はず。
真剣な眼差しで見つめられるのが恥ずかしくなり、少し俯く。
先程の乱馬くんのように頬はきっと赤い。
――お前が好きだ。
ねぇ、その言葉私には反則だよ。
あかねが好きなんじゃないの?
どうして私なの?
信じて、いいの?
期待しちゃうじゃない。
「……本当に?」
「え、だってバレてんだろ?俺がお前を好きなこと」
「ち、違うよ……私が思ってたのはあかねだったから……」
「な……、」
フライングかよ。
口元をばっと隠した乱馬くんの顔は真っ赤だ。
どうやら本当のよう。
少し脱力した彼がちょっと可哀相になる。でも、嬉しい。
私も自分の気持ちを打ち明けよう。
きっと、いや、絶対喜んでくれる。
「乱馬くん、私の好きな人なんだけど……」
次に見た乱馬くんの顔は、私が恋に落ちた表情。一番大好きなあなた。
それはまるで、太陽のような微笑み。