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俺は見慣れた街を歩いていた。
あかねさんが暮らすこの街は、俺の家がある街の隣町だ。
そんな街中で見知った顔を見付けた。風林館高校の制服を着たその女の子はあかねさんの友人だ。
俺はその子の元へ駆け寄る。彼女は俺に気付くと優しく微笑んでくれた。
身長差故に彼女は俺を見上げる形になってしまうのだが、一層優しく微笑むと口を開いた。
『 』
その言葉に満足した俺は彼女の頬に手を添え、親指で頬を優しく撫でた。
くすぐったそうにしつつ俺の手に手を重ねる彼女に心がじんと温まる。
そして俺の視線は少しずつゆっくりと彼女の顔に近付いていく。
自然な流れで彼女は目を閉じた。伏せたまつげが綺麗だ。
そうか。こうしてキスをするのか。
そう思ったのも束の間、重ねるであろう唇に目を奪われる。
ほんのり色気のあるピンクで柔らかそうなその唇を捉えたまま、俺の顔はどんどん彼女に近付いていくーーーーーーーえ?や、やっぱりこれはそうだよな!?
お、おい、いいのか良牙!?キ、キ、、キッスだぞ!!!?!?
ちょ!ちょっ、
「ちょっと待てえええええ!!!!!」
自分のデカイ声に驚いて俺の目はカッと覚めた。
頭をブンブンと振って冷静さを取り戻そうとした。辺りを見渡せば見慣れたいつものテントの中で――あぁそうか。俺は修行に出ていたんだと気付かされ、それと同時に先程までのものは夢だとわかる。
な、なんだ今の夢は!!?なんちゅー夢を見とるんだ俺は!!!!?!?!?!?
な、なんてけしからん……!あかねさんという心に決めた人がいるというのに!俺は、俺はー!!
ドックンドックン。
はぁ、はぁ、はぁ。
意識すればするほど、修行や勝負とはまた違う心臓のドキドキに俺は戸惑っていた。
言葉にできん気持ちを払うように意味もなく頭を抱えて左右に振ってみた。が、一旦落ち着こうと目を閉じると脳裏に焼き付いたピンクの唇が浮かび、俺はまた首を左右に振って煩悩を払う。
くそう、今まで意識したことなかったのに、なんだ、どうしてあんな夢を……。
俺が夢に見た相手とは、あかねさんの友人だったのだ。
……ん?ちょっと待て。顔はわかるというのに名前がわからん。
名前がわかればあぁ〇〇さんか、と納得しようがあるが名前がわからんとどんな名前だったか考えちまうではないか!!
あの子の名前はいったい何なんだーーーーー!!!??
それからというもの夜通しその子の名前が気になってしまい、俺は修行をやめあかねさんの住む街へ向かうことにした。
ひたすらに歩いていると観光地らしい土産物屋が軒を並べており、俺はその中の一軒に立ち寄った。
あかねさんにお土産を持っていこう。
そう思いいくつかのお土産を手にしてどんなものがいいか悩んでいると、綺麗なピンク色の包装紙のお土産が目にとまった。
ピンク色……ピンクの唇……っは!!
夢の中で見た唇と彼女が脳裏をよぎる。そして顔が熱くなるのを感じた。
ああああああれは夢だ!!夢だぞ!しっかりしろ響良牙!!!!!夢に惑わされてどうする!!
しかし夢とはいえその唇の威力とはすごいもんだったので、俺は慌ててその場にあったお土産を手当たり次第に取って買い上げると急いでその場をあとにした。
ピンクなんて見るから思いだしちまうんだーー!!!!!
「はぁ、はぁ……」
どれくらい走っただろうか。
全速力でひたすらに真っ直ぐ走りまくった。
そして気付くと俺は住宅街をうろうろしている。いったいどこの街にやってきたんだ、ちくしょうあかねさんに会いたいというのに。
「あら?良牙くんじゃない!帰ってたのね」
そう思っていると後ろから声をかけられた。その声はあかねさんだ……!!
勢いよく俺は振り向いた。
そこには声の主である制服姿のあかねさんがにっこりと微笑んで立っているではないか!
あかねさんに会いたいという気持ちがあかねさんのいる街に導いてくれたのだな……!うんうん!
俺はあかねさんに駆け寄った。
「あ、あかねさん……!お久しぶりで……っと!?」
俺はあかねさんの影に隠れていたもう一人の人物に気付いた。
それは言わずもがなあの夢に出てきた彼女だ。
夢と同じように微笑む彼女に目を奪われ、そして唇に目がいき、夢を思い出した俺の心臓は一気に跳ね上がった。
「良牙くん、久しぶりだね」
「はっはひっ!おひた、しぶりで、ですねっ!わはっわはははは!!!」
やばい。意識しちまうと彼女が見れねぇ!!あかねさんが側にいらっしゃるというのに俺は今彼女のことで頭がいっぱいだ……!
ええいくそ、ど、どうしたら……!
はっ!
俺は右手にお土産の袋を持っているのに気付き、その中に手を突っ込むと物を確認せずあかねさんに差し出した。
「あ、あかっあかねさん!こ、これお土産です!」
「わぁいつもありがとう!」
よ、良かった!
不自然に思われず冷静に切り抜けられた!あかねさんは俺から受け取った温泉まんじゅうの箱を鞄に仕舞おうとしている。
……は!しかしあかねさんだけにお土産を渡すというのは彼女がいる手前、失礼なのでは!?まだお土産はあるからお渡ししよう。
そして名前を聞くのだ……!
俺はまた紙袋に腕を突っ込み、中身を確認しないまま彼女に差し出した。
「こ、これ……」
「私にも?」
頬笑む彼女が声を発する度に唇に目がいってしまう……!俺はコクコクと縦に頷くしか出来なかった。
さぁ名前を、名前を聞くんだ響良牙!……や、ま、待てよ!
出会ってから長い月日が過ぎているというのに今さら名前など聞けん……!ど、どうしたら!
「ありがとう!嬉しい!」
そう考えていると彼女がお土産を胸にぎゅっと抱き留めているのが目に入った。
そのお土産の包みはピンク色で、本人を前にして再び夢を思い出した俺はヒートアップして倒れてしまうのだ。
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夢で見た子を意識してしまうお話でした。なぜ名前を知らないのかは謎です。なんかすみません。たぶん続きません。……たぶん。
そして拍手ありがとうございます!
またコメントなどありましたらよろしくお願いしますー!!