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俺は今、修業のため山奥にいる。
山に籠って一週間は経っただろうか。持参していた食料がつきたので山を下りることにした。
「町はどこだ……」
下っても下っても平坦な道に出やしない。凸凹した道なき道を歩いていると、水が流れる音が聞こえてきた。
川だ!川が近くにある!
そう思った俺は走った。ひたすら走ってようやく川へ辿り着いた。
「まずは食料の調達だな」
川を見て安心した俺の腹がぐぅと鳴った。川魚を取って食べよう。
そう思いその辺に落ちていた木の枝にたこ糸を結び、即席の釣竿を作った。そして川へ放る。
たまに魚が水面を跳ねるのでいるのは間違いないが、いっこうに釣れやしない。
これは素手でとった方が早いのでは?
そう思い川へ足を踏み込んだ。……俺は馬鹿だった。
「ぷぎーっ!」
水に濡れて豚になった。ええいくそ!わかっていたはずなのに!
空腹に負けて豚になるのを一瞬忘れていた!アホか俺は!
バタバタともがくも、水の流れはどうにもならずどんどん下流へ流されていく。
背負っていたリュックも一緒に川を流れているので必死になって掴まり、諦めた俺はリュックを筏にして流れに身を任せることにした。
にしても腹が減った。
「ぷぎっ」
ラフティング気分で流れに乗っていると、どこからともなくいい匂いが漂ってきた。この山に人がいるのか?
そう思っていると川縁が少し広いところに出た。テントがふたつ。キャンパーか?
そう思っているとテントの陰から人がチラッと見えた。
「乱馬ーーっ!ご飯出来たわよー!」
あかねさんだ!その隣には、あ、あの彼女まで……!
想いを寄せる見知った顔を見付けた嬉しさを爆発させた俺は精一杯大きな声で鳴いた。
しかし二人はこちらに背を向けている上に、川の音のせいで声に気付かれることもなく。
「お!いー匂いしてんじゃねーか!この手料理はあかねじゃねーな!」
目の前の林の奥から乱馬が跳んで出てきた。お前も修業しているのか!?しかも女の子を二人も連れて!?なんてやつだ!!!
奥歯をギリギリと噛み締めた。くそう羨ましい!!!
俺は川へ飛びこみ、口でリュックの紐を噛むと必死に川岸へ向かって泳いだ。
二人に気付いてもらうのだ!!
「何よその言い方!」
「おめーの料理じゃなくて良かったって言ってんだよ!」
「なんですって!?」
「格闘の修業中に腹の修業なんかしたかねーもんな!」
「乱んん馬ぁぁあああ!!!」
「まぁまぁ二人とも、ご飯にしようよ?」
喧嘩しそうになった二人をなだめる彼女の姿にキュンときた。本当に優しい方だ……!
しかし三人は俺のことに気づく素振りも気配も仕草も全くなく、三人は料理を囲んで楽しそうに話しだした。くそう!俺も混ぜてくれ!俺はここにいるんだ~~!!!
ばしゃばしゃばしゃ。
「いい匂いに誘われて来ちゃったよ~ん!」
「ちょうど腹が減ったところだったよ!」
「あ!お父さん!待ってたよー!」
「おせーぞ、親父!めちゃくちゃ美味ぇぞ!」
「待ってましたよ。おじさま達もどーぞ」
「「わーい!いっただっきまーす!!」」
乱馬と同じように林から出てきた二人は食事に加わって、美味しそうに食べ始めた。
あかねさんの親父さんと乱馬の親父さんも来ていたのか!そこにあかねさんと彼女も誘われたのか!
くうううう~~っ!!和気あいあいと食事を楽しみやがって、俺も早くあそこへ……っ!
ばしゃばしゃばしゃ。
……さっきから全っ然進んでねぇ。
むしろさっきより遠くなっている?
豚の力などわかっていた、わかっていたが、ちくしょう、泳ぐどころか流されてるじゃねーか!
俺も腹が減った!あの二人と一緒に飯が食いたい!
ちくしょうちくしょうちくしょう!
「ぷぎーっっ!(獅子咆哮弾!)」
ひゅっパシャーンッ。
獅子咆哮弾を打ってしまった!
……が!獅子咆哮弾が豚サイズの気で、人間のときより遥かに気か小さい!!水風船が割れたような小さな音しかしなかった!
そして少し気を失った……。気持ちばかり進んでいた川岸への距離も、あっという間に遠ざかってしまった。
あああどんどん遠ざかっていく……あああ……せっかくお二人に会えたというのに……一言も話もせぬまま俺は流されていくのか……。
くっ……な、泣いてなんかねぇ……っ!
ちくしょう、早くこの体質を治して人間に戻りてえええええ!!!!!!!!!!
―――
良牙のよくありそうな不敏話。
このあと人に捕まえられ、更にうりぼーと間違われ、ジビエ料理店に連れていかれそうになったりならなかったり……笑