「人って…脆いよな」

ヴィレのパイロット待合室。
そこのソファでスーツに身を包んだライキが寝転がっていた。
指定された出撃時間まであと少し。

「それも人として生まれてきた運命（さだめ）じゃないのー？」

独り言を言ったつもりが何故かマリが答えてきた。
その手には飲み物。

「サンキュ。お前の場合はエヴァに乗れる楽しさか？」
「わかってんじゃん」

マリの思考と他の人は違う。
それはライキ自身にも当て嵌（は）まっている事だが。

「あんたら、よくそんな呑気な会話が出来るわね」

少し離れた所で壁に背中を預け腕を組んでいるアスカ。
言葉にせずとも不機嫌そうだった。

「こういう時だからだよ。ほら、姫も」
「…ふんっ」

差し出された缶を奪うように取る。

「…俺ら、いつまでこのままなんだろ」

白い天井を仰ぎ見る。
成長なんかしなくたっていいと思う事もあった。
しかし今は違う。
成長しない事がこんなにも寂しいなんて。
ライキは周りに置いて行かれるのが怖かった。

「くだらない事言ってんじゃないわよ」

投げられた缶がライキの頭に直撃する。
中身がなかった事に少しだけ感謝した。
アスカが言いたい事はわかっている。
…自分だけじゃないんだ。
アスカを見る度に視界に入る左目を覆うそれ。
今更じゃないが、ずっと気にしていた。




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