それから数ヵ月が経ち、無一郎さんは刀鍛冶の里へ向かった。
帰って来た無一郎さんの身体はボロボロだったけど、不謹慎にも嬉しい事が一つあった。

「ただいま、乃愛さん」
「、…無一郎さん、私を…覚えて…？」

「ただいま」という言葉もそうだったけど、何よりも名前を呼んでくれた。
彼にとっては珍しく、いつも無表情な顔が柔らかくなっていて。

「うん、"全部思い出した"。いつも乃愛さんは側にいてくれてたし、僕の帰りが遅い時もずっと起きて待っててくれた」
「無一郎さん…」
「また作ってくれる？アレ」

その事も覚えてくれたのは、私にとってこの上なく…

「ふふ…わかりました。ご用意しますね、ふろふき大根」




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