外の世界を知らないエステリーゼ。

外だけに限った事じゃない。
ザーフィアス…この住んでいる帝都の下町の事も知らない。

王族の血筋を持って生まれてきた子は箱庭生活か。
知りたくても知る事が出来ない。
穢れを知らない心を持っているエステリーゼは、城の人達にとってただの人形か。

ノアはそう思うと帝都が憎くて仕方なかった。
しかし自分が騎士をやめた所でどうなる？
今まで外の話をしていたノアがいなくなった所で誰がエステリーゼに話をする？
ノアはエステリーゼには一人の人として少しでも世界を知ってほしい。
そう思っていたからやめなかった。

「どうかしましたか？」
「っ！」

会話が急に途切れたノアに心配する。
エステリーゼに顔を覗かれた事でハッと気付く。

「ご、ごめん」
「もしかして任務で疲れが残っているのでは…」
「大丈夫だよ。それより…えっと……何処まで話したっけ？」
「ノア、今日は休んで下さい」
「え、でもエステリーゼもまだ話聞きたいんじゃ…」
「もう夜遅いですし、話はまた後日でいいですよ」

やはり自分は疲れているのだろう、エステリーゼに気を使わせてしまった。
本当に申し訳ないと思いつつ、今日は言葉に甘えて部屋に戻る事にした。

「おやすみエステリーゼ」
「はい、おやすみなさい」

エステリーゼが扉を閉めたあと、小さな溜息をついた。
せめてエステリーゼの前では疲れは見せないつもりだった。




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