モルガナの森で聞いた悲鳴。
それはベルベットの友人のニコのものだった。
しかし彼女は三年前に死んだ…いや、ベルベットが殺した筈。
なのに何故、生きているのか。
真偽を確かめる為に、喰魔がいるであろう故郷の村へと歩みを進める。

「（ニコが生きてた…もしかすると、あの子も…）」

そんな考えが一瞬浮かんだが、振り払った。

「（いや…それはない。あの子は…ノアは…）」

目の前で殺された。
アルトリウスの手によって。









村は三年前と全く変わっていなかった。
複雑な心境の中、ラフィが生きている事を知ったベルベットは家へと向かう。
家の前でニコにベルベットの左腕の事を知られたものの、彼女はずっと友達である事に変わりはないと断言した。
玄関の扉に手を伸ばす。
しかしその手は扉に触れる事はなかった。
家の中から開けられたそれは、ベルベット目掛けて鋭い刃が襲ったのだ。
反射的に刺突刃で防ぎ、そこにいたのは…

「…ノア……！？」

死んだ筈の妹のノアだった。

「どれだけ…私がどれだけ待ったと思ってんだ！この馬鹿！！」
「なっ…馬鹿はないでしょ！」

ベルベットが弾き返すとノアは距離を取った。
突然のノアの行動にニコは黙っていなかった。

「ちょっとノア！あんたお姉ちゃんに何してんの！」
「…私はただ家を守ってただけ。ラフィの事もあるんだから」
「はあ…ホント、あんたって不器用ね」
「うっさい」

そう言いながら武器をしまったノアは何事もなかったかのようにベルベットに近付いた。

「ちょうどよかった。私、今から行く所あるからニコでも呼ぼうとか思ってたんだ。あとはよろしく、ベル姉」

ぽんと軽くベルベットの肩に触れたノアは後ろ手を振りながら村へと向かって行った。
ノアに触れられた肩へと無意識に手を置いたベルベット。
そこには確かに"温もり"があった。

「お主の妹は冷たいのう。折角の姉妹再会じゃと言うに」
「…ノアは、ああいう子なのよ」

昔から何一つ変わっていない。




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