背後からの突然の声にロゼは振り返った。
そこには一人の女性がいた。
それよりも何故この子の気配に気が付かなかったのだろう。
任務を終え、気が緩んだ所為だろうか。
ロゼは警戒する。

「…お前は」
「私？ああ、そこの人の…まあ、娘になるかな」

指差した遺体に向けて「養子だけど」と付け足した女性。
どうもおかしい。
いくら養子と言えど、親を殺されて平気でいられるものか。

「……」
「平気な理由、聞きたい？」
「それは…」

まるでロゼの言いたい事がわかっているかのように続ける。

「ふふ…私はわかってたの。この人が悪い事をしている人だって」
「だから殺されるのを黙って見ていた？」
「養子に入る前からよ」

衝撃発言。
それは風の骨よりも早くにその情報を知っていたと言っているようなものだ。

「私にノアって名前を付けてくれた勝手な人」
「付けた？」
「そう。本当の名前は別にあるの」

誰にも教えてあげないけどね、とノアと名乗る女性はロゼに近づく。
ある程度の距離になると、被っている仮面の隙間から見えるアイスブルーの目と合う。

「綺麗な目ね。それこそ吸い込まれるぐらいに」
「っ！」

思わず退く。
今この女性は何と言った。




綺麗だって？あたしの目が？




.