レディレイクの宿。

「（やっぱり綺麗だよねー）」

ノアはいつもある物を見て思っていた。
視線の先はライラがいる。
しかし正確に見ているのはライラの髪。
長く綺麗な艶があり、毛先にいくにつれてグラデーションがかかっている。

「あの…ノアさん。そんなに見つめられると気になるのですが…」
「ふえっ！？」

思わず変な声が出てしまった。
そんなに見ていただろうか。

「ああっと、ごめん。ライラの髪がいいなーって思ってて」
「いい、ですか？」
「ほら、私は髪黒いし短いし。それに比べて長くて綺麗で…」
「ふふっ」
「？」

ノアは自らの髪を指で弄りながら話していると、ライラから小さな笑みが溢れた。

「そんな事ないですよ」
「そんな事ある！実は誰もいない所で密かに何かしてるんでしょ？」
「まさか。それよりも私はノアさんの髪の方がいいと思います」
「私の？」
「はい」

こんないい所のない髪のどこがと聞きたいが、ライラはいつの間にか目の前まで来ていた。
そしてノアの髪を撫で始める。
ヒールを履いているとは言え、確かにライラの背は高かった。

「ほら、こんなにサラサラしてます」
「…あ、ありがと」
「それとノアさんの世界の事はわかりませんが、ここでは黒髪は大変珍しいんですよ」

確かに思い返してみれば少ないかもしれない。
スレイは茶色で、ロゼは赤だ。
街の人達だって黒より茶が目立っていた…ような。




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