「今日から精一杯頑張らせてもらいますレイア・ロランドです！」

その「よろしくお願いしまーす！」と大きな声に、ライキは作業していた手が止まった。
…一部の人は迷惑がっていたが。
いたのは黄色い服が印象のキャスケットを被った新人。

「（…あれは張り切り過ぎて空回りするタイプだな）」

再び動かし始めた手だったが、近づいて来た二つの影に顔を上げた。
そこには編集長と新人。

「ライキ、こいつの面倒を頼む」
「はあ！？」

いきなりのご指名。
所謂、新人の育成ってやつだった。

「えっと…よろしくお願いします！」
「本人もこう言ってるしな」
「だからって何で俺…他にもいるじゃないですか」
「次の取材、お前が先方だったな。こいつに現場ってものを見せてやってくれ」

確かに次の取材まであと数時間後だった。
新人にいきなりの取材は無理だ。
まずは現場の雰囲気と状況に慣れてもらわないといけない。

「…わかりました。やりますよ」
「あ、ありがとうございます！」

嬉しさのあまりレイアはライキの手を取りブンブンと縦に振る。
始めのうちは主に雑用ぐらいしかさせてもらえないだろうが、暫くはライキについて行く事になったレイア。

数時間後、予定より早めにライキの仕事が終わった為、近くの宿屋で食事をする事になった。
店員に「俺、マーボーカレー」と言うと、レイアもそれに乗り「私も」と二人同じものを注文する。

「でもライキさんの取材って何か変わってますね」
「そうか？」
「何かこう…質問の仕方って言うか」

ライキの取材の仕方は、まるで相手の何かを探るような質問が多い。

「ま、実際聞くだけじゃないからな」
「どう言う事ですか？」
「よく言うだろ。目に見えているものだけが、全て真実とは限らない」

話し方、行動、表情の変化。
相手の思っている心を探るんだ。




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