「あ…あのぅ…」

このまま黙っていても状況は動かないと、乃愛は声をかける。
声に反応したフードの女の子は、ゆっくりと顔を上げた。

「………なに…」
「……、…」

その女の子の目には、"光を宿していなかった"。
女の子は「放っておいて」と言葉を話すと、再び顔を伏せた。

「…風邪、引いちゃいますって」
「……」

さすがに乃愛も、このまま放置するわけにもいかず。

「家どこですか？なんなら送り「うるさいな…いいから放っておいて」…ッ」

ここまで心配している人になんという言い方をするのかと、乃愛は一瞬ムッとしてしまった。
こうなったら強行手段だ。

「あのですね、私は風邪を引くと思って声をかけてるんです。偶然とはいえ、座り込んでる貴女を見つけて知らぬふり…なんて出来ません」

「だから…」と言いながら、乃愛は女の子に肩を貸す形で無理矢理立たせた。
ちなみに敬語になっているのは、それだけ本気だという事。

「、何を…」
「これは私が勝手にやる事です。そうですね…貴女の言葉を借りるなら『放っておいて』、ですか」
「ッ…」

お互いの服がかなり雨によって吸われて重くなっていたが、乃愛はとりあえず自身の家に向かった。




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