「ん、……眩しッ…」

寝返りを打って、カーテンの隙間から覗いていた太陽の光とご対面。

「……何時なの…」

いつもセットしている目覚まし時計のアラームが鳴るまで、まだ時間があった。

「はぁ……またあの夢…」

いつからか、数日に一度は見るようになった夢がある。
夢の中に現れる人は、歌を唄っていた。
しかし、はっきりと歌詞は聞こえない。

「シ……シン………なんだっけ…？」

これも靄（もや）がかかったように、よく聞こえなかった。
そして何より。

「『生きるのを諦めないで』…か」

何とも心強い言葉。
しかし言った本人の心も強くなければ、容易に言えるわけがない。

「…ちょっと早いけど起きよ」

学校に行くには十分過ぎる時間だが起床する。
簡単に部屋を片付けて、テレビを点けながら朝食を作り始める。
作るとは言っても、朝食では定番のトーストとハムエッグになるが。

【ではここで、昨日のノイズによる被害状況を…】
「…ホント、最近増えたよねー」

他人事のように呟きながらトーストにかじりつく。

【逃げる際の負傷者は28名、死者は数名にものぼり、残された遺族のお気持ちを…】
「…鬱陶しいったら、ありゃしない」

かく言う少女…乃愛も、数年前にはその被害者の一人になってしまっている。
現在乃愛の住む家には、本人しかいない。
チャンネルを変えて朝の番組を見ていると、気が付けば登校する時間になっていた。

「さて、と…早く起きてて遅れるとかシャレになんないし」

余裕を持って行動するのが、乃愛の信条である。




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