陽だまりのお兄さん

「だったら呼び捨てでもいいぞ?『兄』に『さん』に『君』と続いて色んな呼ばれ方をしてるし、今更気にしないしな」
ク「い、いや…けど…」

どうしたものかと一度思考する。
やがて口が開くも、よく見ると口元がプルプルと震えている。

ク「……な、…な……、なり…や…」
「何だ?クリス」
ク「ー~~ッ!なんでもねぇよッ!!」
「あ、ちょっと待って」

この場にいるのがもどかしいのか、先に行こうとしたクリスを止めて、ある物を渡した。

「今日の昼飯。皆のも作ってきたから、今渡しておくよ」

本来なら学食が主なのだが、鳴弥は自身の分を作るついでに皆の分も作っている。
それぞれの好みに合わせて作っているので、渡し間違えないよう弁当箱を包む布の色を分けている。
響は橙、未来は紫、クリスは赤、翼は青。
ちなみに自分のは、シンプルに黒である。

未「いつもありがとう、お兄ちゃん」
響「うわぁ…!鳴弥さんのお弁当って凄く美味しいんだよね~!」
翼「ありがとう」
ク「あ、ありがとな…」

そうこうしているうちに、それぞれの教室へ向かう分かれ道に差し掛かった。

「じゃあ、俺達はここで。翼、行こうか」
翼「ええ」

付かず離れずの微妙な距離を保ちながら、翼は鳴弥に着いて行く。

響「なんか、ああやって並んでるの見ると…」
未「恋人みたいだね」
響「いいなぁ、翼さん」
ク「(負けねぇ…絶対ぇ負けねぇ…!)」

長身のカップルが歩いている姿に見えなくもない。
背後から、特にクリスは鋭い視線を送っていたとか。




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